表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
硝子の箱舟  作者: 花内 湖々
6/8

世間体

あゆみを憎んでいるわけでも、特別嫌なことをされたわけでもないのに、どうしてこうも交われないのだろう。


この旅行に来る前から、私はあゆみと話すとモヤモヤしてしまうことが多かったけれど、果たしてこれは本当にあゆみだけのせいなのだろうか。私自身があゆみを見下しているからではないのか。


私はいわゆる「第一次結婚ラッシュ」と呼ばれる時期に結婚した勢だ。


就活で知り合った彼と大学卒業前に交際し始め、社会人になり、1年半の遠距離恋愛を経て、3年半付き合った末に結婚した。


では、大学生の頃の私が恋愛に積極的であったかといえば、否である。


大学は女子大だったし、大学生活はほとんど演劇とバイトに明け暮れ、恋愛なんてほとんど興味がなかった。一時期、高校時代の後輩と付き合ったこともあったけれど、それもたった3ヶ月で破局した。


いろいろあって大学2年生で演劇は辞めてしまったけれど、その後は塾講師のアルバイトと趣味に熱中していて、恋愛に割く時間はほとんどなかった。


あゆみたちと集まって恋愛の話をすることもあったけれど、趣味が充実していたし、仲のいい友達もいたので毎日が楽しく、彼氏がいないことを引け目に感じたことも、彼氏がほしいと感じたこともあまりなかった。


そんなわけで出会いの場にも誰かの誘いがないと行かなかったし、恋愛においてほとんど努力した覚えがないのである。


もちろん結婚するまでの間に旦那とは喧嘩もしたし、その度尊重すべきところは尊重し、自分の意見も都度伝えて、信頼関係を持続させるための努力はしてきたけれど。


つまり、20代中盤で結婚できたのは、ただただ運が良かっただけたった。


そんなわけで、私は「彼氏ができない」と悩んだことがなかった。それは別にモテたからではなく、恋愛の優先順位が低かっただけなのだ。


でも、そのおかげで、恋愛でガッついた姿勢を見せることもなかったと思う。

出会いの場に行くと「この人と付き合うことになるかもしれないから女らしいところを見せて気に入られたい」という下心はあったが、「何が何でも彼氏がほしい」と思ったことはない。実際、恋人のいない生活では、自分の関心ごとだけに集中してられて楽だった。


昔から自分の好きなものに熱中して、周りから自分がどう見られているかをあまり気にしたことがなかった。だから周りと自分を比べることも少なかったし、自己肯定感も高い方だ。


その点、あゆみは私とは逆だったのだ。

自分を他人と比べ、同じであることに安心し、他人が自分にはないものを持っていると無性に不安になり、無理して周りに合わせて取り繕う。


いつしかそれはあゆみ自身の性格を作っていき、今に至っているのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ