10話 斉藤の母
遅くなりました。平成最後の投稿です。
日本、翌日。
学校にて。
高校生1年生の蛍は久しぶりに学校に行く事にした。
時間割なんてとっくの昔に忘れているが、教科書は全て教室に置いてきてあるので、あるかは分からないが、体育着を持って行く事にした。
教室へ行くと、
「おお!!蛍が来た!!」
とか、
「久しぶり!!柊木」
など、歓迎してくれている様なので少し安心した。
「あ、ああ、久しぶり」
返事をするとクラスの女子が来て、
「あれ?柊木君雰囲気変わった?」
と、聞かれた。今日、狼を15匹程殺す記憶を見てから、突然学校に行く気怠さが無くなって学校に行こうと思ったのだ。
にしても異世界に居る俺か・・・
その俺も俺の記憶あるのかな。
そんな事を考えながら学校にいると担任の先生とかが驚いたり、しまいには泣きだしてしまう先生も居た。
そんな事もあり、一日が終わって、あの斉藤の家に行く事にした。
ピンポーン
斉藤の家のインターホンを押すと、
「はーい」
と斉藤の母のミユキさんがドアから顔を出した。
「あら・・・蛍ちゃん、いらっしゃい」
「こんにちは」
笑顔で返事をすると、ミユキさんが驚いた様な表情をして、
「蛍ちゃん・・・変わった?」
「何がですか?」
そう返すと、ミユキさんは言った。
「前はあんまり私と喋ろうとしなかったじゃない?」
そう言われると、つい言葉が出た。
「そうですね・・・最近、異世界に行く夢を見て、その時以来、生まれ変わった様に今までの自分の弱さが無くなった気がします」
「そう、それは良かったわね」
その発言にどこか悲しげな表情を浮かべて
「夢・・・ねぇ・・・」
呟いた。
斉藤は行方不明になった後、「異世界に行ってきます」と書き置きを残して姿をくらました。何やってんだアイツ・・・
ーもとい異世界に転移した。
だからミユキさんは異世界というワードに反応したのだろう。
異世界に居るらしい俺がその斉藤と一緒に居るから斉藤がどこに居て何をしているかを俺は知ってるけど、それは信じて貰えないだろう。
突然異世界がどうとか言った所で更に悲しませるだけだ。
それより、あいつの友人である俺があいつの家に行く事でそれは予想出来たので、ミユキさんに申し訳ない。
「不快にさせたならすみません・・・」
あまりにも不躾な発言に後悔しながら謝った。
だがミユキさんは笑顔を取り繕ってこう言った。
「いいえ、良いのよ。
居なくなるのもあの子の決断だもの」
それを聞いて斉藤自身が自分は生きていると言う事をミユキさんに伝える方法をあっちの俺もこっちの俺も探そうと、模索し始めた。
同時刻、異世界。
「おい・・・斉藤」
「?・・・何?」
「実はあっちの世界にも俺が居てな」
「・・・は?・・・う、うん」
斉藤は驚いている様だったが、話を聞いてくれた。
そして、向こうの俺の記憶らしきものを元に話を進める。
「その俺がおめーの母さんに会ってきたわけよ」
そう言うと、いきなり様子がおかしくなった斉藤が、カチコチに固まって声を漏らした。
「・・・あ。忘r・・・」
こいつ、ヤバい事言おうとしてなかったか?
「今何て言おうとした?」
と問い詰めようとすると、
「イイエナニモイッテマセン」
と食い気味に反論する。
「いやおま・・・」
「ナンノコトデスカ?」
俺は溜め息をつく。
いやお前あれだけで満足したのか・・・
いやいや、まさかな。
と、ほぼ確定してしまったアホすぎる未来にささやかながら希望を持ちながら・・・いや、1つまみ位つまみながら質問をする。
「はぁ・・・お前、あの置き手紙だけで満足したのか?」
斉藤は恐らく冷や汗をかきながらこう言葉を漏らした。
「ハイ・・・あの異世界に行けるという興奮の中、ノリと勢いでアレで満足しました」
日本。
斉藤の家から帰ってノリと勢いで異世界に行った阿呆な友を異世界から帰って来させる方法を模索し始めたが、模索するも何も異世界の事は何も知らないのでどうしようも無いのだ。
しかし、1つだけ俺が体験した方法を知っているが、俺がそうさせるとすると人間としての尊厳が失われそうなのでやめておく。
いや、今は元人間か?
しかし、取り敢えず斉藤を殺してあの女神に頼むのも方法の1つとしてメモしておこう。
「んッ・・・はぁ。・・・今の所、斉藤の事は保留だな」
と、背伸びをした。
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次回は令和です。




