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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
二章 私が消えたあと
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ノクト 0-1話

 ――僕が彼女と初めて会ったのは、魔術学校の入学式でのことだった。

 入学式で、僕は新入生代表の挨拶を務めた。

 それは、つまり入学時の成績が首席だっということ。


 公爵子息として、恥じない成績を残しなさい。


 そう、父に言われていたから挨拶を依頼された時は安堵でいっぱいだった。


 でも、実際にスピーチを読み上げたときには、無難すぎたか、とかこんなものか、とか思われたらどうしようと不安でいっぱいになっていた。


 なんとかスピーチを終え、壇上から降りるとき、僕は入学生の中でひときわ輝く女の子を見つけた。


 ――見覚えがないけど、可愛い子だな。


 僕が見覚えがないと思うと言うことは、その子は平民だろう。


 でも、すごく姿勢が綺麗だ。


 貴族の中でも、姿勢の良さで輝いて見えるその女の子は、綺麗な紺色の髪に紫の瞳をしていた。


 なんとなく、その子のことが気になりつつも、今後関わることはないだろうな、と失礼なことを思った。


 だって、僕はディバリー公爵家の次男として、優秀な成績を残すことやそれなりの人物と関わることが期待されている。


 彼女は、壇上からの場所的に、あまり入学試験の成績が良い方ではない。あの位置からだと、卒業も危うい生徒も多いと聞く。


 だからせいぜいが、同期入学生で終わるだろう。


 ――そう、思っていた。


 入学式が終わり、それぞれ寮に帰るようにと伝えられてなお、彼女はホールに綺麗な姿勢のまま立っていた。


 誰も周りの子が彼女に声をかけなかったのは、きっと彼女が平民だったからだろう。

 貴族の選民意識に嫌気が差しながらも、彼女の肩を叩く。


 飛び上がって驚いた彼女に思わず、小さく笑いながら、話しかける。


「……ごめん、ごめん。驚かせちゃったね」


 振り向いた彼女の、神秘的な紫の瞳と目が合う。

 鼓動が跳ねたのを隠すように微笑んだ。



「君、入学式が終わってもずっと直立不動だったから」


 僕の言葉に、彼女は僕の名前を呟いた。

 ――!!!

 名前、覚えてくれたのか。


 よかった。

 誰の印象にも残らなかったら、どうしようかと思った。


 安堵を漏らした僕の目を、彼女が真剣に見つめる。


「ノクト・ディバリー様」


 紫の瞳の真摯さに息を呑む。

 強い意志で煌めく紫の瞳は、どんな宝石よりも、綺麗だった。



「私に魔法を教えてくれませんか?」




 ――その一言。

 その一言で運命の歯車が回りだす。



 これが僕たちの濃い8年間の始まりだった。




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