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ロリコン探偵と恋する人魚姫  作者: 0(ナイ)
鬼女の宅急便 事件
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鬼女の宅急便 事件 ①

ふぅ~ふふん ふふ~ん

はぁ~ 、♪

かぁーみさまがいてぇ~♪♪


JAS◯ACギリギリセーフかな?

どうも、ヤッちんです。

私が小さい頃は、お上と言えば年貢を取り立てる恐ろしいものでした。願いを申し出ようものなら、不思議に打ち首獄門です。


さて、その奇妙奇天烈大百科な事件が起きたのは、春の訪れを陽の暖かさに感じ始めた4月の始めでしたナリよ。


ところで皆さん、マヨイガって知ってますか?

迷い家って書きます。

読んで文字のごとく、迷子の家です。

山の中とかで行き当たる不思議な無人の家。その家に入り、何か持ち帰ると幸福になれるそうですが、もう一度行こうとしても絶対に辿り着けないのです。ワンチャン ヒットアンドウェイです。


というように、基本迷い家は待つタイプなんですが、今回の迷い家はちょっと積極的なのです。


ピンポーン。事務所の玄関のチャイムが鳴った。

「ヤッちん、また何か来たよ」

「自分で出て下さいよ。今、忙しいんですから」

「テレビ見ているだけじゃん」

「タイムリープですよ!タイムリープ!! 本当に出来たら凄く無いですか?」

今、私はというと、タイムリープについてのドキュメンタリーを見ていた。

「凪さん知ってます? 過去を変えても未来は変わらないんですって。過去を変えると、別の時間軸の別の世界が新たに出来るんですって。それをパラレルワールドって言うんですって」

「そうなんだ。凄いね(棒)。録画しといてあげるから、ほら」

「どうせ、凪さんのなんだから。また海外のオークションで買ったカメラでしょ?」

つい先ほども、宅配便が来た。物は今言った通り凪さんが買ったカメラです。

今も届いたカメラがちゃんと動くか熱心にチェックしてます。古いカメラばかり集めて何になるんだろう。姿形が違っても結局どれも写真を撮るだけなのに。


もう! と、私は仕方なく玄関へ向かう。

だが玄関を開けると、誰も居なかった。

その代わり、ひと抱えくらいの木箱があった。

桐で出来た立派なものだ。


「凪さん、こんなのありましたけど?」

私は箱を持って凪さんの元へ。

「何それ! 差出人も無いじゃん!? 爆弾とかだったらどうすんだよっ!!」

「別に爆発しても、私達死なないから良いじゃないですか」

「そっか。ーーいや! ダメダメ。部屋が大変な事になる。屋上行こう、あそこなら何も無いから!!」

「すいません。もう開けちゃいました」

「嘘!マジっ??」と、焦って自分の座っていた椅子の後ろに隠れる凪さん。

「大丈夫ですよ。てゆーか、これ凪さんのじゃないですか?」

と私は小さなブルマを両手で広げ見せ言う。

「違うわっ! そんなの履くか!!」

「いや、履くとは思ってませんよ。ほら、凪さん匂いを嗅いだりするじゃないですかぁー」

「するか! まるで、普段してるみたいに言うな!! 箱の中はそれだけか!?」

「いいえ」


箱の中には、ランドセルに女の子物の服一式。下着まで入っていた。

使用品の様だが綺麗に洗われている。柔軟剤か? 花の様な良い匂いがする。

「これヤバイやつじゃないですか?」

私がそう言うと

さっきまでのふざけていた凪さんの顔付きが変わる。

凪さんは箱の中身を手に取って見た。

「パンツ盗んだりしないでくださいよ」

「するか!! 教科書は小2の国語だが、これは今年度発行の物だ。つまり、常識的に考えて不必要になって捨てた物じゃない。服のサイズ、ランドセルのベルトの長さから考えて身長130cm前後、小2の少女にしては大きいな。この体操服のデザインは都立◯△小の物だ。学校は此処から1km程に在る」

「凄いですね。まるで探偵みたいですね。でも、良く聞くと内容が変態トリビアですね」

「俺は探偵だ! 褒めるか貶すかどっちかにしろ! 」と言って、凪さんは「ん?」と何かに気付いたような顔をし視線を止めた。

「コレ見てみろ! ヤッちん」

凪さんは教科書を裏返し見せた。

「ん?」

「名前があるだろ?」

見ると『新沢友美』と書いてある。

「近所の子ですかね? 探せば持ち主、見つかるかな?」

「この子、先週から行方不明になってるぞ」

「え?」

「マスコミは実名報道して無いが、ニュースでもやってる。昨日、駅前でビラ配ってたやつだ。それには実名と写真が付いてたわ。一応、もしかしたら依頼があるかもしれねえと思って、ビラ取ってあんぜ! とにかく、高城に連絡だ! なんか情報あんだろ」


「新沢友美ちゃん、可愛い子ですね。だからビラ貰って来たんですね」

私は凪さんが貰って来た、ビラにある新沢友美ちゃんの写真を見ながら言う。

「ちちち、ちっげーよ!! 仕事に繋がればと思ってなぁー!」

「へー、仕事熱心ですね」


「草薙凪、未成年誘拐でお前を逮捕する! ほらっ逮捕令状よ!!」


と、勢い良く入って来るなり開口一番、高城さんは逮捕令状を掲げ言った。

「12:34分確保!!」

と、節丸さんが凪さんに手錠を掛ける。

節丸太郎さんは、高城さんの後輩の刑事さんです。

と、落ち着いて説明している場合では無いです。

「ちょっと待って下さい! どうして凪さんが? 確かに変態ですけど、そんな事まではしないです!!」

と私は弁解する。

「ゴメンねヤッちん。でも、こうして令状も出てるのよーー」

「おい、その令状ちゃんと見せてみろ?」

凪さんが言う。

「嫌よ!」と高城さんは、さっと逮捕令状をしまう。

「ヤッちんそれ取れ!」

「え? はい」

凪さんに言われ、私が取ろうとすると、高城さんは身をひるがえし逃げる。

こちょこちょこちょ、とくすぐる。

「ダメだって、ヤッちん! 公務執行妨害よ。あはははーー」

「えい」と、私はすかさず、笑っている高城さんから逮捕令状を奪う。

「……駅前、グーチョキベーカリー開店?」

それは、逮捕令状じゃなく駅前に新しく出来るパン屋の手作りチラシでした……。

「やーね。冗談よ」

と悪びれもせず言う高城さんに、凪さんは自分の両手に掛かる手錠を見せて


バキッ!


と目の前で鎖を千切って見せた。

「ぎゃあー! 手錠が!! どうすんですか? 始末書もんじゃないですか!?それ 市民の血税で買ってるんですよ!」

と節丸さんは頭を抱えて叫ぶ。

「知るか!! 血税で買ったもんで遊ぶんじゃねえ! 俺もその市民だ!!」

凪さんはブチ切れてます。まあ、当然です。

私ら叩けば埃まみれですから、内心ドキドキです。

「アンタ、どういう腕力してんのよ? 前から喧嘩強かったけど、最近増してヤバイわね! 国家権力に楯突く気? 国が違えば射殺もんよ。撃ち捨てゴメンよ!」

高城さん、完全に国家権力の濫用ですよ。

此処にはバカと変態しか居ないのか。


時間を無駄に使ったが、本題に入る。

状況を話し、箱を開けて見るなり

「これ桐箱事件ですよ!」

と節丸さんが言った。

「桐箱事件?」

高城さんが小首を傾げて訊く。

「連続美少女誘拐事件ですよ。通称、桐箱事件! 都市伝説として語られている有名な未解決事件です」

また都市伝説ですか。それより、美少女と聞いて凪さんの顔つきが変わった。

きっと新沢友美ちゃんも美少女なんだろう。今回も、お金になら無い仕事になりそうです。

「初めて聞いたわ」

「高城さん知らないんですか!? ネットでも有名な、知る人ぞ知る桐箱事件なのに」

「知る人しか知らないんじゃない。バカじゃないの? だから、何それ?」

「最初の事件は明治時代になります」

と節丸さんは神妙な顔をして言う。

「そんな、古い事件知るか」

「それが、1970年近くまで続くんですよ!!凄くないですか!?」

節丸さんは鼻息を荒くし、興奮して語る。

節丸さんは犯罪に詳しい。刑事だから当然だと思うだろうが、そういうレベルじゃない。節丸さんは所謂犯罪ヲタクで、それが高じて刑事になった。彼が特に好むのは異常犯罪や未解決迷宮入した事件だ。彼は犯罪心理学者ではなく、刑事になりたかった。それは犯罪を肌で感じられるから。もし、刑事になれるだけの能力が無かったら、きっと犯罪者になっていたろうとみんなに言われている変態だ。凪さんに続き、コイツも異常者である。


節丸さんは語る。桐箱事件をーー

「始まりは明治の最後の年1912年の2月になります。当時、10歳の少女が行方不明になり、数日後に彼女が行方不明時に身に付けていた物が桐箱に綺麗に詰められ自宅に届きます。そこで、誘拐事件と断定されますが、それから犯人からなんの音沙汰も無く、結局迷宮入します。今度は大正9年1920年にまるで同じ事件が起きます。それから、大正時代にもう1件、昭和になって2件同様の事件が起きてます。被害に共通するのは小学生で、皆近隣で有名な美少女だった。そんな事から、大掛かりな人身売買組織の存在が疑われたが、結局なんの手掛かりも掴めず。1番新しい事件は、1968年です」

「模倣犯じゃないの? ネットとかで有名なんでしょ。なんで、今さらやんのよ。愉快犯の仕業じゃないの?」

「いいえ、コピーキャットなんかじゃないです。箱の裏にアザミの家紋が有る」

そう言って、節丸さんは届いた桐箱の蓋の裏を見せた。確かに中心に何かマークが描かれている。

「それが、なんなの?」

「届いた全ての箱にこの家紋が有ったんです。情報として発表はされてますが、この家紋の形は一般に公表していない。犯人だけの知る情報だから、状況証拠にする為というより、単に古い事件で資料が少なかったからってだけですけど。当時の遺留品は全て処分されてます。あるのは文書化した古い資料のみです。もったい無い事です。それでも、資料室の古い資料の中から、当時の捜査記録を見つけ出し、初めてこの家紋を見た時は、刑事になって良かったと心底思いましたね」

「成る程、じゃあその事件の関係者って事ね。もしくはこの事を知ってる者。それってアンタじゃん? そんなもんに、今さら興味を示す刑事なんて居ないわよ。はい、事件解決」

「やめて下さいよ。確かに警察関係者が犯人ってのは面白いですけど、僕は犯罪を犯す事に興味は無いって言ってるじゃないですか、まったく。当事者になったら、オチが分かってしまうじゃないですか。ーー実は、この事件の本当の面白さは、ここからなんです」

節丸さんは嬉しそうに笑って続けた。

まだ何か、この事件には秘密があるようだ。

「この事件の起きた場所は全部同じなのです。港区○○にある空き地なんです。そこで子供達が遊んでいると、美しい少女が現れて、彼女と遊んでる内に被害者だけが消えていたそうです。形は違えど全部、美しい少女が被害者が消える前に現れてます。目撃談からすると、皆容姿が同じようなんです。長い黒髪の育ちの良さそうな服を着た少女だそうです。その後、事件の名の通り桐箱が届くのですが。差し出し人は分からないんですが、被害者宅まで届けた人物は特定されてます。皆、着物の美しい女性に駄賃を貰って届けたそうです。この事から、近年ネット上では桐箱事件では無く『鬼女の宅急便事件』と言われてます」

「めちゃ、センス無いネーミングね。鈴木○夫に訴えられんじゃないの? でも、なんの為に桐箱に入れて届けるのかしら?」

「普通は、犯行を誇示する為や愉快犯的に被害者家族の反応を楽しむ為ですが、どうも僕にはそう思えないんですよね。桐箱に入れるって、何かしらの被害者の家事に対しての礼みたいな物を感じるんですよね。ちなみに、まだこの事件の本当の面白さを語ってないんですが、語っても良いですか?」

「何よ! まだ何かあるなら勿体ぶって無いで早く言いなさいよ!!」

「その空き地には、昔大きなお屋敷があったらしいんです。そのお屋敷は火事で焼けてるんです。使用人は逃げて皆無事だったんですが、主人と妻の焼死体が見つかったんです。遺体を調べると2人とも火事の前に死んでたんです。死因は刺殺。斧か鉈のような物でめった打ち。火はその犯人が点けたと思われました。実はこの家には、美しい1人娘が居たそうなのです。まだ9歳になったばかりですが、その美しさは近隣でも評判だったらしいです。その娘の姿が焼けた家の中に無いので、その娘を狙っての異常者の犯行に思われましたが、結局犯人は捕まらず、少女も見つかりませんでした。そして、彼女の家の家紋がこのアザミの模様なんです。ちなみに彼女の一族はもう途絶えています。

「こわっ! オカルトオチかよ!!」

と黙って居た凪さんが言った。

「いや、まだそうとは決まって無いですが、色んな点が微かな線で繋がっている様な感じがするんですよね」

「俺、幽霊とかマジ苦手なんだよ!」

凪さんの思わぬ弱点発見だわ。

「ヤッちん、今日怖くてお風呂1人で入れないよぉー」

「銭湯でも行ったら良いじゃないですか」

「やだよ。ジジイばっかりだし」

死ねば良いのに








つづく

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