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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
二章 私が消えたあと

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ノクト 0-5話

 ――ロイゼが僕を師と仰いで一年が経った。

「……ロイゼ」

「はい」

 もう、この頃にはロイゼの知識量、技術力共にほぼ僕と並びたっていた。


 それは、それほどロイゼが努力をしたことの証だった。

 その分、何度かロイゼは死にかけていたけれど。


「……君に、最後の魔法を教えるね」


 魔術学校では、もちろん魔法を教えている。

 けれど、理論が多い。

 なぜ、そうなるのかを追求したもので、魔法そのものはあまり教えていない。


 なぜなら、魔法は、この学校入学前に知っているもの、とされているからだ。


 貴族はそれこそ学校を卒業した家庭教師がついているから、魔法を知っている。


 でも、よほど裕福な家庭でない限り、平民にはついていないことがほとんどだ。


 だから、元々魔法の才能があっても平民の子はなかなか卒業できない。


 この仕組みはどうにかすべきだと思う。


「最後の、魔法」


 ロイゼは、僕を見つめた。

 紫水晶の瞳は相変わらず強い意志で煌めいている。


「そうだよ。まずは、ここにある石を見てて」


 ロイゼの目の前に小さな石を置いた。

 ロイゼは食い入るように石を見つめている。


 それを確認して、石に消失魔法をかけた。

 魔力が石を包み込む。

 そして、その瞬間――。



「消えた……」


 石が消えて、キラキラと光が舞う。


「これが、君に教える最後の魔法『消失魔法』だよ」

「綺麗な――魔法ですね」


 ロイゼの瞳が細められる。その瞳には憧れがあった。


「実はこの魔法はね、理論がわかっていないんだ」

「理論が、わかっていない?」


 瞳を瞬かせたロイゼに頷く。


「たいていの魔法は、何をしたらなぜどうなる、というところまでわかっている。でも、この魔法は――」


 僕は先ほどまで石を置いていた地面に、触れる。


「この魔法を使ったら、消える。ただ、それだけのことしかわかっていない」

「そうなんですね」


 ロイゼもしゃがみ込んで地面に、触れた。


「この魔法は、どんな質量のものも消せるんですか?」

「ロイゼ、面白いことを聞くね」


 どんな質量のもの、か。


「そうだな……。魔力をたくさん蓄えればあるいは」

「魔力をかなり消費するんですね」

「うん。小さな質量でもすごく消費するから、この魔法はほとんど使われない」


 だから、最後に選んだのだと僕は続けた。


「この魔法の発動条件は、簡単だ。魔力で対象を包み、ただ、消えろと念じるだけ。――あとは、その分の魔力があるかどうかだ」


 

 僕の言葉にロイゼは頷き、石を置いた。

 その石に実践するつもりだろう。


「やってみて、いいですか?」

「うん」


 立ち上がって少し距離をとって頷く。

 ロイゼの願いに呼応して、魔力が石を包んだ。



 そして――。


「……やっぱり、綺麗」


 キラキラと光が舞う様子にロイゼが目を細める。


 その横顔こそ――綺麗だった。

 


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