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魔王の娘  作者: 守 秀斗
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第十七話:魔王、アンナちゃんから「魔王って何?」と聞かれる

 ある日、

「大変、大変」と言いながら、魔王の間にアンナちゃんが飛び込んできた。

「どうしたの、アンナちゃん」

「マオちゃん、魔王だったの」

「は?」

 

「だいぶ前から、そう言ってるけど」

「そうなんだ! そうなんだ!」とアンナちゃんは興奮しているのか知らんけど、私の周りをグルグル走り回っている。

 突然、アンナちゃんが止まる。

「ところで、魔王って何すんの」

「へ?」


「えーと、この世界を支配してます」

「何で支配する必要があんの」

「え?」

 いきなり問われて戸惑う。


「支配して楽しい?」

「うーん、あんまり」

「じゃあ、やめればいいじゃん」

 そんな事言われても。


「いや、これは仕事なんですよ。仕事って嫌なもんなのよ」

「ふーん、けど、それって、他の王様となんの違いがあるの」

 うーんと私は悩む。


「魔王って悪い事すんの」とまた、アンナちゃんが聞く。

「ほ?」

 どうやって答えようかな。

 私は悪い事はしていないつもりだけど、魔王と名乗っているんだから、悪い事しなきゃいけないのかなあ。


「マオちゃんは悪い事してないよね」

「うーん、まあ、そうね」

「なら、魔王じゃなくて、普通の王様とかと同じじゃないの。あと、普通の王様でも悪い事する人いるよね」

 うーん、困った。


「とにかく、魔王の座を父上から継いでしまったのよ」

「返しちゃえばいいんじゃない」

「いや、そんなこと言われても……」


「返したら死刑になんの?」

「なんないけど……」

「じゃあ、魔王なんてやめて、あたしと遊ぼうよ」

 なんか頭が痛くなってきた。

 なぜ、私は魔王なんだろう。


 あんまり考えると頭がおかしくなる。

「とにかく、世界の秩序を維持する必要があるんです」と私はきっぱりと言った。

「何で、マオちゃんがやんの」

「えーと……」

 何て答えればいいんだ。


「魔王だから……」と私が口ごもっていると、

「だから、魔王やめればいいじゃん」とアンナちゃんにはっきり言われてしまった。

 だから、そんなこと言われても。


 魔王としてのアイデンティティが崩壊しそうだ。


 何とか屁理屈を考えた。

「まあ、世の中を平和にしようとする独裁者みたいなもんです。そういう人が必要な時もあるんです。誰かがやらねばならないんです。やっぱり平和の方がいいでしょ」

「じゃあ、やっぱり魔王様じゃなくて、マオちゃんでいいよね!」とアンナちゃんが、私に顔をものすごく近づけて、大声で言った。

「は、はい」と返事をしてしまった。


「魔王様のマオちゃんが、マオちゃんと呼んでいいと言ったぞ、イフリート! 髭を全部引き抜いてやる、この野郎!」とアンナちゃんはまた部屋を飛び出て行った。

 イフリートと、喧嘩したのかなあ。


 とにかく疲れた。

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