ハロルド 1-4話
◇◇◇
「ハロルド陛下!」
君が笑う。
かつてと同じ陽だまりの笑みで。
「ロイゼ」
私が名前を呼ぶと、嬉しそうに頬を赤く染めた。
「はい、ハロルド陛下」
ロイゼ、愛しい愛しい運命の番。
ミルフィアの生まれかわり。
「私、頑張ったんですよ。アレク――ハロルド陛下に会いたくて」
知っている。
その努力を見ていなくても、わかっている。
「魔術師団長になるのは、大変だっただろう? 私がもっと早く前世を思い出していれば、私から君を探し出せたのに」
私が前世を思い出したのは、15の時だ。
もっと、早かったら、もっと早く出会えたのに。
「ううん。いいんです」
ロイゼは首を振った。
「だって、陛下にちゃんと信じてもらえたから。私がミルフィアの生まれ変わりで、あなたの運命の番だって」
そうだ。
私はロイゼを運命の番だと認めて――。
みとめて?
頭が痛む。
「ハロルド陛下?」
君が心配そうな顔で私を覗き込んだ。
「――手を」
「……え?」
「手を、握ってくれないか」
ロイゼは頷くと私の手を握った。
「大丈夫だよ、アレク――ハロルド陛下」
かつて私がそうしたように、ミルフィアが、ロイゼが手を握る。
陽だまりの君。
見た目が変わっても、魂は何一つ変わらない君。
「そうだな、フィアが――ロイゼがいる限り、私は……」
私は――、君は?
ロイゼは?
「――陛下!!!」
誰か、が私を呼ぶ。
空間に、ヒビが入った。
バラバラと崩れ落ちる、幸せな箱庭。
「――ロイゼ!!!」
その名を呼んで、離れないように抱きしめようとした。
「……ロイゼ?」
「うそつき」
その言葉にはっ、とする。
君の瞳が涙の膜に覆われる。
拭いたいのに、手を振り払われた。
その間も世界は瓦解する。
「約束、守ってくれなかった。……何回も、呼んだのに」
――最後に見たのは、絶望の表情だった。
◇◇◇
「……陛下、お目覚めですか?」
「……ああ」
瞬きをすると、少しだけ頭がはっきりしてきた。
私の慟哭で、城を壊さぬように魔法で眠らされたようだった。
部屋を見まわしたところ、城は無事のようだ。
――手を見る。
私の手は依然として竜のものだった。
「――死んでいない」
「え?」
「なぜ、私は死んでいないんだ」
ミルフィアをロイゼをあれほどまでに傷付けたのに。
そして、ロイゼは消えてしまったのに。
どうして、私は生きながらえている。
「盟約が、終わった――? いや、そんなはずはない」
「陛下?」
側近たちが不思議そうな顔をしている。
だが、それに応える余裕はない。
「だったら――……。ノクト・ディバリー副団長」
彼の名前を呼ぶ。
ロイゼを殺したと自分を責めて、泣いていた彼を。
「はい」
彼の目は、赤い。
それでも先程までよりは冷静そうなのは、より取り乱した私を見たからかもしれない。
「ロイゼが使った消失魔法の詳細を」
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