白眉のねがい
白眉の振り下ろした一撃は
確実にプロメテウスを捉えていたが
どういう手品なのか白眉の手刀が切り裂いたものは
布のきれ端のようなものに変わっていた
「おぉー、想像していたよりも
スピードと威力が落ちてないね避けてて良かったぁ」
白眉は避けて言ったプロメテウスには
目もくれず再び走り出そうとするが、また阻まれる
今度は、攻撃を繰り出すことなく
一瞬だけ横に逸れプロメテウスを避けて走り抜ける
「えぇ、無視は酷いなぁ
ちょっと前まで、僕にしか興味なかったのにねぇ」
しかし、またもプロメテウスは
全速力で駆けたはずの白眉の前に現れる
「いい加減にしやがれ!来るなら来いと言ったはずだ!戦う気もないならそこをどけ!」
「白眉君は何か勘違いをしているようだね」
やれやれと言いたげな目を向けてあとすぐに
哀れみのような目を白眉に向けて
気持ち悪いくらい優しい声で語り掛ける
「あの子どもがそんなに大事かい?
正直に言おう僕は、もう一度本気の君と戦いたいんだ
昔の君の欲もそれで満たされていたはずだろう?」
悪くない話しどころか最高だろう?
と提案し白眉は息を飲む。
その仕草を好機と見たプロメテウスはさらに付け加える
「あの、子どもを私に譲ると言うなら
君の寿命を、返すと約束しよう」
プロメテウスの誘惑に少し間が空いたあと
白眉は重々しい口を開いた
「お前はなぜ、あの子たちを狙う?」
「それが、僕の願いに直結する。」
プロメテウスは嘘をついても意味が無いと
判断したのか、正解までは言わず
少し濁した感じはあるが、素直に答える
「あの子たちを捕まえたら、どういう扱いを受ける」
「そろそろ鬱陶しいよ白眉。
僕がここまで譲歩したんだ、どうせ今の君じゃ
僕に勝てないんだ、本来交渉できる立場じゃない」
「お前、何か勘違いしてるだろ」
イラつき始めたプロメテウスとは対照的に
少し冷静さを取り戻した白眉が大きな声で笑い出す
「何がおかしいのかな、僕の言っていることに
間違いはなかったはずだけど?」
「なぜ、俺がお前に勝てないって思ったんだ?」
笑うのをやめるがニヒルな笑みは浮かべたまま
先程と打って変わって、挑発した態度をとり
自分の右腕を空中で何かを掴むような仕草をすると
おぞましい程の圧がプロメテウスを襲い
本能的に死を覚悟してしまった
「貴様…!それをどこで手に入れた!」
「おいおい、キャラ崩れてんぞ大泥棒サマ。
お前が作ったんだろ?このパンドラボックスを」
「答えろ!今、発現した訳じゃないだろう!
なぜ今まで使わなかったのだ!
それを使えば、すぐ私と再戦できただろう!」
パンドラボックスを禍々しく光らせる
白眉から距離を取り戦闘態勢に入り大声で叫ぶ
プロメテウスに白眉は呆れたように答える
「昔のわしなら、お前に敗北したあと
すぐに使ったかもしれんが、村に帰って
願いが変わったのでな」
「願いが変わった…?」
「あの子達の幸せだけが
今のわしの願いで幸せなんじゃ。
だから、あの子達の幸せを壊そうとする
お前を何がなんでもここで殺す。」
馬鹿な、と掠れた声で呟くプロメテウスを横目に
白眉はパンドラボックスに願いを込めた
「全盛期の俺に1日だけ戻せ!」
白眉が叫んだと同時に
禍々しいオーラを放っていたパンドラボックスは
さらにオーラをまし白眉を包み込んだ