パンドラボックス
伏竜と一心が白眉の元で修行を初めて
既に1年と少しの時間が経過していた。
修行に入る前は14歳だったふたりは
既に15歳の後半になり、言動も随分大人びて…
「ちょっと!今絶対当たってたじゃん!」
「はぁ?当たってないわよ!
感覚神経バグってんじゃないの?」
きてるなんてことは全くなかった
体は大きくなったが、心が成長して無さすぎる。
現に今だって、当てたら勝ちのルールで組手を
しているにもかかわらず、言い合いばかりだ
「これじゃあ、組手じゃなくただの口論じゃな」
少し離れたところから、やれやれと肩を
竦める白眉だが2人を見る目は怒りではなく
どこか、少し昔を懐かしむような目だった
「ねぇ、竜ちゃん。白じいまたあの目してるよ」
「うん最近良くしてる気がするよね」
白眉は自分を語らない。
その理由は彼にしか分からない。
しかし、白眉の人並外れた身体能力や知識に経験。
どう考えても過去を隠しているとしか思えない
「そういえばさ、白じいって何歳なんだろ」
「見た目で言うと60前半くらいに見えるけど
たまぁに、過去の話する時の口調が
そんな昔のものと思えないんだよね」
「なんじゃお前たちー!サボりか?!」
遠くから白眉の叱責が飛んできて
慌てて組手を再開する
(あいつら、考えてることわかりやすいんだよなぁ
ま、そういうところが可愛いんだけどな)
話題にされていた当の本人である白眉は
昔から2人に怪しまれていることはわかっていた
しかし、幼い2人にいきなり話すには
あまりにも現実離れしている上に理解するのは
難しいだろうと思い今まで話してこなかった
(そろそろ話してもよいかな。万が一
あの子たちを巻き込むことになったとしても
最悪これを使えばどうにかなる…か?)
1人思案する白眉の手には、なにか黒いものが
握られていた。手のひらサイズの正方形
なにやら幾何学模様が刻まれており
見入ってしまうほどに深い黒色
少し前、手に入れることが出来なかったと
言っていた、パンドラボックスが握られていた。。
欲の果て、と呼ばれるパンドラボックス
最も欲すものを手に入れることが出来るが
自分が持つ最も大事なものを差し出すことになる。
彼は何を願い何を差し出すのか。