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辺境暮らしの付与術士  作者: 黄舞
第3章

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第40話

「ってことは、このピアスは本当に永続的な強化効果を持っているって言うことか?」


 自分の右耳に付けたピアスに触れながら、ルークは驚きの表情を見せる。


「ああ。ミスリルという特殊な金属、それに俺の血が必要なんだが、運良くそのどちらも揃ってしまった」

「まったく。それが分かったとしても、今までお前のおかげで助けられてきたのは変わりない。改めて礼を言うぞ」


「それにしてもまずいわね。今はさすがにこのネックレスがどんな効果があるかなんて吹聴することなくなったけど、昔は私達このネックレスのおかげって話を色んな人にしているわ。その説明ですら、そんなことが出来る人間がいるなら、って人が多かったけど、本当のことが明るみになったら、間違いなく大事になるわよ」

「ああ、そうだな。これは絶対隠さないといかん」


「どういうこと?」

「もう。ララはこれだから。ちゃんと話を聞いてた?」


「えへへー。実は途中から面倒くさくなって聞いてなかったー。でも要はカンちゃんのおかげで強くなれてたってことは、間違いじゃなかったんでしょ?ありがとうカンちゃん!」

「あなたねー。だから、そのカインちゃんのおかげがバレると、大事なカインちゃんの身が危険にさらされることになるのよ」


「え?! 大丈夫なの?!」

「今はまだ大丈夫だけど、少なくとも慎重になった方がいいわね。カインちゃんの事を知っている人は、ほとんどが顔を見せないだけで、近くに潜んでいるなんて思っているはずよ。私達が言っていた、ネックレスを通して強化魔法をかけるなんて方法は有り得ないと思っているはずだもの」


「しかし、今カインはここに姿を現し、まずいことにここから離れた場所にいた事をギルドに伝えてしまっている。少なくとも遠隔による強化魔法の付与について、本気にする奴らが出てくるかもしれん」

「そして、本当の永続的な強化魔法に辿り着いたら、カインちゃんの争奪戦が始まるでしょうね」


「問題は、探りを入れてきた奴にどう対処するかだ。カイン。実際に遠隔による強化魔法の付与なんてのは出来るのか?」

「うーん。やったことは無いが、出来ると思うぞ」


「できんのかよ!」

「ああ。かなり難しくはあるけどね。特に今回は目印になるミスリルもあるし、全く居場所が分からないなら見つけるのにやや骨が折れるが、大体の居場所が分かっているなら、やれないことはないと思うよ」


「まじか・・・。それはそれで恐ろしいな。しかしそれなら少なくともごまかしが効く。少なくとも永続的な強化魔法の付与よりもカインの身の安全が保証されるだろう」

「どういうこと?」


「ああ! だからてめぇは。遠隔による強化魔法の付与なら永続的なのと違って、毎回カインに強化魔法を唱えさせないといけないだろうが。それなら、普通に強化を使える魔術師を連れていくのと変わらねぇ」

「ああ。なるほどねー。ところでカンちゃん。その肩に乗ってる鳥どうしたの? バディってやつ? いいなぁ。私も可愛いバディが欲しいなぁ」


 ララがいる事すらたまに忘れるマチを指し、羨ましそうな声を上げる。

 当の本人は自分が話題にされていることに気づいているのかいないのか、先程からしきりに頭を左右に倒しながら黙っている。


「ああ。これはね。バディとはちょっと違うんだ。精霊なんだよ」


 カインはマチの事を説明する。

 ララは目を輝かせながらその話を聞いた。


 ちなみにバディというのは魔術師が使役する使い魔の事で、精霊ではなく動物や魔物に使役魔法による拘束を与え、魔術師の手足として働く便利なものだ。

 しかし、精霊魔法同様、使役魔法の習得も適性が必要で、練習をすれば誰もが使えるようなものではなかった。


「えー、カンちゃん、精霊を眷属にしたの?! しかも受肉済みなんて。羨ましいなぁ。さすがカンちゃん凄いね。ねね、リーダー! 私も精霊の眷属が欲しい! 探しに行こ! 精霊の卵!!」

「うるせぇ! 今はそれどころじゃねぇだろうが!」


 そうでした、とペロッと舌を出しながら、ララは目を閉じ自分の世界に入っていた。

 おそらく可愛い精霊眷属を手に入れているところを妄想しているのだろう。


「ところで、ルーク達はどうしてこんなに変わってしまったこの街に今もいるんだ?」


 カインはこの街に入ってからずっと抱えた疑問を率直に聞いてみた。

 お世辞にもこの街の環境が良いとは言えない。


「こんなに変わっちまったからいるんだよ。この街は俺らの街だ。こんな街になっちまったまま後は知りませんなんて出来るかよ」


 ルークはこの街が今どういう状況か語った。

 前に知り得た情報と重なる部分もあるが、この街がこんな風になったのはある男のせいらしい。


 10年ほど前、その男はふらりと街にやって来て、瞬く間に街の全てを掌握してしまった。

 その時ルーク達はちょうど指名依頼を受けていて、長い間留守にしていたらしい。


 ルーク達が帰ってきた時には、既に表立って男を批判すること自体が、投獄の対象になるような事態になっていた。

 そして5年前、男は独立宣言を行い、この街をひとつの国にしてしまった。


 表上はコリカ公国の属国だが、国として法律は書き換えられ、他の国では違法になる多くのことが、この国では合法とされた。

 明確なのは金や力がある者がいい思いをするということ。


 以来この街には多くの人が集まった。

 初めに集まったのは商人達だった。


 他国では捌けないような違法な商品でも、この国では合法的にかつ高値で買い取ってもらえた。

 男も良い顧客のひとりだった。


 次に集まったのは冒険者達だった。

 この街で登録されるクエストは、危険なものが多かったが、その分報酬も群を抜いて良かった。


 しかも、他のギルドでは安全のために認められていない、ランク以上のクエストの受諾についても可能だった。

 もちろんきちんとこなせば報酬も払われた。


 一攫千金を夢見た無謀な冒険者達がこぞって集まったのだ 。

 その多くは夢に破れ、数少ない者達が巨万の富と名声を勝ち取った。


 また、犯罪者も多く集まった。

 この街では、他国でどのような罪を犯したとしても、国の法で罪にならない限り、捕らえることはしなかった。


 他国からの受け渡し要求も全て跳ね除けてきた。

 表面上だけとはいえ、コリカ公国の属国であり、かつその領土もコリカ公国に囲まれる形で存在するこの国に、強行出来る国はなかった。


 彼らの他にも彼らに付随する奴隷やら使用人やら、もしくはニィニィの夫のように一山当てようとした者やらが時節を問わずこの街になだれ込んで来ていた。


 元々の住民はこの変化に上手く順応し、甘い汁を吸っているか、もしくは淘汰されてしまった。

 ルークは必死でこの街を元のコルマールのように戻すため、冒険者の活動を続けながら、機を狙っているのだという。


「これはな。不確かな情報だが、どうやらこの街のトップは人間じゃないらしい」


 ルークによると、この街を独立させ、今なお君臨している男は、人外のものだと言う。

 どんなに調べても、男、という情報しか出ず、その姿を見たことがあると言うものもほとんど現れないのだが、唯一見つけた見たことがあるという者の話によると、服の袖から見え隠れした男の手は、人とは異なる形をしており、漆黒に染まっていたらしい。


「俺らの街を魔物が統治しているなんて有り得ねぇからな。なんとか正体を暴いてぶっ倒してやるぜ」


 ルークはその瞳に怒りの闘志を燃やしながら、右の拳を左の手の平に打ち付けた。

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新作ハイファン書き始めましたヾ(●´∇`●)ノ

千年の眠りから覚めた天才魔道具師は創りたい〜冬眠装置に誤って入った私が目覚めたのは、一度文明が滅びた後の未来でした〜

魔道具師が滅んだ千年後の未来で、コールドスリープから目覚めた天才魔道具師が、魔道具を創りたい衝動に駆られてあれこれ騒動を起こす話です。 良かったらこちらもよろしくお願いします!
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