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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
二章 私が消えたあと

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ハロルド 1-3話

「僕が、殺した……っ」


 副団長は声を震わせる。


「僕があのとき、たった一言、信じてるといえば――幼い嫉妬心をぶつけなければ、ロイゼは……」



 崩れ落ちた副団長を支えることさえ、この手ではままならない。


 竜の手は、そもそもひとを支えるためにできていない。


 だからこそ、竜は盟約を結んだのだ。



 ――だが。



 消えた。

 ロイゼが、消えた。


 突如として、胸の中に開いた穴。

 解けない竜化。

 消えたロイゼ。

 感じられなくなった、多幸感。


 ――その全てが、一つの答えを指し示していた。



 そうであるならば、私は。


 ひとつ、ひとつ思い出す。


 ――お慕いしております。


 平民の彼女が私に一言そう告げるために、どれほどの時間が必要だっただろう。


 どれほどの労力を要しただろう。


 それをおくびにもださず、真摯に告げたその言葉を。



 ――ここにいるエルマ――彼女が私の運命の番なんだ。


 そう私が言った時の絶望の表情を。


 ――婚約は、近日中に行う予定だ。


 泣き出しそうな瞳を。



 ――私の番を騙るとは。



 そのときに呼ばれた、縋るような声を。



 ――君が困っていたら、飛んでいく。困ってなくても飛んでいく。約束だ。


 ロイゼは、呼んだのだろうか。

 アレクを――私を。



 きっと呼んだのだろう。

 何度も、何度も、呼んで、アレクなら――私なら必ず約束を果たすはずだと信じて。


 信じて、信じて、信じて、――裏切られた。



「――――!!!!! ――――――――――!!!!!!!」


 叫ぶ。

 それはもはや人語ではない。


 ただ、叫ぶ。


 約束した。

 ――私は何度生まれ変わっても、君が、いいんだ。だから、私の運命の番になって。絶対、君を見つけだすよ。


 約束した。

 ――愛してる。君だけを、ずっと。



 約束した。

 ――私だけのお転婆姫。どこにもいかないでね。私も君から離れないから。


 約束した。約束した。何度だって、約束した。


 そして、君との約束を違えたことはないと――、それは私の自慢で誇りで、全てだった。



 それなのに。

 私は。



 ミルフィア、君は、ずっと約束を守ってくれたのに。


 何度だって、私に伝えてくれたのに。



 それなのに、理由も聞かず、一方的に、私は。


「――!! ――――! ――――――!!!!」


 轟音に近い、悲鳴に側近たちが耳を抑えた。

 

 空を厚い雲が覆い、豪雨が降り出した。

 それと同時に、雷も。



「――!!!!、!!!!!!!!」



 どうして、信じられなかった。

 信じようとすら、思わなかった。


 だって、私の運命の番はすでにいて。


 それを害するものを排除することが愛だと思っていた。


 君は、愛とは傷つけることじゃないと教えてくれていたのに。



「――――!! ――!!!、!!!」



 悲鳴は、止まらない。

 このままでは、側近たちの耳どころか、城を壊す。


 そうわかっているのに。


「っ、副団長、陛下をどうか――!」

 何か聞こえる。

 だが、そんなの、どうでもいい。


 私は。


 わたしは。


 ミルフィアは。


 ロイゼは。


「――不敬を、お許しください!!!」



 その言葉と共に、意識が消えるその瞬間まで、私はずっと叫び続けていた。

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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お読みいただき有難うございます
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こちらも覗いていただけたら幸いです。完結作なので安心して読んでいただけます。
悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
― 新着の感想 ―
ざまぁ! もっともっと絶望するが良いw
 エルマはどうやって立場を奪ったんだ?
よしよし、絶望してる絶望してる((・∀・)ニヤニヤ
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