インド人、異世界に転移する
インド人ネタで異世界転移もの面白いんじゃね? と思って軽く書きました。ネタ持ち帰ってどうぞ。
ある日のこと、とある異世界に一人のインド人が降り立った。
その名をラーヒズヤ。異世界の転移特典として異世界の言語を日本語で読み取れる能力を身に着けている。
しかし残念なことに、彼は日本語を知らなかった。彼にとってみれば異世界言語も日本語も共に未知の言葉だったのである。逆に聞こえてくる言葉と口の動きが違うせいで余計に混乱したのは言うまでもないだろう。
さて困った。しかし悲観はしていなかった。
そう、ダンスだ。踊りさえあれば、言葉など不要であると、彼はそう考えていたのだ。
しかし実際にはどうだろう。この世界の人間は踊りに疎く、ダンスといった娯楽が存在しない世界だったのだ。
一応儀式的な舞はある。ラーヒズヤの奇怪な踊りを目にした衛兵が彼を捕らえた時、最初悪魔でも呼び出す舞を舞っていたのではと思われたほどだ。
牢屋に入れられたラーヒズヤであるが、この世界に来て初めて目標ができた。
「私はこの世界にダンスを広める!」
おおブッタよ、私はやり遂げて見せます!
そうして日夜、牢屋の中で、囚人たちとの生活の中で、踊りを続けるラーヒズヤ。
やがてそれは囚人たちに伝染し、彼らの新たな生き甲斐となる。
その踊りは騎士たちへさらに広まり、騎士の訓練の一環として取り入れられるように。
その光景を偶然目にした王様も楽しくなってレッツダンス。
ラーヒズヤは踊りを広めた第一人者として王に呼ばれ感謝された。
だが、残念なことに言葉が通じない。
でも大丈夫。我らには踊りがある!
みんな揃ってレッツダンス! こうして一つの国に踊りが広まった。
やがてラーヒズヤはこの楽しさを世界に伝える為に、旅に出る。
同じく言葉の通じない獣人や、戦いを生き甲斐とするドラゴン族まで、度重なる試練に打ち勝ち、踊りを広めていく。
そうして遂に彼は世界中に踊りを広めることに成功。
だが、そんな世界にも破滅の時が刻一刻と近づいていた。
邪悪な存在、邪神がこの世界に復活したのである。
絶望する世界。散っていく人々。
それでも、諦めない男がいた。
「絶望したそんな時こそ、さあ、踊ろう!」
一人踊り始めるラーヒズヤ。
それに続きさらに踊りだす人々。
邪神は最初何をとち狂ったのかと馬鹿にしていたが、段々と焦りを見せる。
人々の絶望する心を糧としている邪神にとって、その踊りにより生まれた”楽しい”と言った感情は天敵中の天敵だったのだ!
踊りは死に行きアンデッド化していた人々にも伝わり、邪神の眷属たるものたちにまで伝染。
遂に邪神はその踊りを止めることができず、打ち倒されたのだ!
こうして世界に平和が戻った。
今日も人々は踊り明かす。
その中心に、一人のインド人が立っていた──。