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ブランチオブ・ポテンシャル  作者: αラッブ
19/26

19話 武闘大会

 ゴブリン討伐のクエスト報酬を貰って翌日。

 斉藤を王都を観光することにした。宿の主人やらそこら辺を歩いてる冒険者やら色んな人に聞き、結局行くことになったのは闘技場。

 この地域は闘技場で行われる、力比べの様な雰囲気の武道大会が活発らしい。賞金とかあるのだろうか。

 異世界ものじゃよくある競馬みたいな雰囲気のギャンブルじゃないらしい。武道大会もよく聞く話だが。

 そういえばどっからそんなコミュ力湧いてきたんだ俺。

 ちなみに聞いたところによると闘技場の場所は俺達が泊まっている宿の東にあるらしい。そこに行くには宿を出て右に行き、四つ目の街灯を左に曲がって大通りに出たら、右に行って少し歩けば闘技場に着くらしい。分かりやすくて助かる。

「四つ目の街灯か・・・当然だけど信号機が無いもんな、この世界。というかこの国はそういう風に道を教えるんだな。

 まさかそんな所で異世界を感じるとは」

「話題の四つ目の街灯だ。ここで左だろ?」

 そうだった、と歩く方向を変える。そこを少し歩くと活気のある声が聞こえてきた。まるで祭りみたいな人だかりだ。喧騒の中でも一際大きな声で何かを呼び込む声があった。

「武闘大会はこちら!武闘大会はこちら!」

 おっさんが叫びながら手を上げる方向に人だかりが流れ込んでゆく。その流れに俺と斉藤も押し込まれ、流されるままに身を任せて会場へと向かうと、右と左で道が別れていた。なにか看板が立っていた気がするが、知らない土地で人混みの中を歩くとなるとそんな事気にする程の余裕は無く、人通りが少ない左の道へと向かう事にした。人を掻き分けそこに出てすぐ。なぜだろうか、流れに身を任せ歩いていたからか嫌な予感がした。

「なあ、斉藤」

「ん?なんだ?」

「なんか屈強そうな人が増えて来たがこの道で合ってるのか?」

 斉藤は一間開けて

「・・・さ、さあ?」

 と、お互い何も分からないままに歩いていく。数十秒も歩くと何かが書いてある看板が見えて来たのだが・・・



「なあ、斉藤。あれなんて書いてあるんだ?」

 と何故か落胆する斉藤に聞くと、

「あれは・・・」

「これは"新人冒険者武闘大会出場者はこちら"と書いてあるのだよ。少年」

 と食い気味に答えるどこかで聞いた様な聞いてない様な声があった。ついでに肩に乗る手の感触と一緒に。

 振り返ると子供の様な好奇心に溢れる翠眼、見覚えのある金髪イケメンがいた。

「あれ、昨日の・・・どうしてここに?」

 名前は聞いてない筈なので名前は分からないが、昨日のゴブリン討伐の際に会った変な人だということはすぐに思い出せた。

「ああ、昨日ぶりだな。少年。

 出場するのかな?君も」

 と斉藤にも言い、

「あっ・・・いや・・・人混みに流されただけっていうか・・・」

 斉藤が急に話しかけられて言葉に詰まりながら言い、俺も

「迷っただけというか・・・間違えただけというか・・・」

 と言うが、成程、と真剣な顔をしたと思えば目を閉じ、

『 ん?』『 ん?』『 ん?』

 何かと思えば

「ハハハハハハ!!」

 と大声で笑い出した。

『 草』『 www』『 急に草www』

 ああ、周りの目をが痛い。

 笑い終わったこの金髪イケメンは

「すまない、失礼した。」

 と言い、

『 マジで意味不で草www』『 マジで草www』

 全くだよ・・・

「つまり、少年。君たちは出場したいが出る勇気が無いという事か」

 と真面目な顔で見当違いな事を言った。

「えっ?」

「えっ?」

 二つの情けない声が揃った。

『 草』『 草』『 草』

 驚きで頭が真っ白になったが、抵抗しなければ連れていかれると瞬時に判断した俺は反論する。

「ほ、ほんとにただ迷っただけなので・・・」

 あれ?思ったより言葉が出ないな。最初に死ぬ前のコミュ力に戻ったみたいに。

 また金髪は笑い出し、

「失礼した。なに、恥ずかしがらなくてもいい。

 ・・・ならば敢えて言おう。君たちならば優勝も目ではないと」

 ・・・と、このイケメンは、顔をさらにイケメンにしながら熱い漢のドラマみたいなセリフで見当違いな事を言い出した。流石にヤバみを感じずには居られず、全身全霊を以てこのイケメンから逃げようと、この人の横を残像が出そうな雰囲気のスピードで通り過ぎる。それにはこのイケメンもその翠眼をかっ開き、逃げきれたか・・・

 と思ったのも束の間。体に左肩から反発力が生まれた。頭がガコン!!てなるプレゼント付きで。左手首にかかる強い圧力と共に。くそっ・・・このイケメン、握力が強い。簡単にいうとこの金髪爽やかイケメン熱血もどきの右を全力で走り抜け、逃げ切れたと思った瞬間には左手で捕まえられていた。

『 このイケメンつっよ』『 はっや』

 イケメンは目を伏せながらフッ、と満足げに

「敢えて言ったが、その予想を軽く越えられてしまうとは・・・」

 とつぶやき、続けて俺の方を見、好奇心と情熱で溢れるその目がこちらを見つめている。

「全く・・・少年。やはり君は、私の名を貸してでも出場するべきだ」

 と、掴んだ俺の左手を強く引っ張り、出場者入口に向かおうとする。俺も最後の抵抗として呆気に暮れていた斉藤を巻き添えにする事にした。

「ちょっ・・・離せ!」

 と叫んでいるが、知った事ではない。

「ちょっ・・・おま・・・マジで!・・・離せ!」





 出場者登録も完了させ、斉藤は勇者、俺はバレル少佐のお墨付きという口上で出場する事となった。

 そう、バレル少佐というのは出場者出入口で待機している俺の横にいる金髪翠眼変人イケメンの事である。

「グラエム・バレルさん」

「どうした、少年。緊張してきたのか?」

 腕を組んで壁にもたれながら澄ました顔で言った。

「いや、それは大丈夫です。」

「流石だな」

 と感心した様に言った。お前は部活の顧問か?

「そうじゃなくて、グラエム・バレルさん。貴方何でここに居るんですか?

 出場者じゃないでしょう?」

「何だ、そんな事か。私の名を貸したんだ。おちおちと観客席で見る訳にはいかないさ。

 それと、私の事はグラエムで結構だ」

 と言った所で、恐らく魔法か何かで拡大された音声のナレーションが聞こえてきた。

 あれ?聖法もあるんだったか?どっちでもいいや。

「第三試合!あのバレル少佐のお墨付き!ホタル・ヒイラギ!」

 という口上が何となくテレビで正月とかにやってたボクシングの番組を思い出させる。別に、地球にも俺がいるから見れない事は無いのだが、ちょっとしんみりした。

 そんな俺とは逆に観客席は歓声で湧き上がっていた。

「少年、敢えて言おう。負けるなよ」

 とグラエムが肩に手を載せた。

 こういうのちょっとこそばゆいけど、ちょっと優しい?

「頑張ってみますよ」

 と軽く言ってグラエムに背を向けて歩き出した。

 試合のルールは相手を無力化、または降参させたら勝ちというシンプルなものだった。ただ魔法、または聖法については身体能力向上系のものに限るらしい。

 まぁ、俺は使えないから関係ないけどな。

 相手の人も入って来る。アナウンスを聞いていなかったからわからなかったが、棍棒使いらしい。昔のヤンキーと言った風貌で、下を括ったブカブカのズボンと上着を着ていた。こういうの流行ってるのだろうか。

 などと考えていると、男はおもむろに上着を脱ぎ出した。そのブカブカの上着から見えてきたのは鍛え上げられた筋肉だった。

 新人冒険者武闘大会とか言ってなかったか?明らかに熟練の戦士なんだが?これが普通なのかな。

「両者が揃った所で、始めさせて頂きたいと思います!3秒前から!」

 と上裸の男は腰を落として棍棒を構え、こちらをスッと見据える。

 アナウンスが興奮した声で

「それでは!ご唱和下さい!3!」

 と言うと大地を揺らすような歓声が2人を覆い、俺も腰の刀に手を添えた。

「2!」

 歓声が大きくなっていく。

 足を肩幅で開く。

「1!」

 軽く前傾姿勢になる

 観客の興奮は最高潮に達していた。

「スタート!!!!!!」

 男はボソッと何かを呟くと、重そうな棍棒とは反して凄まじいスピードで突っ込んで来る。多分魔法か何かだろう。

 凄まじいスピードだという事は確かに感じるが、何故か避けきれる自信があった。アニメとかマンガでで良くある周りが遅く見える感じでは無く、相手のスピードは確かにとんでもなく早かった。かと言って俺の方が早く動けるという感じでも無く、相手の速さは俺を超えている気までする位だ。本当に今まで感じたことの無い不思議な感じだった。

 あのゲーム(マインド・ゲイブ)の居合切りとか出来たら良いなー、位の気持ちで構えた。見よう見まねの剣技の俺じゃあ棍棒を相手するになんて無理な話だった。

 男はあっという間に俺の前に現れ、思いっきり踏ん張り棍棒を握る腕に力を入れる。相手は大ぶりの横振り。

 そこに隙はあるにはあるが、突っ込むのも何か怖かったので後ろに大きく飛び、

「オラァ!」

 と叫びながら振った横振りを、俺は意外にも余裕をもって避けていた。避けられるとは思ってもみなかった様に見えるこの男は驚きを隠せず、空を切った棍棒に振り回されていた。

 やるなら今だと素早く鞘から抜き、この男には劣るものの、残像が残りそうな位のスピードで・・・いや、単なる俺のイメージだが・・・。

 まあ、そんなスピードでがら空きの懐に飛び込む。

「!?」

 男は驚き、咄嗟に反撃しようとするも棍棒は重すぎた、と俺は勝手に思っていたらこの男が

「マジッ・・・」

 何かを呟こうとするので、遮るように刃を振るう。

「させるか!」



 刀は弧を描く。男は咄嗟に目をとじ、首が落ちる覚悟をした。

 ・・・が、彼が目を閉じて幾ら待とうとも何も起きず、痛みも無かった。聞こえるのは首の落ちる音ではなく、馬鹿でかい歓声だけ。

 察した彼はゆっくりと目を開いた。

 すると、首筋にこの辺では見ない形の美しい刀が添えられていた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!!

次回もお楽しみに!!

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