11話
エルマが、竜王陛下の運命の番――。
大勢の前で断定するということは、それなりの確証があってのことだろう。
……じゃあ、だったら私は?
私の中に残る記憶は、竜王陛下を初めて見た時に感じたアレクの残滓はなんだったのか。
「婚約は、近日中に行う予定だ」
その言葉と共に、周囲に歓声が沸く。
「えっえっ、エルマ隊長が竜王陛下の運命の番だったなんて!」
「わー、おめでたい!!!」
「これでソフーム国は安泰だ!!!」
竜王陛下とエルマが歓声の中で微笑み合うのを呆然と眺める。
「今後、この国は益々発展することだろう。もちろん、君たちの活躍も期待する。そして――、今後エルマへの侮辱は私へのものと同義と思ってほしい」
その後も何か竜王陛下は話していたが、右から左へと流れていった。
「……」
アレク、アレックス。
愛しいあなた。
あなたはいったいどこにいるの?
私は、何のためにここまできたの。
今後は何を目指せば良いの。
心の中を深い闇が覆い尽くす。
「ロイゼ」
そのとき、ふと名前を呼ばれて我に帰る。
「……エルマ」
私を呼んだのはエルマだった。
「ねぇ、ロイゼ」
エルマが、竜王陛下の元を離れ、私に近づく。
それと同時にみんなの視線が、私たちに集まった。
エルマは微笑み、目の前で立ち止まる。
太陽のような親友は、私の手を取り、首を傾げた。
「ロイゼ、私はあなたの親友よね」
「……、……ええ」
間があったのは、先日のエルマの顔を思い出したから。
でも、私はまだあれからエルマと話をしていない。
だから、まだ信じたくて、小さく頷く。
「ふふ、よかった」
エルマはころころと笑う。
まるで幼子のような愛らしさに、竜王陛下が息を呑むのがわかった。
「だからね、ロイゼ」
エルマは手を離すと、私に抱きついた。
エルマの香水が、香る。
「私――あなたに一番に祝福してほしいの」
一番に、祝福。
その言葉を言われた時、不意に竜王陛下と目があった。
――アレク。
その瞳にはやはり、アレクがいて。
なのに、どうして。
どうして、私があなたの運命の番じゃないの。
「ねぇ、ロイゼ。お願い」
アレク、どうして。
どうして、そんなにエルマを愛しそうな瞳で見つめてるの。
――ミルフィア、君を愛してる。何度生まれ変わっても、ずっと。
あの言葉は、嘘だったの。
心がばらばらになる。
自分が地面に立っている感覚さえなくなって、その場に倒れ込みそうになる。
それでも、周囲の視線に押されるように、私の唇は心とは違う言葉を呟いていた。
「おめでとう――エルマ」
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