Commo-t!on 外伝
こんなにやっていて爽快感を味わえるものは他にはないだろう、としみじみ思う。
嗚呼、生きていて良かった。神様は俺に素晴らしいものを与えてくれたとそう感じる。
俺がダンスに出会ったのは小学六年生の時。駅で楽しそうに音楽をガンガン鳴らして、とんでもない動きをやってのける人を見たのがきっかけだった。
人間にあんな動きができるなんて思いもよらなかった。それはテレビで見たサッカーや野球なんかのスーパープレーの何倍も俺をワクワクさせてくれた。
それからすぐに練習した。ダンススクールなんてものは金持ちが行くところだったので、その当時の俺は一生懸命、自己流で練習した。分からないところや新しい技は、駅でやっている集団を観察して身につけた。
そして気づいた頃には、この街ではそこそこ名の知れたダンサーになっていた。
多分、もともと素質はあったんだと思う。きっと俺はダンスをするために生まれてきたんだとそう思う。
ダンスをしている時は何も考えなくていい。只、己の出来る最高のパフォーマンスを見せつける。誰の指図も受けない。俺こそが主役だとそれがダンスだと思っていた。
その考え方がダメだったのかもしれない。
そりゃ、少しは名の知れたダンサーだ。しかもソロ。すぐにチームに加わらないかと申し出があった。俺も満更でもなかったからそれを受け入れた。しかし、現実はそう甘くは無かった。
チームというのは相手を気遣わないといけない、自分ばっかりでは成り立たないものだ。個人プレーが凄くても意味がない。
それは、今までソロでやってきた俺にとっては苦痛以外のなにものでもなかった。
自分が主役、ほかの誰にも邪魔はさせない。そんな気持ちで行ってたら、案の定、何度も何度も喧嘩になった。
加入して三ヶ月、俺は脱退させられた。
もともと馴れ合いやチームワークなどそういった類が苦手だった俺にとって、当然の報いだったと思う。俺は多分永遠のソロだ。
そんな時だ、あの男に会ったのは。
チームを脱退してから、俺はずっとソロ活動を続けていた。
しかし、ソロなんてものは限界がある。大きな舞台で踊りたくても、資金やコネクション、そういったものがまるでない。できることといったら、駅で踊るぐらいなもんだ。
もっと大きな舞台で踊りたい。色々な人々に俺の存在を知らしめたい。しかしそれにはチームに入らねばならない。あの苦痛を我慢しなくてはならない。
そんな風に葛藤していたある日。一人の観客から不思議な言葉をかけられた。
「君、もっと高みへ登りたいって思っているな」
瞬間、俺は動揺した。なぜ俺の気持ちがわかったのか。というかコイツは誰なのか。少し怖かった。
「なぜ、分かるんですか…? 」
「あ、いや悪いな。君のことが前々から興味があってね。すこしばかり調べさせてもらった。なんでもチームとの衝突で脱退させられたとか? 」
「まぁ、はい」
「しかし、もっと大舞台で戦いたい。もっと存在を知らしめたい。そう思っているな? 」
「なぜ分かるんです? 」
「君のダンスに楽しさが伝わってこない。まるでここは俺の場所じゃないというような感じが伝わってくるんだ」
「………」
「一つ、提案があるんだ。ウチのチームに来ないか? 」
「…、自分は、人付き合いとか苦手で。せっかくの申し出ですが…」
「何、別にダンスチームの誘いじゃない。チームだよ」
「はい? チームってなんですか」
「チームはチームだよ。それ以上は言葉にできない。しかし、だ」
「君を大舞台で好きに踊らすことができる。もちろんソロで、だ。それ以上何か問題はあるか? まあ、少しは働いてもらうけど 」
俺はそれ以上何も言えなかった。
Commo-t!onの外伝です。
なんか、書きたくなったので書きました!