ノクト 0-5話
――ロイゼが僕を師と仰いで一年が経った。
「……ロイゼ」
「はい」
もう、この頃にはロイゼの知識量、技術力共にほぼ僕と並びたっていた。
それは、それほどロイゼが努力をしたことの証だった。
その分、何度かロイゼは死にかけていたけれど。
「……君に、最後の魔法を教えるね」
魔術学校では、もちろん魔法を教えている。
けれど、理論が多い。
なぜ、そうなるのかを追求したもので、魔法そのものはあまり教えていない。
なぜなら、魔法は、この学校入学前に知っているもの、とされているからだ。
貴族はそれこそ学校を卒業した家庭教師がついているから、魔法を知っている。
でも、よほど裕福な家庭でない限り、平民にはついていないことがほとんどだ。
だから、元々魔法の才能があっても平民の子はなかなか卒業できない。
この仕組みはどうにかすべきだと思う。
「最後の、魔法」
ロイゼは、僕を見つめた。
紫水晶の瞳は相変わらず強い意志で煌めいている。
「そうだよ。まずは、ここにある石を見てて」
ロイゼの目の前に小さな石を置いた。
ロイゼは食い入るように石を見つめている。
それを確認して、石に消失魔法をかけた。
魔力が石を包み込む。
そして、その瞬間――。
「消えた……」
石が消えて、キラキラと光が舞う。
「これが、君に教える最後の魔法『消失魔法』だよ」
「綺麗な――魔法ですね」
ロイゼの瞳が細められる。その瞳には憧れがあった。
「実はこの魔法はね、理論がわかっていないんだ」
「理論が、わかっていない?」
瞳を瞬かせたロイゼに頷く。
「たいていの魔法は、何をしたらなぜどうなる、というところまでわかっている。でも、この魔法は――」
僕は先ほどまで石を置いていた地面に、触れる。
「この魔法を使ったら、消える。ただ、それだけのことしかわかっていない」
「そうなんですね」
ロイゼもしゃがみ込んで地面に、触れた。
「この魔法は、どんな質量のものも消せるんですか?」
「ロイゼ、面白いことを聞くね」
どんな質量のもの、か。
「そうだな……。魔力をたくさん蓄えればあるいは」
「魔力をかなり消費するんですね」
「うん。小さな質量でもすごく消費するから、この魔法はほとんど使われない」
だから、最後に選んだのだと僕は続けた。
「この魔法の発動条件は、簡単だ。魔力で対象を包み、ただ、消えろと念じるだけ。――あとは、その分の魔力があるかどうかだ」
僕の言葉にロイゼは頷き、石を置いた。
その石に実践するつもりだろう。
「やってみて、いいですか?」
「うん」
立ち上がって少し距離をとって頷く。
ロイゼの願いに呼応して、魔力が石を包んだ。
そして――。
「……やっぱり、綺麗」
キラキラと光が舞う様子にロイゼが目を細める。
その横顔こそ――綺麗だった。
いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!
もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!




