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辺境暮らしの付与術士  作者: 黄舞
第3章

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第48話

「これはこれは。随分と珍しい物をお持ちのようだ。しかし、今の炎は貴方の魔法によるもの。幻ではないと誰が証明できるのかな?」


 声のした方を見ると、この国の主、ヴァンが近づいてきた。

 出来ていた人垣が割れるように散っていく。


「これは幻などではありません。閣下。お疑いならば、いか様な炎を用い、心ゆくまで試していただいても構いません。ただし。この布が断つことの出来るものは炎だけでございます。強度は他の布と変わらぬため、ご注意の程を」

「ふむ面白い。誰か、炎魔法を使える者を集めよ。この布を燃やすことが出来た者には報奨を与えると伝えろ。その代わり聞いた通り、炎の属性だけだ。それ以外でこの布を傷つけた者は縛り首とする」


 報奨と聞いて目の色を変えた、腕に覚えのある者もない者も、魔術を少しでもかじったことのある者は、我先にと布に群がった。

 例え、金属の細い糸で織られた布でも、高温に晒せば燃えるか溶ける。


 絶対に燃えない布などこの世にあるはずもないのだ。

 先程ララが見せた光景は幻、もしくは単に火力が足りなかっただけと断じ、次々に自身の最高魔法を布に放っていった。


 屋敷の広場は異様な光景になっていた。

 様々な炎魔法が放たれ、布に当たり消えていく。


 一歩間違えば、延焼を引き起こし、大惨事となる。

 それを許容しているこの屋敷の主も、かなりの酔狂のようだ。


 ある程度の人数が挑戦した辺りで、多くの者が列から外れた。

 前の者が放った魔法の威力と、それでもなお傷一つ付くことの無い布を見て、戦意を消失したのだ。


「待って。それは炎魔法ではないわ。風魔法が混じっている。切り刻んで燃えやすくしてから燃やそうって魂胆かもしれないけど、許容されないわ」

「な、何を根拠に! 自分の布が今まさに燃やされるのが恐ろしくなったか!」


「あんたの首が縛られようと一向に構わないけれど、私の大切な布を切り刻まれるのは、許せないのよねー」

「戯言を! 大体放つ前の魔法の属性が分かるわけ無いだろう! 言いがかりはよすんだな!」


「それが分かるんだなー。あんた、この街のSランクの魔術師ララって聞いたことある? それが私。その私が分かるって言ってるんだから、分かるに決まってるでしょ?」


 かなり論理性の欠けた暴言だが、それを聞いた男の顔は見る見るうちに青ざめて行った。

 どうやら、炎属性以外に風属性を混ぜた魔法を放とうとしていたのは事実らしい。


 男は捨て台詞を吐きながら、その場を後にしようとして、ヴァンにその肩を掴まれ止まった。

 優男の手から放たれたとは思えないその力に、男は一歩も動けなくなっていた。


「どこへ行こうと言うんだい? 言っただろう? 炎魔法以外で傷つけてはいけないと。君は僕が興味を持った大切な品を台無しにするところだったんだろう? 今更逃げれると思うなよ」

「ひ、ひ! お許しを!」


 ヴァンは兵士に男を受け渡すと一言二言伝え、笑顔を携えララの元へ戻ってきた。

 連行された男は何やら叫んでいるが、既に屋敷の奥に連れられ、その声もやがて届かなくなった。


「さて、と。ララと言ったかな? この布も凄いが、君もなかなか凄いようだね。初めて見たよ。放つ前の魔法の属性を言い当てるなんて 」

「さほどのことではありません。閣下」


 ララは人が変わったような口調と振る舞いを見せている。

 普段はとてもそうは思えない言動と見た目だが、間違いなく、彼女は歴戦のSランク冒険者で、マナーも、時には、わきまえているのだ。


「気に入ったよ。この布も、君も、ね。是非買い取らせてくれ。君の言い値で買い取ろう。いくらで売ってくれるか、今度招待する会食までに考えてくれ」

「仰せのままに。閣下」


 屋敷を出たララは、外で待っていたカイン達を見つけると、満面の笑顔で右手の人差し指と中指を立て、目いっぱい前に突き出した。



 サラ達は今、この国の主の屋敷の中にいた。

 コルマールまでの旅路を無事に済ませた5人は、早速カインを探そうとしたのだが、思わぬ邪魔が入った。


 道中、身分の証明にと、各人が自分の冒険者カードを見せたあとのことだった。

 それまで素っ気ない態度を示していたルティの態度が豹変したのだ。サラとソフィに限って。


 特にサラの事が随分と気に入ったらしく、その若さでSランクは凄いとか、私の物語の主人公にしたいとか、しきりに言い出した。

 街についても、ぜひこのまま護衛を続けて欲しいと言ってきた。


 この街で人と会う約束をしている事を伝え、辞退しようとしたのだが、なかなか聞いてもらえず、仕方なく、博覧会の間だけ、引き続き護衛を続けることとなった。

 カインのことはソニア達3人に任せることにした。


 屋敷に入る時に、招待客、もしくは出品をする者の代表者以外は入場出来ないと言われた。

 しかし、ルティが招待客で貴族であることから、2人の帯同は許された。


 広場では、どんな炎魔法でも燃えないという布を、燃やせば報奨を貰えるという言葉に踊らされて、多くの魔術師が挑戦をしている最中だった。

 まるでカインの付与魔法みたいだなと思いながら、ソフィは炎魔法が使えないので参加せずに、遠巻きで見ていた。


 やがて、不正をしようとして捕まった、男が現れ、ルティの興味はその男の行く末に変わったらしい。

 2人もその場を後にし、野次馬のごとく、男を連行する兵士の後を追うルティを見失わないようにした。

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新作ハイファン書き始めましたヾ(●´∇`●)ノ

千年の眠りから覚めた天才魔道具師は創りたい〜冬眠装置に誤って入った私が目覚めたのは、一度文明が滅びた後の未来でした〜

魔道具師が滅んだ千年後の未来で、コールドスリープから目覚めた天才魔道具師が、魔道具を創りたい衝動に駆られてあれこれ騒動を起こす話です。 良かったらこちらもよろしくお願いします!
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