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4. 彼氏と彼女と『明日』

★塩谷治郎(塩爺)

■イケテン

◆雄也


★ ★ ★ ★ ★ ★



 おやおや。

 リッキーちゃん茹でタコのように真っ赤になっちゃって。



「うわぁ先輩まっかっか。か〜い〜んだぁ」

「もう! 揶揄(からか)うんじゃないの!」



 篝という名の後輩ちゃんが先輩のリッキーちゃんを揶揄って遊んでるけど……

 キミ、失恋して落ち込んでいたんじゃなかったの?


 まあリッキーちゃんは確かに可愛いよね。

 何で彼氏いないのかなぁ?

 美人過ぎて近寄りがたいから?

 ま、妻帯者の僕には関係ないけどね。



 それにしてもリッキーちゃんのこの反応は……



「ほらイケテンくん脈ありだよ。よかったねー」

「塩谷さんは黙っててください」



 ちょっと僕がニヤニヤしたらイケテンくんが不機嫌顔になる。



「このままデートにでも誘えばいいのに」

「い、今はまだ早いです」

「いつならいいのさ」

()()()です」



 あ、コイツそっぽを向きやがった。

 相変わらずのヘタレぶりだねぇ。


 後輩ちゃんには浴衣褒めたりとイケメンぶりを発揮したくせに。

 本当に好きな子には上手く言葉が出ないとは難儀だねぇ。


 僕とイケテンくんがコソコソ話しをしている最中も、リッキーちゃんは後輩ちゃんの愚痴を聞いているようだ。ホントいい子だねぇ。


 イケテンくん早くしないと横から誰かにかっさわれちゃうよ?



★ ★ ★ ★ ★ ★

■ ■ ■ ■ ■ ■



 涙でメイクが崩れていた篝が化粧直しにトイレへ行った。



「天磨君ごめんね。カガリが変なこと言って」

「いえ……特に気にしては……」



 俺とリッキーさんの間に何とも言えない空気が流れる。

 あの篝って子と塩爺が変なこと言うから意識して気まずい。



 だけど俺とリッキーさんが恋人?

 傍からはそう見えるのか。

 ぐへへへへ……


 いかん!顔がにやけそうだ。

 とにかく仕事だ。

 仕事に集中しよう。



 ――カシャ!



 その時、シャッター音がした。

 リッキーさんがスマホを手にしている。


 どうやら俺を撮影したみたいだけど……なんで?



「立木さん?」

「ごめん。ちょっと……」



 そう誤ってリッキーさんはスマホを(いじ)り始めた。


 珍しい。

 彼女はバーでスマホを扱うことをあまりしない。


 俺なんかの写真を何に?


 はっ!

 まさか!?



 友達に彼氏紹介とか?

 「ヒトミ~今なにしてんの?」「彼の店でお酒飲んでるよ」「彼氏? うそうそ! 写真送ってよぉ」みたいな感じとか?


 いや、そんな。

 俺がリッキーさんの彼氏とか……

 まさか……えー俺が……もしかして……俺が?

 うへへへ……いや〜まいったな〜



「なにニヤニヤしてんの。気持ち悪いよイケテンくん」



 黙れ塩爺!



■ ■ ■ ■ ■ ■

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「ハァハァ、は、早く行かないと……ハァハァ……」



 SNSで仁美先輩からオレに送られてきた写真を見てオレは慌ててここまで走ってきた。



 ウソですよね仁美先輩!



「えーと、ここか?」



 ビルが立ち並ぶ街並みの一画にある古ぼけたテナントビル。

 目的の場所はこの地下だ。


 これかかな?


 えーと『bar se calmer』……

 バルス? 滅びの呪文か?


 まあいい。

 仁美先輩が送ってきた地図の場所は確かにここだ。


 仁美先輩……あの写真の男!

 絶対許さん!!



 バンッ!

『チリリリィィィーーーン』



 オレは勢い込んで店の中に飛び込んだ。

 ドアベルが扉の勢いで鳴り響く。



(かがり)! 仁美先輩!」



 回廊よりも薄暗い店内。

 中にはオレを驚いて見る4人がいた。


 仁美先輩と……篝と……あの写真の男!!……と知らないオッサン。



「篝!!!」



 篝は浴衣姿で仁美先輩の左隣に腰掛けていた。


 それで問題の男は……えっ!?

 カウンターの向こう?

 と言うことは……



「雄也!乱暴に扉を開けない!!」



 仁美先輩の叱責がオレに飛んだ。



「いやでも……だって……」

「『でも』も『だって』もない!」

「イエスマム!!」



 仁美先輩はすっげぇキレーだけどおっかない。

 オレはちょっと苦手だ。



「そこ座んなさい」

「はっ! 失礼します」



 ヒトミ先輩に言われるまま篝の左隣に座った。



「なんでユーヤがここに来るのよ!」

「それはこっちのセリフだ」

「私はヒトミ先輩に誘われて……」

「オレも仁美先輩に言われて……」



 オレはスマホを取り出し先ほど仁美先輩から送られてきたカキコミを見せた。



「何これ!?」



 そこには目の前のイケメンの写真と『カガリが目の前のイケメンに話しかけられてます。このままだとカガリ獲られちゃうよ』というカキコミ。



「これ見てカガリがナンパされてると思って……」

「どういう事ですか先輩!」



 篝が仁美先輩をジト目で見るが……



「別に嘘は言ってないわよ」

「どこがですかぁ!」



 篝の苦情も先輩にはそよ吹く風。



「だって天磨君に話しかけられたでしょ?」

「注文聞かれただけじゃないですかぁ!」

 まあ、店の人間なら当たり前か。



「このままだと雄也と別れて他の男と付き合うかもしれないじゃない?」

「ぐっ! そこまで言ってないですぅ」

 なに!

 篝はオレとの別れ話を相談していたのか!?



「謝るって約束したでしょ」

「そ、それは…… でも、それは明日ってぇ‼」



 ピーピー苦情を述べる篝を相手にせず仁美先輩は空のグラスをスッとコースターに戻した。マジでキレーで絵になる女性(ひと)だよな。



「天磨君。新しいカクテルお願い」

「はい、何に致しましょう?」



 注文を聞くイケメン。

 黒い髪がサラッサラ、睫毛なげぇ、身長も高いし。

 くっ!

 マジでカッコいい。反則だろ!

 べ、別に悔しくなんてないんだからね!



「雄也も奢ってあげるから何か頼みなさい」



 男前の仁美先輩がそう言うとイケメンがオレにオーダーを聞いてきた。

 こいつバーテンダーだったのか。

 ホントにイケメンだなコイツ。


 しかし、カクテルか……

 カクテルなんてよく分からん。

 説明を受けたがさっぱりだ……


 モスコミュール(※1)?

 どっかで名前を聞いたことあるな。

 まあ、それでいいや。



「それで……2人はどうするの? 仲直りするの? しないの?」



 ぐっ!

 直球だな仁美先輩は……

 まあ、そこがカッコいいんだけど。



「喧嘩の原因は聞いたわ。何で直ぐに追わなかったの?」

「そ、それは……ちゃんと()()話そうと……」



 オレの返答に仁美先輩は大きな溜息を吐いた。



「雄也も()()なのね」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

※1 モスコミュール

ウォッカ、ライム、ジンジャーエールをビルドで作り銅のマグカップ(銅マグ)で提供されるカクテル。ジンジャーエールを変えることでで甘くも辛くもできる万能カクテル。実を言えば銅は熱伝導率が高い!なので銅マグを使用すると氷が溶けやすくなるので、本当は銅マグを遣うのはよろしくない。だけど夏に銅マグ使うと冷え冷えで旨いんだなこれが(´ω`*)

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― 新着の感想 ―
[一言] モスコミュール・シャンディガフは、かっこつけて「ウィルキンソンありますか?」って言ってたなぁ〜 恥ずかしい……
[良い点] なんかじゃんけんのような関係性がおもしろい(^^♪ リッキーさん、おねえちゃんだ(笑) [一言] リーテ・ラトバリタ・なんとかかんとか(以下略)
[良い点] それぞれの役割がしっかりしてて、これから最終章に向けての着地が見えてきましたね。
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