3.大輝の相談
〔次の日〕
「おはよう!クマスケ!」
「おはよー!尚!」
うちにはしゃべるクマのぬいぐるみがいる。名前はクマスケ。
今はぼくと一緒に寝ています。
「今日も学校?」
「うん。だから、クマスケは家で待ってて。」
「...やだぁ。」
「なんで?お前も男だろ?」
「ん~、やだぁー。」
どうしよう...でも、ぬいぐるみを学校に持ってくのも..ばれたら困るし..。
そんな時..。
「尚!!起きてんなら早く降りてきてご飯食べちゃいなさい!」
母が階段の下から呼び出してきた。
「はーい!すぐ行くー!!」
どうしよう...早く下に降りないと...でも、クマスケどうしよう..。
そんな時、ふと思いついた。
「じゃ、じゃあ!カバン(チャック付き手提げ)の中で静かにしてるんだったら!行かせてあげてもいいよ..?」
どうだ!クマスケどうする..?
「うん。わかった!俺、頑張る!」
「おけ!じゃあ..下に降りるけど..母さん心臓弱いから、失神されても困るし...。」
「それなら!大丈夫だよ!俺、ぬいぐるみのフリするからっ!」
「わ、わかった!じゃあ、下行こう!」
僕は、クマスケを抱きながらリビングへと降りた。
「おはよう。早く食べちゃって!」
「うん。」
僕は椅子に座って朝ごはんを食べ始めた。
「ねぇ?尚。」
「ん?なに?」
「今月いっぱいで、引っ越そうと思うの。」
「...えっ。」
「ごめんね。ここだとあんまりいい仕事がやっぱり見つからなくてね。」
母はそういうと洗濯物を干す手を止めて、僕の前に席に座った。
「ねぇ、それでもいい?」
「...。」
「ねぇ、もし...もし、いやだったらいいのよ。」
「..一つ..一つ、良い?」
「うん。..なに?」
「母さんはここ、いや?」
「ううん。いやってことじゃないわ。ただ、ここらへんには良い仕事がないの。」
「..そっか..。」
「母さんだけほかのところに行くのもいいのよ。でも、そうすると、千代子おばさんにいてもらいうことになるんだけど...。尚、おばさんのこと、好きじゃないでしょ..?」
「うん。それは、やだ。でも、母さんがあれだし..。どうしよう..。」
「ねぇ..?もしダメなんだったら、七子ちゃんちにお世話になるか母さんと一緒に来るかなんだけど...。か、母さんはね..できれば母さんと来てほしいんだ。」
「...それは、今すぐってこと..?」
「ううん!そんな急がなくてもいいんだけど、ね。考えといて。」
母さんはそういうと、洗濯物を干しにまたベランダへと向かった。
「...。」
「尚..。」
「クマスケっ!」
「静かに..!」
僕たちは静かにしゃべり始めた。もちろんご飯を食べながら。でもショック過ぎておなかに入らない..。
「尚..早く食べないと、学校遅れるよ?」
「う、うん。わかってるよ。」
時刻は7時20分。出発まであと10分。
僕は教室にいることが好きで、部活をしていない。
「早く食べないと!遅れるわよ!」
母さんはそう言っている。こっちの気も知らないでっ!
〔5分経過〕
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃーい!」
トコトコトコ...
〔学校では..〕
「クマスケ来てるのっ?!」
「七子!声が大きい!」
「あ、ごめん。っで、カバンの中に?」
「うん。あ、誰にも言わないで。」
「うん。言ってないし、言っても、『あ、そう。』で終わるから。」
「あ、そっか。」
「うん。あ、あと昨日!尚んち寄れなかった。ごめんね。」
「ううん!昨日はクマスケいなくなって、びっくりして..。」
「泣いた..?」
「..!なんでわかったの?」
「やっぱそうなんだ..。いっつもそうじゃん。尚は。」
「そんなことないもん。」
「ほんとっ?ウソついてもわかるんだよ?」
「...。」
「あってたー!あはは。尚ってホントなきむしー。」
「あー!それいじめですー!」
「..ごめん。今のは完全にいじめでした。」
キーンコーンカーンコーン..!
「チャイムだ。」
「ほんとごめんっ!」
「大丈夫だよ!いいから、前向いて!」
七子は僕の隣の席。
そして、七子の前に座っているのが大輝。
ある意味三角関係だな。
大輝は七子が好き→
七子は僕の秘密を知っている。→
僕は大輝から恋愛相談を受けている。
こんな感じかな?わかんないけど。
「では、前回の続きの35ページを開いて..。」
先生が授業を始めた。
〔お昼休み〕
僕は給食を食べて、図書室へと向かった。
一応、何かあるといけないからカバン(チャック付き手提げ)を持ち歩いている。
〔図書室〕
「えーと..確かココに..。」
僕は前に気になっていた本を借りに来た。
「うーん..。どこ行った..?」
「おい。」
「あ、大輝。」
僕の右側には大輝がいた。
「ちょっと、来い。」
「えっ?!」
大輝はそう言って僕の腕を引っ張った。
〔屋上〕
「何?」
「何じゃねぇよ。な、七子に言ってくれたか?」
「ううん。まだなんだ。ごめんね。」
「..早く言ってくれよ。」
「うん、言うよ。..でもさ、僕なんて言えばいいのかわかんなくて..。」
「うん..。それはまぁ、俺にもわかんねぇ。」
「..なんていえばいい?僕、好きな子とかできたことなくて..。なんか、ごめんね。」
「..ううん。俺こそ無理言ってごめん。でも、どうしよう。」
僕たちは悩んだ..その時だった。
※ここからクマスケの話し言葉は『』で表します。わかりやすくするためです。
『出して―!!』
バックがゆらゆら動いている。
「な、なんだよ。その手提げ。う、動いてる!!」
「クマスケ!動いちゃいけないって言ったじゃないか!」
僕はそう言いながらチャックを開けた。
ポンッ!
なんと、不思議な音を出しながら出てきた。
「ぬ、ぬいぐるみ..?」
「え、えっと..。」
『うん!俺はクマのクマスケ!君は尚のお友達の大輝君だね?』
「しゃ、しゃべったー!!」
「落ち着いて!クマスケは優しいから!大丈夫だよ!」
『うん!俺は怖くないよ♡』
「お、おう。怖いっていうか、そいつかわいいな。」
「でしょ?かわいいの。」
『ほんとに~!ありがとう!』
クマスケはそういうと、腰に手を当て言った。
「俺も!大輝君の恋愛相談相手になるよ!」
次は最終回です。
どうぞ~✌




