実践練習
「問題!卯詐欺の本当の体長は?」
「2.5メートルでしょ?それくらいわかるわよ
じゃあ私からも。雷音の強いところは?」
「ライオンの厳つい見た目に加えて
雷のように早く動く身体能力!」
2人が勉強を初めて数ヶ月だった頃には
クイズを出し合い遊べるくらいに成長していた
「おい、お前たちなんで勉強ばっかしてんじゃ
なんも楽しくないじゃろ」
※勉強を優先させたのは白眉
「まじかよあんた」
今、伏竜の温厚キャラと白眉への尊敬が消え去った
「わしも実は勉強が嫌いでなぁ
身体を動かす方がどうもしょうにあっておる」
「私たち、別に嫌いって言ってないよ?」
我が子同然の2人にえげつない目を向けられて
白眉が子供のように食い気味に反論する
「いや、お前らが楽しそうに勉強しやがるから
止めさせドキがわかんねぇんだよ!
最低限の知識だけつけりゃいいのに
学者にでもなるつもりですか、あぁ?!」
「いい歳をして、子供に怒鳴ってほんと…」
伏竜は声を荒らげて息を切らしている白眉の
背中をさすりどうどうとあやしている
「白じいは勉強やめさせたいの?」
「いや、もうそろそろ旅に出るための知識
としては十分だと思ってな。
そろそろ、実践練習してみないか?」
だとしたら、説得下手すぎるでしょと
伏竜が肩を落とす
「私、そろそろ体動かしたいと思ってた!」
「ほんとか!!」
一心が空気を読んで言ってあげたのか
本心だったのかは分からないが白眉の機嫌は
随分と良くなったようだ
「実践練習ってどんなことするの?
魔物でも狩りに行くの?」
「いや、魔物の弱点を知識だけとして知ってるのが
なまらタチが悪い。いきなりそこを狙ったり
油断したりで失敗する例が多い」
さっきまでの態度が嘘のように
いつもの冷静な白眉に戻っている
「ならどうするんだ?それ以外に実践
なんてどうしようもないと思うけど」
純粋な疑問に白眉はニヤリと笑い
伏竜の肩に手を置く
「なぁに、わしがいるじゃないか!」
既に準備体操を始めやる気満々な白眉と違い
2人はキョトン顔のまま固まっている
「なんじゃお前ら、実践練習するじゃろ?」
さっさと準備体操せんかいと2人を見る
「いや、僕たちが勝てるわけないじゃん」
「そうだよ、だって白じい魔物余裕で
倒して帰ってくるじゃん」
2対1でも勝てないと騒ぎ立てる2人に
白眉は面倒くさそうにハンデの提案をする
「なら、足を使わず両手に
その辺の木の棒しか持たん」
いい終わったあと白眉はほんとにその辺に落ちてる
10cmくらいの短く細い木の棒を手に取ると
そのまま30mくらい離れていく
「なんで様になってるのよ」
「なんか、こんなにハンデつけてもらったのに
勝てるビジョン見えないんだけど…」
それでもまだ、やる気のない2人に
イラつき始めた白眉がゆっくりと向かっていく
「おいお前たち戦いの狼煙はもう上がってるぞ!」
「やべぇよあの人!一心構え…」
「竜ちゃん!!」
伏竜が一心の心配をするため本当にコンマの
レベルで目を離しただけなのに30メートル
先にいたはずの白眉は伏竜の喉元に枝を当てていた
「伏竜。どれだけ一心に惚れてたとしても
絶対に敵から目を離すな。わしが先に
一心を狙ったなら、一心がこうなっていた
心配するならば、命をかけやがれ。」
「竜ちゃんから離れて!」
枝を突きつけたまま静止する白眉に向かって
一心が片手を地面に着けたまま回転し
足払いをしようとするが白眉は一心の足を
スレスレでよけもう片方の枝を足に優しく当てる
「本当ならお前たちは死んでいた」
動けない2人に威圧的に言い放つ白眉。
2人は自分たちがここまで強くなれる
とは到底思うことは出来なかった。