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第8話 女友達の彼氏はクズ野郎だった

 泣きたくなりながらもなんとか役割を遂行した俺をセルフで褒めつつ、ファミレスで舞花ちゃんと落ち合った。

 ドリンクバーとポテトを頼んでテーブルに座るが、店の一番奥で北と東の2方向が壁に覆われているテーブルを選ぶあたりぬかりない。

 当然、舞花ちゃんは壁を背にする位置に座っていた。これは舞花ちゃんのPCの画面が他に見えないようにだろう。


「ありがとうございました野獣……タロー君!」


 やめろ舞花ちゃん……それは俺に効く。やめてくれ……。


「―――そんな冗談はさておき、結論から言ったら真っ黒でした。タロー君のおかげです、ありがとうございます」


 リュックから自分のノートパソコンを出してUSBのデータを見せる準備をはじめる舞花ちゃん。


「見てください、これ」


 そこには、人の名前ごとに分けられたフォルダのデータがあった。10、20…結構な数だぞ。


「これは?」


「このフォルダの中には女の子と“そういう”事をした時の画像や動画が保存されていました。

 ―――女の子のあられもない姿が映っているので、中のデータまではタロー君にはお見せできませんが真っ黒です。

 この間、タロー君といた時に見た髪の長い女子とおもわれる方の映像も中にありました。……中には意識が朦朧としている女の子にそう言う事をしている動画もあります」


 その言葉に歯噛みする。俺は人のPCからデータを盗み取ってるゴミだが、あの会長はカスだ。


「――これ警察に行って会長逮捕したりできない?」


「これだけじゃ難しいですし、決め手に欠けますね。

 そもそも会長を逮捕してもらうには被害届を出さないといけませんが、直接の被害者じゃない私たちでは被害届が出せません。

 これだけだと会長が交際した女の子との“そういう行為”を保存しているだけ、で済んでしまうかもしれませんし、中途半端にやるとリベンジポルノになるかもしれません。やるならきっちり一回で潰さないと駄目です」


 そういうものなのか。……ん、ん?!


『猿渡あきら』


 そのフォルダの中には、俺のよく知った女友達の名前があった。


「お知り合いですか?」


 間に合わなかった、手遅れだった。一気に血の気が引いていくそんな絶望感を感じる。これを知ったら、あきらはどんなに傷つくだろう。


「―――この方であればまだ不幸中の幸い……といったところです」


 そんな俺の様子に、俺を安堵させるように言う舞花ちゃん。


「……この方は少しだけHな自撮りだけでした。

 ただ、他の方のように“撮影”されてしまうのも時間の問題だと思います。それと―――会長はこのデータをインターネットにアップロードしている可能性があります。それは家に帰ってから色々と調べてみますね」


 あの会長は女の子との行為をこうして保存しているだけじゃなく、それをアップロードしている可能性もある、という事か。そこは舞花ちゃんに調べてもらうとして―――会長、どうしようもないクズ野郎じゃないか。


「何かいい方法は無いのか?こんなヤバい奴を野放しにしておきたくないし、このままじゃ俺の友達が傷つけられるかも知れない。俺に出来る事なら何でもする」


「ん?今なんでもするって?……コホン、そうですね」


 俺の言葉に、少し考えるそぶりをする舞花ちゃん。


「―――すぐにできるものとして策は3つあります」


「1つ目は?」


「私が会長に近づいて何かエッチな写真を要求されて渡すところまで親密になってから警察に被害届を出します。所謂ハニトラです。

 多少、危険が付き纏いますが―――私、これでも黙っていれば正統派と言われるくらいには可愛いので会長を落とすのはわけないと思います」


「却下。女の子を危ない目に合わせられない」


「ですよね、タロー君ならそう言うと思っていました。

 2つ目は、この猿渡さんに会長の事実を教えて被害届を出してもらう事です。

 恐らくそれが一番手っ取り早く会長を潰せると思いますが、間違いなく猿渡さんは傷つきますし、説得に成功しても被害届を出すに当たり色々と心労が重なることになると思います。」


「できればそれも避けたいな。あきら本人が傷つくのは最小限にしたい」


「はい、タロー君ならそう言うと思ってました。だから考えたのが3つ目の策―――タロー君自身が被害者になる事です」


 そう言って作戦の内容をとつとつと語り始める舞花ちゃんの話を聞く、それなら俺が身体を張るだけでなんとかなりそうだ―――なので、それでいこうと返事をする。


「やっぱり3つ目の策を選ぶんですね、タロー君」


 やっぱりなぁ、と眼差しで訴えてくる舞花ちゃんに、少し不思議な感覚を受ける。


「変な事聞くけどさ、俺と舞花ちゃんって初対面だよね?」


 そう言うと、そうですね、と何故か遠い目をしながら窓の外を見る舞花ちゃん。


「はい、私とタロー君は高校が初対面ですよ」


そんな風にパチパチパチッと瞬きをしながら言う舞花ちゃんの横顔に、俺は首をかしげるのだった。

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