女王達の朝(三)
「はあっ、は、はぁ…」
足音の主はルカだった。息を切らしている辺り、相当焦ったんだろう、部屋に私がいなくて。
「よかった、玲香いた…」
玲香ってのは、私の名前。
そのあとに続いて、仙も起きてきた。
今日は平和な日になりそうだ、なんて思った私が馬鹿だった。
それぞれの部屋に行くために必ず通る階段がある。そこから、何か重いものが落ちたような音がした。
少し恥ずかしそうにしながら、蕾架が起きてきた。
少しからかい気味に、水漓が訊ねる。
「蕾架、もしかして階段から落ちた?」
恥ずかしさで赤かった頬がさらに赤くなった。まあ、蕾架は寝ぼけているときはよくあることなんだけど。
蕾架の後ろから、笑いを堪えきれていない空良が現れた。
蕾架と空良は十五歳で、蕾架はグレーの髪をミディアムカットにしている。空良は髪も肌も真っ白で、顔立ちは女の子みたいだけど言ったら怒る。
空良は男にしては長めの髪で、よく後ろ髪の上部だけを結んでいる。蕾架は空良に貰った、青いヘアピンをいつもしている。この青は、空良の目の色と同じ色。
私もかなりのロングヘアだけど、ルカは少しうねった癖っ毛を胸のあたりまで伸ばしてて、後ろで結んでいることがほとんどだ。
あと四人、起きてくるとみんなで朝ごはんが食べられる。
今日は、平和でありますように。こっそりと、日が出始めた東の空に願ってみた。