お勉強のお時間
白眉に教えてもらった大泥棒と
欲の果てについての話を誰かに説明
できるくらいまで理解を終えた頃
「そういや、お前たちはわしが昔
少し教えた常識問題は分かるのか?」
「いきなりだね。常識問題ってどんな?」
「簡単な計算や読み書きや世界地図とかじゃよ」
白眉の質問に伏竜は、まぁ軽くならと答えるが
一心は下手くそな口笛を吹きそっぽを向いている
口笛を吹いているはずなのにフーと言う
音しか聞こえないことが不思議だ
「鳴ってねぇし、素直に言えよ」
「わかってたでしょ白さん」
「べ、別にできない訳じゃないわよ!
昔から白じいが本とか使って最低限の知識
は教えて貰ってたもの!」
ほんとだもん!と力説する一心を白眉は指さして
ほんとか?と伏竜に尋ねるが伏竜は全然嘘と
速攻で一心の無知をバラしてしまう
「でもまぁ、かく言う僕も世界地図とか
社会情勢なんかはあんまり自信ないや」
「私なんてどうせ、計算もままならないよーだ」
謙虚な伏竜に比べて分からなければ拗ねる一心
2人は一見すると真逆で合わなそうにも見えるが
その実、冷静な判断力を持った伏竜と
少し乱雑だが誰より優しく強い一心は
最高に相性がいいと白眉は見ていた
「よし、ならば次の勉強は世界地図や
現在の情勢なんかを教えてやろう!」
「白じいってさ、私たちと一緒で
こんな何も無い村に住んでるのになんで
こんなに詳しいんだろうね?」
一心は疑問を伏竜にだけ
聞こえるくらいの声量で耳打ちする
白眉に直接聞かなかったのは伏竜と同じで
聞いていいのか悪いのか微妙なラインだからだろう
「分からない。僕も少し前から
気になっていたんだ、一時旅に出ていただけの
放浪人が知れる情報をはるかに超えていると思う」
これが世界の常識ならお手上げだけどねと
付け加えて白眉の授業を大人しく受け始める
「この世界は昔に国境というものが盗まれて
訪れた平和がまた終わる時
大泥棒が世界を盗もうと動き出したんだ」
「それが、数百年前にあった陸地は全てなくなり
新たに、かつてムー大陸と呼ばれたところを
作り直した言われてる話だよね?」
大泥棒が引き起こした世界を盗むための
「第一の災い」とよばれる厄災である
「そうじゃ今はムー大陸、改めプロト王国!」
ここは王都からかなり遠く離れてるから
たどり着くには数ヶ月ほどかかってしまう
「あそこはいいところだぞ
王都のお偉いさんはいけ好かんが
国民のみんなは心優しくてなぁ…」
何より飯がうめぇ!と2人に力説すると
一心は王都への想いを巡らせて目を輝かせているが
伏竜はやはり何かが腑に落ちず考えていた
(やっぱり、白さんの年齢は分からないけど
少なくとも60歳以上の見た目だけど
王都にいたのは20代の頃と言っていたのに
王都のことを語る口調はつい最近の出来事みたい)
なんとも言い表せない不安感を胸に抱えながら
楽しそうに話す白眉と一心をみてみると
不安感は吹き飛び心は幸せで満ち溢れる
「白さん、おすすめの王都のご飯も教えてよ!」
伏竜もまだ見ぬ王都への思いを膨らませて
二人の会話に混ざり出した。