欲の果て
悪熊の弱点まではわかったが
その弱点にも意外と刃が通りずらく一心は途中で
飽きてしまって、伏竜に丸投げすることになった
伏竜は魔物を捌くのは初めてのはずだが
器用に捌き、皆に振る舞いおいしく食べたあと
またもや、知識をつけるといい勉強になった
「私、そろそろ体動かしたい」
「まぁそう焦るな、急がば回れじゃ」
隣の伏竜は学ぶ気満々だったので
やれやれと言って大人しく聞く姿勢をとる
「朝話したことはわしの知識の1%だと言ったが
今話すことは50%以上だと思ってもいい」
2人があんまり長いのはちょっと…とでも
言いたげな顔をしたところで白眉は大きく笑う
「知識ってのは量よりも
質が大事な場合もあるだろ?」
2人を納得させたところで話を続ける
「大昔、大泥棒が世界を手に入れるため
作ったとされるいわば新世界のルールがあってな。
それは、過去一番の感情を表に出した
者の前に現れるとされるパンドラボックス。
そのパンドラボックスに願いを込めると
箱は開き願いが叶うと言われている」
そこまで話したところで白眉は一息つく
質問タイムということだろう
「過去一番ってことは
どんどん更新されていくの?」
「あぁ、500年前から始まったことじゃから
今はほぼほぼ不可能に近い」
実際わしには無理じゃったと
何かを思い出すような目をしながら肩をすくめる
「どんな願いも叶う?」
「叶うらしいが、今持っている自分の
最も大事にしてるものとの交換だそうだ
そして願いを叶えたものたちはロクな
人生を歩まなかったことから
このルールは''欲の果て''と呼ばれている」
「大泥棒は世界を盗み出すほどの
力を持っていたはずだ。なのになぜ
そんなルールを作ったんだ?」
「すまないがそれは分からない
じゃが、わしの考えはやつにも手に入れなれない
ものがあったんじゃと思う。」
「白さん、それって一体…?」
「さぁ、そこまでは分からんよ」
はははと白眉は大きな声で笑いとばす
「ちょっと!1番大事なところじゃん!」
「なにをいうんじゃ、わしが奴のことを
全て知っていたならあの時わしは奴を…」
子供のように声を張り一心と口論を
繰り広げようとしていた白眉だが何か言いかけたが
パタリと止めて咳払いをし話すのを辞める
「いや、ここから先はやめておこう
今日の勉強はもう終わりじゃ!」
おしまいおしまいと言って手を叩き解散を促し
自身もそそくさと家の中に入ってしまった
「言い忘れとったが、今日教えたことを
ずっと頭の中で考え続けるんじゃぞ!」
家のドアがガチャリと開き白眉は半分だけ
顔を覗かせ2人に大声で告げ
またドアをバタンと閉める
この現状に一心は、何か気に触ることしたのかと
あわあわしているのを伏竜が頭を撫で宥める
(あれは、一心が原因で怒ってるとは思えない。
なんなら怒っているとすら思えなかった
白さんは一体何者で何を隠しているんだ)
一心の頭を撫でながら白眉の過去を
詮索したい気持ちを何とかして抑えるのだった