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1.目覚めたら妙な場所でした

10/30:伏せていた設定解禁


「……さん。」


妙な声が聞こえる。

後30分寝かせてくれ。


久住桜里(くずみおうり)さん……。」


煩い寝かせろ、昨日は高校サボってゲーム徹夜してたからその分寝たいんだ。

いやーあのゲームは何度やっても名作だ。

ヒロインたちも可愛かったけど、一風変わったサブキャラが良い味してるんだよな。

俺の中ではぶっちゃけ主人公食ってたんじゃないかってレベルで。


「久住さん!」

「はい今起きます!」


今度は耳元で叫ばれた。

咄嗟に敬語になってしまったが悪くないと俺は思う。


「って、あれ?」

「やっと起きてくれました……。」


起きた先は自宅じゃなかった。

というか全く知らない場所だった。

見る限り真っ白で、俺の寝ているベッドだけがふわふわ浮いてる。

そのすぐ横に、見知らぬ女の人が一人。

溜息を吐きながら俺を見ていた。


「では改めて。 久住桜里さんで宜しいですか?」

「いえ、俺は天海山山彦です。」


残念だが見知らぬ人に名前を知られて良いことなんてあったことがない。

告白っぽく呼び出されて行ってみたら罰ゲーム扱いされたりな!

あの時は居た堪れないというより相手が可哀想だった。

俺? いやもう慣れてたけど……万が一に賭けたって良いじゃん……?


「そんな無駄な嘘をついてもどうしようもありませんよ?」


再度溜息。

名前を偽ってもバレたらしい。 何故だ。


「久住さん、貴方は亡くなりました。」

「はい?」

「覚えていませんか?」


目の前の頭の可哀想な人をよく見てみた。

紫の髪を腰下まで伸ばした、平たい族に属していそうな肢体の女の人。

着ている服はゴスロリ、と呼ばれるなんというか厨二病の人が好んでいそうな服装だ。

どっからどう見ても怪しい上に頭が可哀想な人だろう。 QED。


「覚えていないようですね……というか誰が頭が可哀想ですか!」

「そんな顔に出てました!?」

「顔じゃありません! 全く……。」


そんな怒らなくても。

というかアレか? 心読まれてたりする?


「貴方は先程、徹夜のハイテンションのまま学校に向かう途中。 線路で転んでいる子供を助けようとして代わりに亡くなりました。」

「えっ。」

「本来でしたら、その子供はその時点で亡くなるはずでしたが……貴方が身代わりになったということです。」

「えっ俺がそんなことしたんですか!?」

「したんです。」


全く記憶にない。

最後に記憶にあるのはゲームの裏イベントまでコンプしたテンションでコンビニでも行こうと思ったことだ。

学校に行こうなんて欠片も思ってなかった筈。

出席最低ラインは既に計算していたから問題ないことだけは確実だったし。


「故に、未来は少しだけ良い方向に変動しました。 そのことを讃え、貴方をこうして呼んだわけです。」

「……で、此処何処なんですか。」

「若い人に言うなら異世界への転生場でしょうか?」


首をかくん、と傾げながらそう告げる女の人。

へー、転生場。 転生場かー。


「……つまり、女神様とか?」

「そうですよ。 女神【ディアナ】と申します。」

「マジかー、女神様初めて見たわー。」

「随分軽いですね……。」


いやだって、未だに信じられないし。


「まあいいです。 その功績を讃えて転生させようと思うんです、が。」

「が?」

「何か欲しい能力とか才能は有りますか? 無論制限はありますけど。」

「まず確認させてください。 転生先は?」

「ファンタジー世界です。 剣と魔法の【イーリアス】と呼ばれる世界ですね。」


……何か聞き覚えあるな。

具体的にはさっきまでやってた記憶のあるゲームの世界設定。


「なんでも良いんですか?」

「制限はありますけどね。」

「えーと、でしたら幾つか確認したいことが……。」


そうして、少しばかり話を聞く。

うん、さっきまでやってたゲームの世界設定とほぼ合致してるわ。

幾つかは違うけど誤差くらいだろうし……となると。

そう思ったとき、浮かんだのは一風変わったサブキャラの姿。

そうだな、どうせだしあのキャラの固有特徴にでもするか。


「だったら、俺は…………。」


そうして、二言三言欲しい能力を伝えた。


「ああ、はい。 その程度でしたら。」


よっしゃ通った。

ガッツポーズ。


「では、最低限生活がし易い両親の元に転生させておきますね。 恐らく10歳程度で記憶が戻るかと。」

「記憶まで良いんですか。」

「まあ、その程度はサービスです。 では行きますよー。」

「えっ、ちょっ、軽くね!?」


そうして、俺は転生することになった。

久住桜里、享年16歳。

高校二年に上がったばかりのことだった。


「――――これくらいで、対価になるとは思えませんが。」


白い世界の果ての果て。

小さくじゃらりとなる金属音とと共に呟かれた言葉は。

誰の耳にも入らなかった。

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