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第4話 マスゴミ系ヒロインですか

―――あきらにまで振られてしまった。いや、勝手にあきらがフってきたようなものなんだが、連日のフルボッコでオレノカラダァボドボドダ!


 とはいえそんな事のあったその翌日も俺の日常はあまり変わらない訳で。

 ともちゃんからは、戸成君と早く付き合えるようにしーてーよー!と叱られたり、

 まゆ姉からはどうやったら弥平先生の連絡先教えてもらえるかなぁ?と相談されたり。

 あきらも授業中誰かとメッセージしてはにやけてたりするので件の生徒会長と仲良くやってるんだろうか?アオハルだねぇ、羨ましい事限りである。


 俺としては傷心冷めやらぬ中の一日はあっという間に終わり、放課後になったところで、なんだか違和感を感じる。2日前くらいから何か妙な視線を感じるのだ。

 ……うーん、どうするかなぁ、と考えながら帰り道を歩く。


 ―――てくてく、てくてく。


 駅近い路地裏に向かって歩くが、路地に入るとじめっとして薄暗い。

 やっぱり何か気配がするんだよなぁ。俺が足を止めると気配がビタッと止まっる。……今はたぶん路地裏ビルのゴミ置き場の陰に隠れてるのかな?俺が立ち止まっている所からは5mくらいだろうか?隠れる所はそこしかないもんな…よし。


「あらよっと―――!!」


 三角跳びの要領で壁を蹴りながらそのまま大きく後ろに向かって跳躍し、そのまま壁走りしながらゴミ置き場の影までヌルヌルッと移動する。これがTRPGなら俺の技能値は跳躍99に振ってあるクソキャラだぜ、多分ね!


「俺を尾けて何が目的、だ―――?」


 隠れていた人影を逃げれないように捕まえ、壁に押し付けながら話しかけると、そこにいたのは―――女の子だった。


「降参!降参します!はーい、……だから離してくださーい!襲わないでくださーい!まだそういう経験ないんですー」


 襲わねぇよ!!高そうなカメラを手に持ち、同じ学校の女子制服を着ているのは黒髪のゆるふわミディアムヘアをした可愛らしい女子だった。……ダリナンダアンタイッタイ!!


 とりあえず何で俺を尾行していたのか話を聞こうという事で、その女の子を連れて近くのファミレスに移動した。

 ドリンクバーを注文して窓辺の席に腰かけたところで、女の子が何故か目を輝かせながら食い気味に俺に話しかけてきた。


「――は~っ、桃園君ってすごいですね!ハリウッドのアクションスターみたいでした!……びっくりしてシャッターチャンスを逃してしまったので猛省です」


 そんな風にまくしたててから、ストローをさしたジュースを音もたてずに静かに飲む女の子。俺の事を桃園認識しているようだけど俺は君に覚えがないんじゃが??という事で質問タイムはっじまっるよ~。


「いや、それより君は一体何なんだよ。2日前ぐらいから感じてる視線は君か?」


 俺の言葉に対して、ありゃ~、気づかれちゃってましたか~と否定せずにのほほんという女の子。ここ数日感じていた視線はこの子だったようだ。

 それから女の子はそうですね、と頷いてから自己紹介を始めた。


「はじめまして、私は小天狗舞花こてんぐまいか。桃園君と同じ1年生で、新聞部です!」


 そういってぱちっとウインクをする小天狗さん。同じ一年生の女子だったのか。


「……で、その小天狗さんがなんで俺みたいに目立ったこともない奴を追いかけてたんだ?」


 そんな俺の言葉に、ふふーんとしたり顔をする小天狗さん。


「ふっふっふ、実は私、みちゃいました!

 校舎裏で桃園君が女の子に告白されているのを!!」


 校舎裏で、告白?……あー、ともちゃんに失恋していた時の事か!そりゃ誤解だぜレディ、思い出したくねぇ……。


「しかもしかも!その次の日は、ボインボインの、凄くおっぱいおっきなバインバインの年上の先輩と逢瀬してましたよね!おっぱいに顔まで埋めて、破廉恥!」


 それはまゆ姉と話してた時だな。破廉恥……まぁそうね、あのおっぱいは破廉恥だもんね、わかる。


「挙句の果てに昨日の帰り道、クラスの女の子と仲良く帰ってましたよね!?3股ですか?女の子を3股ですか?酷い女たらしさんですね!」


 言葉とは裏腹にキャッキャしながら目を輝かせる小天狗さん。

 違う、誤解だ。俺は女たらしなんかじゃない!!俺は童貞だ、童貞で―――充分だ!!


「どれもバッチリ写真におさめさせてもらってますよ~。これで次の校内新聞の一面はいただきですねっ!見出しは」


 そういって、てへぺろ!と舌をだす小天狗さん。……やめろ、俺を新聞記事にするんじゃぁない!

 このままだといらぬ誤解で新聞記事を貼りだされてしまうので、プライベートなところは伏せつつ小天狗さんに説明していく。

 最初に校舎裏で俺が女子と話していたのは、相談を受けていただけだと事。

 次の日に見たのは俺が元々知り合いの年上の先輩にこれまた悩み事の相談を受けていたことで、子供のころから知っているお姉さんだからそういうスキンシップをとられていたこと。

 3日目に見たのは中学の友達に遠回しに振られていたんだ、と説明をする。

 説明していて泣きたくなるけど泣かない……だって男の子なんだもの!


「ふーん……」


 そんな俺の話を聞いていた小天狗さんがじっと上目遣いにみてきた。


「嘘をついているようには見えませんね。概ね本当の事を言っているのだと思いますが、個人情報に関わるところは上手く伏せて説明してる…といったところでしょうか?」


 鋭い、流石新聞部だからかな?なんだかこの子には嘘が通じなさそうな“スゴ味”がある。


「―――わかりました、ガセネタやでっちあげのゴシップを報道したらマスゴミになってしまいますからね……。このネタは取り下げます」


 あっさりと引っ込めてくれたのはありがたいので胸をなでおろす。しかしなぜかさっきより眩しく、キュピーンと音でも鳴らしそうな勢いで再び目を輝かせる小天狗さん。


「でも桃園君からは何かスクープの気配がします!!」


「ええ?!」


 身を乗り出す小天狗さんだが、期待されても困る。俺みたいな一般ピーポーに特ダネなんてないよ、というがチッチッチと指を振りドヤ顔をする小天狗さん。


「―――そんな風に連日女の子とイベントが起きるなんて絶対何か“持って”ますよ―――そう、女難の相!!そういう所からネタは転がり込んでくるものなんです」


 うわぁ、嬉しくない評価ダナー。


「なので桃園君、私とお友達になりましょう!

 嫌なら友達じゃなくてもいいですし、桃園君に毛ほども魅力を感じてはいないのですがネタが期待できそうなので連絡先を交換しましょう!」


 パチパチパチッと瞬きをしながら言う小天狗さん。

 辛辣ぅ!言い方が辛辣ぅ!!ただでさえ周りの女の子に恋愛の対象外とフルボッコされた直後なのにさらに傷口抉らないでぇ……。


「もう驚くほどにストレートに言うね小天狗さん!!もうちょっとこう……手心というか……」


「おためごかしは苦手なのです!懇切丁寧、慇懃無礼!誠心誠意正直にお話しするのがモットーです!あ、勿論人に迷惑がかかるだけのようなネタは記事にはしないのでそこはご安心を!」


「はぁ。まぁいいけどね、連絡先ぐらい」


 そういってスマホを取り出して小天狗さんと連絡先を交換する。何だか嬉しそうな小天狗さん……まぁそうね、何かネタになることがあるといいね。


「そうだ、桃園君。これからはお友達もしくは情報提供者として、私の事は気軽に舞花って呼んでください。―――これで私とも縁ができた!ですよ」


「今俺をみたな、って?」


「前から見てまーす!」


 楽しそうに笑う小天狗さん……じゃなかった、舞花ちゃん。私も桃園君の事はタロー君と呼びますから!とにこにこ笑顔で言ってくる。

 なんだか変な子と縁が出来てしまったなぁ…と、ため息を零すしかなかった。

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