表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
二章 私が消えたあと

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/78

ノクト 0-4話

 馬車が止まった。

 目的地に着いたみたいだ。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


 ロイゼをエスコートして馬車から降りる。


 到着したのはいつもの場所――孤児院だった。

「あ、ノクトさまだー!」

「今日はロイゼちゃんもいる!! やったー!!」


 そう、僕がロイゼに対価としてもらっているのは、孤児院での慰問の同行だった。

 僕だけで訪れたときとロイゼがいるときでは、子供の反応が段違いなのだ。


 子供達は、はしゃぎながら、ロイゼを囲む。


「今日は何を教えてくれるのー?」

「そうね、今日は――」


 ロイゼが収納魔法で本を出した。

 簡単な文字で書かれた絵本だ。


「今日は、みんなが大好きな『竜と運命の番』を使って、読み書きの練習をしましょう」

「はーい!」


 竜と運命の番。

 ――それは、この国の始まりの物語。

 初代国王とその妃を描いた恋物語だ。


 その絵本にも記されている通り、この国は、恋の女神に祝福されている。


 だからこそ運命の番という存在があるのだ。



 子供達が、孤児院の中に入り、机に紙とペンを広げる。

その物語の一節を言葉に出しながら紙に書き出した。


 

「ええと、『りゅうのなみだは、かわになりました』」

 いきなり終盤から始める子供もいる。


「『りゅうは、ひとめでつがいをすきになりました』」


 この子は、最初から始めるタイプだな。


「『めでたしめでたし』」


 いくらなんでも、終盤すぎないか!?


「ふふ」

 ロイゼが、笑う。

「……いえ、子供達ひとりひとりに反応するから」


 そう言われて、かっと頬が熱くなる。

「ああ、馬鹿にするつもりはなくて。ただ、私に魔法を教えてくれるように、子供たちに接しているところを見るのが、嬉しかったんです」


「嬉しい?」


 ロイゼの言葉に、首を傾げる。

「はい。ノクト様は私も子供も、馬鹿にしない。私は平民でーーさっき言った言葉も夢物語に聞こえたかもしれません。でも、あなたは馬鹿にしなかった」


 ――それは、そうだ。

 だって、僕は想像ができてしまった。

 ロイゼが魔術師団長になるところを。


「だから、嬉しかったんです」


 その言葉はどこまでも、純粋で、透明だった。


「……それならいいけど」

「あっ、ノクトさま、照れてるー!」

「顔真っ赤っかー!」


 ――子供達に揶揄われる。

 でも、ロイゼが優しく笑うから、ちっとも嫌じゃなかった。



いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

こちらも覗いていただけたら幸いです。完結作なので安心して読んでいただけます。
悪役令嬢な私が、あなたのためにできること
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ