11話 冒険者登録
遅くなりました。
ドアを開けると、活気のある酒場がそこにはあった。
ギルドだと聞いてやって来たその場所は想像していた以上に騒々しく、冒険者登録の受付所に行くのにも一苦労だ。
「ここさぁ・・・ほんとは酒場なんじゃないか?」
と呟くと、
斉藤が悩ましげに頭を掻きむしりながら溜め息混じりにこう言った。
「そうかもしれない。看板見てここだと思ったんだけどなぁ・・・
まあいいや奥に行こうか」
と、幾多もの筋肉と熱気を抜けた先に、やっと見えた。恐らくあれが冒険者登録の受付所だ。
『今の人の筋肉やばかったな。』『それな』『ゴリラかよ』
確かにすげぇ筋肉だったな今の人。
受付にはスーツのようなものを着たかわいい人が居た。
「こんなむさくるしい所で働いて大変そうだな」
と、呟くと可愛らしくもあり凛々しくもある声が聞こえる。
「いえいえ、ここは見てて面白いですよ」
突然聞こえたその声に驚いて斉藤と蛍が2人同時に振り向く。
「こんにちは。登録ですか?」
黒髪が綺麗な女性だった。
驚きながら斉藤が、
「え、ええ。そうです。おねがいします。
ほら、蛍も通行証出せよ」
と斉藤が俺に促す。
促されて急いでそれを取り出してカウンターのお姉さんに渡す。
それを受け取って、まず最初に斉藤のゴールドなカードを確認すると、少しだけ驚いた様な顔をして、
「へぇ、転移者ですか。どうぞ。
あ、こちらをお返しします」
勇者の方には何も言わず、転移者という所に目を付けた。
斉藤の通行証に何の異常も無いと確認したのか、通行証を返すと、俺の通行証を確認する。
「ゾンビ種ですか。これはまた珍しいですね」
これまた大げさには驚かずに俺に通行証を返した。
門番の人とのリアクションの差に俺は驚きながらも違和感を感じていた。
『この姉さん強そう』『門番のあの反応見た後だとなぁ』
門番の反応が正常なのか、この姉さんが異常なのかはわからんが、斉藤の[勇者]に反応しなかった所を見ると、後者だろう。
俺たちの後ろにいる屈強な男たちの相手をするにはその位は必要なのかもしれない。
そこでお姉さんが口を開いた。
「お二人の登録を完了致しました。
お二人のステータスから、個人ランクを確定致しました。
個人ランクの説明は必要ですか?」
個人ランクとは何なのか、個人のランクである事は分かるが、何を示すランクなのかが分からないため、「おねがいします」と教えを乞う。
すると、お姉さんは頷き、説明を始めた。
「分かりました。
まず、ランクとは強さや、信頼度を表すものです。
Aランクが最高、Eランクが最低で、Sランクというのもありますが、これは特別枠です。
次にどのランクか、です」
「どのランクか、とは?」
と、斉藤が質問をした。
「はい。
ここで説明するのは、個人ランクと、ギルドランクになります。
まず個人ランクとは、その名の通り個人に対するランクです。
個人ランクが表すのは個人のスキルを含めたステータスの強さです。
こちらは個人が強くなる事でランクアップは可能です」
「成程」
と、俺が相槌を打つ。
続けてお姉さんは説明をする。
「次にギルドランクです。
ギルドランクとは、ギルドからの信頼度。
つまり、依頼の達成数です。
ギルドランクも個人ランクと同じくAが最高でEが最低です。
ここからが個人ランクとは違う所でギルドランクはEからスタートです。
ランクについては理解頂けたでしょうか?」
「ええ、大体分かりました。
それで僕達の個人ランクはなんでしょうか」
斉藤がそう答える。
すると、お姉さんは斉藤の方を向き、
「斉藤さん、貴方の個人ランクはBとなりました。あと少しでAに昇格することが出来ます」
それを耳にした厳つい男たちがざわざわし始めた。
「あいつBランクかよ。」「何モンだぁ?」
お姉さんは咳払いをした後、俺の方を向いてこう言った。
「柊木 蛍さん。貴方の個人ランクはAです」
すると、更にざわついた。
「あの嬢ちゃん何モンだよ」
嬢ちゃんじゃないんだよなぁ。
それを聞いて俺は調子に乗り、両手で拳を作り一時期ネットで流行った勝利ポーズを斉藤に見せつけた。
「ふぅ・・・」
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