第十六話:魔王、初代秘密警察長官を更迭する
最近、気になっていることがある。
例の異世界担当の秘密警察だが、全然活動してないようだ。
長官のイフリートを呼びつける。
「秘密警察は何してんの? 先日も、異世界転移者のごろつき盗賊団のせいで、村がひとつ全滅したんだけど」
「あ、いや、そのー、まだ組織の規則とか作ってますので」
「じゃあ、全く動いてないの」
「まあ、そうです」
あきれた。
どうも、イフリートはやる気が無いみたい。
何もしてないと、どんどん異世界から転移者、転生者が侵入してくるではないか。
仕方が無い。
「悪いけど、イフリート、あなたには秘密警察長官をやめてもらいます」
「えーと、もとの執事に戻るわけですか」
「そうです」
「わかりました」
イフリートは、小躍りして出て行った。
何だか、嬉しそうだ。
ったく。
秘密警察の隊員から、新長官を募集したけど、誰も応じない。
やはり面倒みたい。
まあ、突然、こっちの世界に現れて、わけのわからないことする異世界の連中には、付き合いきれないのかもしれんな。
しかし、このまま、放っておくわけにはいかない。
城全体で募集をかけたら、一名、希望者が現れた。
変態転移者のハーレムでひどい目にあっていた女性だ。
名前はアレクサンドラさん。
魔王の間に呼びつける。
「あなたには悪質な異世界転移者及び転生者を退治するため、秘密警察長官に任命します。よろしくね」
「仰せつかりました、魔王様」
アレクサンドラは美人さんだけど、背中に酷いキズがある。
SM趣味の変態転移者にやられたようだ。
「ところで、魔王様、ひとつ質問があるのですが」
「なんでしょう」
「異世界転移者及び転生者が、まだ悪事を行っていない場合でも逮捕、粛清してよろしいのでしょうか」
「うーん、まあ、確実に悪事を行うとわかっていれば、しょうがないですね」
「わかりました」
「じゃあ、お願いね。私は、いつも通り一人で行動するけど」
「承知いたしました」
とにかく、これで、少しは楽になるかな。