表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
二章 私が消えたあと

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/76

ハロルド 1-4話

◇◇◇


「ハロルド陛下!」

 君が笑う。

 かつてと同じ陽だまりの笑みで。


「ロイゼ」


 私が名前を呼ぶと、嬉しそうに頬を赤く染めた。


「はい、ハロルド陛下」


 ロイゼ、愛しい愛しい運命の番。

 ミルフィアの生まれかわり。


「私、頑張ったんですよ。アレク――ハロルド陛下に会いたくて」


 知っている。

 その努力を見ていなくても、わかっている。


「魔術師団長になるのは、大変だっただろう? 私がもっと早く前世を思い出していれば、私から君を探し出せたのに」


 私が前世を思い出したのは、15の時だ。

 もっと、早かったら、もっと早く出会えたのに。


「ううん。いいんです」


 ロイゼは首を振った。


「だって、陛下にちゃんと信じてもらえたから。私がミルフィアの生まれ変わりで、あなたの運命の番だって」


 そうだ。

 私はロイゼを運命の番だと認めて――。


 みとめて?


 頭が痛む。


「ハロルド陛下?」


 君が心配そうな顔で私を覗き込んだ。



「――手を」

「……え?」

「手を、握ってくれないか」


 ロイゼは頷くと私の手を握った。


「大丈夫だよ、アレク――ハロルド陛下」


 かつて私がそうしたように、ミルフィアが、ロイゼが手を握る。


 陽だまりの君。

 見た目が変わっても、魂は何一つ変わらない君。



「そうだな、フィアが――ロイゼがいる限り、私は……」


 

 私は――、君は?

 ロイゼは?


「――陛下!!!」


 誰か、が私を呼ぶ。

 空間に、ヒビが入った。


 バラバラと崩れ落ちる、幸せな箱庭。


「――ロイゼ!!!」


 その名を呼んで、離れないように抱きしめようとした。

「……ロイゼ?」


「うそつき」


 その言葉にはっ、とする。

 君の瞳が涙の膜に覆われる。


 拭いたいのに、手を振り払われた。

 その間も世界は瓦解する。



 


「約束、守ってくれなかった。……何回も、呼んだのに」


 



 ――最後に見たのは、絶望の表情だった。




◇◇◇




「……陛下、お目覚めですか?」

「……ああ」


 瞬きをすると、少しだけ頭がはっきりしてきた。

 私の慟哭で、城を壊さぬように魔法で眠らされたようだった。


 部屋を見まわしたところ、城は無事のようだ。


 ――手を見る。

 私の手は依然として竜のものだった。


「――死んでいない」

「え?」

「なぜ、私は死んでいないんだ」



 ミルフィアをロイゼをあれほどまでに傷付けたのに。

 そして、ロイゼは消えてしまったのに。


 どうして、私は生きながらえている。


「盟約が、終わった――? いや、そんなはずはない」

「陛下?」


 側近たちが不思議そうな顔をしている。

 だが、それに応える余裕はない。



「だったら――……。ノクト・ディバリー副団長」


 彼の名前を呼ぶ。

 ロイゼを殺したと自分を責めて、泣いていた彼を。



「はい」


 彼の目は、赤い。

 それでも先程までよりは冷静そうなのは、より取り乱した私を見たからかもしれない。


「ロイゼが使った消失魔法の詳細を」

 

 

Twitterにアンケートがあるのでよろしければ、ご投票ください。(順番に関するアンケートです。)



いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

こちらも覗いていただけたら幸いです。完結作なので安心して読んでいただけます。
悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
― 新着の感想 ―
結局、権力や身分ある人が発言力強いと。 公正に言い分を検討しようとする人がいなかったのが悲しい。
言うてなぁ…。 散々不評くらってる二人だけども。 ノクトは何年も抱えた初恋による嫉妬からの暴走…そこらへんの情緒育ってなかったんでしょうね…。トドメになってしまったし失恋のショックから拒絶してたけれど…
 今更? どうか元鞘はナシで。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ