夢の代償
あまりのオーラに白眉は目を瞑り
次に目を開けた時には真っ白な空間に1人立っており白眉の理解が追いつくよりも早く
無機質な機械音声のようなものが空間にひびく
「白眉様、ようこそパンドラボックスへ
貴方様の願いは、1日だけ全盛期に戻ることと把握しております。それに見合う代価につきましては…」
「いや、もう説明は腹いっぱいだ。
代価は俺の命でいいか?」
機械的な音声の聞き心地が悪かったのか
初めから決めていたのかは分からないが
鬱陶しそうにとんでもない代価を提案する
「肯定。しかし、それでは願いと代価が
釣り合いませんゆえ、願いを増やして頂きます。」
「願いってのは、1つなんじゃないのか?」
「否定。普通の人は、願いの為だとしても
差し出すものをできるだけ小さくしようとします」
そこまで言ったところで、またも白眉は
もういい十分だと言って機械音声を遮る
「なら、不撓を解放して一心と伏竜の所へ送ってくれ」
「了承。しかし、まだ足りません。」
「この老体の命が、そんなに重いかね?」
「説明。貴方様の命は大泥棒様でも
盗ることが出来ない程、重いのです。
パンドラボックスは大泥棒様がお作りになったものゆえ、代価は大泥棒様の考えに基づきます」
機械音声の説明に10年前の大泥棒との戦いの
記憶を巡ってしまい苦い顔になる
「なら、・・・・・・・。できるか?」
「了承。願いの実行に移ります。」
最後の機械音声の台詞を皮切りにまた眩い光に
包まれ目を閉じ、開いた先に見たものは
自分を見て小刻みに震え怯えているプロメテウスだ
「あ?何脅えてんだおま…俺、声戻ってる!
あっははは!体が軽いな!」
先程まで、老人だった白眉だが今では
スラッと背の高い長めの黒髪を後ろにまとめた青年となっていた
正直、歳をとっていた方が強そうに見えるが
プロメテウスの怯えようが、現在の白眉の強さを物語っている
「ま、待て、白眉、話をしようじゃないか
あの子供たちからは手を引く!だから…」
見逃してくれ。とが言い終わる前に
この世のものとは思えない程の速さのパンチが
ついにプロメテウスを捉え後方に勢いよく飛んで行く。吹き飛ばされまだ宙に浮いているプロメテウスに追いつきさらに、飛び蹴りを見舞う
「お前、昔より弱くなったか?」
地面に強く打ち付けられ服は破れサングラスは割れ
とても、世界を滅ぼした張本人とは思えないほどの醜態を晒すプロメテウスを嘲笑した
「白眉、君の悪いところをひとつ教えてあげよう
それは、自分が圧倒的に強いから
自分が負けるなら、どういう場合かの想定をしていない事だ」
勝ち誇ったような顔を見せたプロメテウスが
指を鳴らすとそこにいたはずのプロメテウスは消えていた。白眉はその事態を把握するよりも早く
伏竜と一心の方へ疾走していた。
「よし、早速追うぞ。お前たち」
「今何を代償に傷を治したんですか?ボス。」
プロメテウスにまるで、獣のような目をしのボサボサの髪をした、獅子のような男が話しかける
「プライドだよ…」
先程いた場所より、少し後方でプロメテウスは
何故か、ボロボロだった服は元に戻り
傷一つない状態になっていて、連れて来ている
魔人と共に白眉を追いかけ始めた。