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六人の女王  作者: 初終
一章 プロローグ
8/25

平和な日

廊下に出ると蕾架が出てきた。

蕾架が珍しく何かを話したそうにしていたから、何も言わずに、問いかけるように笑ってみた。

「…成功、した」

「楽しかった?」

蕾架は頷いて、笑顔を見せてくれた。


「もっとマシな起こし方は出来なかったのか…?」

「いや、だって、起きてこなかったからさ」

後ろから弁明中の琉加(ルカ)と怒りを通り越して呆れ返った秀兄、松谷秀(マツヤシュウ)が出てきた。陽菜姉はびしゃびしゃの枕カバーやシーツを仙と一緒に回収している。陽菜姉、鳴海陽菜(ナルミヒナ)は明るいお姉さんな感じの火の女王。秀兄は髪の色が少し赤っぽい。どちらも、綺麗な顔立ちをしている。

「大体な、普通に起こせばいい話のはずなのにな、何故わざわざイタズラなんかで…」

「まあ良いじゃん、確実に起きるだろうし、楽しいし?」

「流石衣愛さん、話のわかる!それに比べて、この頭でっかちのカチカチさんは…」

蕾架の後ろから出てきたのは、空良と衣愛姉、光彦だ。

桜城衣愛(オウキイア)は、現女王の中で一番歳上で、風の女王。見た目も言動もかっこいい。石井光彦(イシイミツヒコ)は赤茶の髪のショートカット。 いい人だしかっこいいけど、お堅い人。

なんでかこの人たちは籍を入れていない。もう婚約もしてるし、良いと思うけど、何か理由があるんだろうな、詮索はしないでおく。


朝ごはんは、焼きたてのパンだった。聞けば、何日か前から生地を寝かしておいてくれたらしい。

やっぱり、真理水漓コンビの料理は最高だ。

晃はいい匂いで目が覚めたらしい。

「そう言えばさ、私、調べたんだよ、昨日」

「…?何を?」

唐突に話し出した私に、真理が問いを投げかける。

「…“桜”の、意味」



部屋が、静かになった。みんな、私の言うことに耳を傾けている。

私と、蕾架、水漓、衣愛姉の名字には、“桜”の字が入っている。私は今は小田桐だけど、旧姓は“桜宮(オウミヤ)”。そして、蕾架は“桜堂(オウドウ)”水漓は“桜都(オウミ)”衣愛姉は“桜城(オウキ)”。

「…初代の“六人の女王”が、“分けた”」

「…分けた?」

水漓が、不安げに繰り返す。

「四姉妹とその従姉妹二人、それが“初代”

この国で生まれ育った六人が、初めて桜の樹を見たとき、思ったらしい

────“神の樹だ”────…

全てに“桜”を入れたかったらしいけど、“もしも”のために、と従姉妹二人に、“鳴海”と“胡陵”の、隠すための名字をつけた

“鳴く海”と、胡陵は元々、“呼嶺”で“呼ぶ嶺”

山と海から、何かが呼んだような、鳴いたような気がした、のが由来らしい

そして、それぞれの心臓に、一つずつ、花びらが“入っていった”

手に取るように、世界が解ったらしい

───────これまでが、判読できる範囲に書いてあった“初まり”」

きっと、まだ何かあるはずだ、母さんが教えてくれなかった何かが。

「…“騎士の初まり”は?」

琉加が気になったらしい。

「…判読不可能、文字が滲んでた。まあ、これからゆっくり調査していくよ」

“もしも”が何かも、滲んでいた。


「過去を知って、どうするの?」

衣愛姉が、少し怖かった。


「未来に繋ぐ」


自信をもって言える。私は女王、それも“総統”。

“長”は、統べるだけじゃない、守るためにいるんだ。


衣愛姉が、満足げに、優しく微笑んだ。

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