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勇者様のお食事

吐き気を催すほどの匂いの食事。

鼻をつんざくようなアンモニア臭に加え、不気味な黄土色の粘土が僕の皿の上にあった。

「いいかげん食べてください」

魔王は命令口調でそれを言い放つと、いつもの侮蔑の目線を僕に向けるのだった。

「この食堂の最高級品ですよ」


何言ってんだこいつ・・・?

俺はその言葉に切れそうになった。

拷問だ……間違いない。

魔王は皮肉をこめてこんなことを言っているのだ。

お前にとってこの程度の食事が最高級なのだよと

いつもいつも腐った料理ばかり出しやがって、この前はなんだ米粒大の人間の目玉や頭蓋骨がたくさん散りばめられたスープが出てきたぞ。

思わず魔王にぶちまけてしまった。

くくく、あの時の魔王はぽかんと口を開けて、地団駄を踏んで怒り狂いやがってよ……そのままゲロをぶちまけたら泣き出して外に飛び出していきやがった。

爽快だったぜ……

俺はこんな料理を食べなくてもな。

毎晩ベッドで寝ているときにかわいいメイドさんが出してくる料理を食べてんだよ。

お前が出す料理なんか目じゃないぜ。

ああ、ほんと今日もうまかったなぁ……


ぐー


腹が鳴る音がなった。


なんだ? どこから聞こえた? 魔王の腹の音か? まさか俺を食べようとしているのか? 

ふざけるな。ふざけるなよ。食べられてたまるか! くそがくそがくそが 俺はお前の拷問にたえてやるたえてたえてたえてお前を絶対に殺してやるからな! おい!


「お腹鳴らしてるじゃないですか……何故食べないんです?」

「腹を鳴らしてるのはお前だろう! 魔王! ごまかすんじゃない!」

「私は先ほどから食べてるじゃないですか」

見ると、確かに魔王の皿はこの粘土を半分まで食べていた。

どういうことだ? いつ食べた? いやそもそも俺はいつ食卓に座り料理を出されていた? 

ベッドから起きてからまるで記憶がない。

どういうことなんだ?

幻術なのか?


「そうだよ。幻術だよ。彼女と目を合わせちゃだめ」


俺は声をする隣の方向を向いた。


そこには気さくなエルフの娘が座っていた。

「私が魔法でこの料理を食べられるものにしてあげる」

彼女は皿に魔法をかけた。

「あれれーおかしいなぁ。あ、わかった魔王の血が足りないんだ。そう、私の術式には魔王の血が必要なの。

「そうなんだ。じゃあ魔王から血を抜き取らないとだめだね」

「うん。がんばろ。勇者様」


魔王は怯えた表情で指を震わせていた。

俺と目を合わせると、涙を流しながら指先をもっていたナイフで傷つけ、皿にポタポタとおとし始める。

「・・・ぃ・・・たい」


その瞬間料理たちが子ウサギのリゾット、すばらしい香りのする炒飯、香ばしい匂いのする中華風スープへと変わっていった。

俺はそれを見た途端、それに手を伸ばし、腹いっぱいに食べた。


「ありがとうなエルフのお嬢様」

俺は隣に座ってるエルフに礼をすると思う存分食事を堪能した。

「私が……してあげたのに……」

魔王はそれから食べていた食事を止めてぐずぐずと涙を流していた。


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