12話 HOTARU
遅くなりました。
日本。
今日は土曜日。休みだ。
やることもないのでいつものように手馴れた手つきでパソコンを起動し、サイコダイブ用VRゴーグルを接続し、何も考えないうちに俺はいつものゲームを起動していた。
そのゲームは世界的に人気のあるゲームで、[マインド・ケイブ]という。
このゲームのマップは全て洞窟でできており、その中にランダムでプレイヤーがスポーンして、落ちてる武器を利用し、最後まで生き残ったプレイヤーの勝ちという、いわゆるバトルロワイヤルだ。
俺はその中の日本サーバーで、そこそこ名の知れたプレイヤーだと自負している。
俺の人生で誇れるのはそこだけだった。
1ゲームのキル数とプレイの評価点のランキングで常に3位に入る程だった。
そこに満足感と達成感を求めて何時間も何日もプレイしていた。
噂によると、何故か俺が死んだ事が知れ渡っているらしい。
実はこのゲーム、キャラクターを最初に自分で作る事が出来る。
それで作成したのがあの、白く毛先にいく程緑がかった髪の色と長さ、生気のない白い肌の色のキャラクターだ。
なのであの世界にもしゲームの俺を知っている人がいるかもしれない。
俺はゲームスタートのボタンをクリックし、ゴーグルを着け、俺はゴーグルを着けたままベットに横になる。
もう少しでゲームスタートだろうか。
《3,2,1,ゲームスタートです。》
視界が開けると、そこは恐らくマップの端だろう。
近くに剣と回復薬が落ちている。
それをすぐさま拾って剣は腰に差し、回復薬はアイテムバッグに突っ込んだ。
洞窟を西へと歩いていると、別の足音が耳に入る。
サッ、っと道の岩場に隠れてそいつが通るのを待つ。
剣は抜かずに居合斬りで仕留める。
ザッザッザッ・・・足音が近ずいて来た。
タイミングはもう少し。少しでもズレたら恐らくそこで死亡。
3
2
1
「今!!」
居合斬りは技の評価点が高く、このゲームで最速の剣技。
それ故に取得難易度も高ければ使用する場面も限られてくるため、普通は取得しないが、俺は敢えて取得した。
そんな最速の剣技に相手は声を出す暇もなくHPを全損する。
HPが0になると、光の渦になって所持アイテムだけ残して消えてゆく。
「ふぅ・・・腕落ちてなくて良かった」
と、次の場所へ向かう。
その時、伝説のプレイヤー、HOTARUのリアルでの死亡で話が持ち切りだった。
「おい、マジでHOTARUさんが死んだって話ほんとかよ」
「ニュースで見たろ?
交通事故で高校生が死亡、名前は柊木 蛍。
あの毎日ログインしてたHOTARUさんがログインしなくなったのもその日だ」
「偶然だろ?」
「前にHOTARUさんがプレイヤーネームとリアルネーム一緒って言ってたぞ」
ロビーのスクリーンに、あるプレイヤーのキルシーンが映し出された。
「おっ、アバター見えなかったけど今の人上手いな」
「あれ居合斬りじゃね?」
「もしかしてHOTARUさんリスペクトか?」
光の渦から出てきたのは白く毛先にいく程緑がかった長髪。
生気のない白い肌の色のキャラクター。
それは、このゲームのプレイヤーなら知らない人はいない有名なプレイヤー。
映し出されたプレイヤー名は・・・
“HOTARU”
ロビーは一瞬の静寂と、耳を劈く様な歓声に包まれた。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
次回もお楽しみに。




