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世界最弱/最強の少年  作者: うずまきさん
学園の異端児 前編
5/19

4 諍い

 太陽の昇る朝。森の木々の葉は朝露の重みで垂れ下がり、お辞儀をした状態で時が止まっているように見えた。その朝は昨日同様で寒く、布団からなかなか抜け出せないほどだ。

 手早く支度を済ませた陣夏は、自分の忌わしい体質により少し重くなった体を引きずりながら学園に向かっていた。その体質とは、暴食。

 ではなく、幼いころより続けている朝の鍛錬。幼いころより続けているが故に、この行為は体内時計にしっかりと刻み込まれ、朝早く彼を叩き起こす悩みの種の1つとなっていた。

 別にやめようと思えばやめられる。

 だが、それで止めてしまうと後悔すると思いながら続けているので、止められない。

 これがないと、彼の1日は始まらない。

 いつの間にかそのような物になっていた。

 彼は朝の冷たい風をその身に受けながらいつものように(と言っても昨日からだが)カバンを肩に提げた。そのカバンの中にはちゃんと『武具携行システム申請書』を突っ込んでいる。申請する武具は制服に仕込んだ『ワイヤーアンカー』。

 ワイヤーアンカーとは、アニメや小説などによく出てくる、ワイヤー射出装置だ。陣夏は既にこれを制服の左腕に仕込んでいる。

 なぜ銃にしないかと言うと、彼には銃が扱えないのだ。それも残念なことに、的には当たらない。銃弾が標的を避けるようにして弾道が逸れる。

 それに『召喚術』で銃が1日1回しか召喚できないときた。彼の不幸な体質には誰もが同情するだろう。

 彼が塙ヶ咲学園に向かう時に差し掛かる大きな交差点にはたくさんの学生の姿を見ることができる。その中には塙ヶ咲学園の生徒の姿もある。そんな人混みの中で相変わらず皺くちゃな制服の陣夏は赤信号で足を止めた。ここの信号は待ち時間が長い。陣夏はポケットの中に突っ込んでいた携帯端末を取り出し、画面に光を戻す。オンライン小説の続きに目を通しながら信号が青になるのを今か今かと待つ。

 そんな彼におもむろに近づく1つの影。その影は陣夏の顔を知っていた。

「よう!」

 朝から健康的な大きい声。昨日知り合った、髪がぴんぴんした感じでいかにも体育系という風情のある少年、大智だ。彼が陣夏の背中から不意に現れたのだった。

「おう」

 陣夏も大智に合わせて軽くあいさつを交わし、携帯端末をポケットの中に仕舞う。

 大智の腰には昨日『武具携行システム』に申請したばかりの自動拳銃がホルスターの中に収まった状態で装備してあった。その銃の弾倉には実弾が入っている。彼の肩に提げられているカバンは昨日ほどではないが(昨日は申請のために銃が入っていたため)カバンが膨らんでいた。

「その荷物、どうしたんだ?」

 陣夏が不思議そうに大智に問いかけた。彼はこめかみの辺りを指で掻く。

「いやいや……朝起きたら出る時間ギリギリでさぁ~、『収納術式』をやってくるのを忘れたんだよね」

 陣夏は中身が空に近いカバンをチラリと見てすぐに視線を戻す。彼は昨日の間に『収納術式』を使用して武具を術式の状態で脳内に収納している。

 今日は模擬戦であるため、朝から憂鬱な気分である陣夏。大智の呑気さによって憂鬱感が増していく。

「どこで収納するんだ?」

「ここなら1つくらい収納できるからここで1つ」

 そういうと彼は陣夏にカバンを持つように促した。

 陣夏が大智のカバンを持つと、大智はカバンの中から銃身や弾倉などの解体されている銃が次々と取り出していく。そして彼は慣れた手つきでこれら銃のパーツを組み合わせていく。銃に関する知識に疎い陣夏には到底できない技だ。あっという間に肩幅よりもやや広い銃が大智の両手にのっていた。見る限りサブマシンガンだろう。陣夏にはそこまでしか判断できなかった。

 大智はそのまま脳内で『収納術式』を詠唱し、そのままサブマシンガンを手から放した。そのサブマシンガンは白い光を放って姿をなくし、大智の脳内に術式の状態で収納された。その所要時間は3秒ほど。

 大智の武具の収納が終わってから数秒後、信号の色が変わった。大智はカバンを肩に提げ足を動かした。陣夏はそれに続く。

 横断歩道を渡り終わるぐらいに大智が今日のことについて口に出した。

「今日って確か、模擬戦だよな?3人1組の」

「それがどうかしたのか?」

「お前って組む奴いねーだろ?」

「いないな」

 大智の表情に笑みが浮かんだ。その笑みは安堵しているように感じられた。

「じゃあ、俺と組もうぜ!俺もほかに組む奴いねーし」

 陣夏は大智からの誘いを断る理由もない上、この機を逃すといつ組める者が現れるか分からないのでその誘いに応じた。しかし、ここで1つの疑問が浮かび上がってきた。

「大智」

「なんだ?」

 陣夏は疑問を口に出す。

「もう1人はどうするんだ?」

「…………」

 大智は陣夏の指摘に眉間を広げた。あっ、とでも言いたそうな表情だ。

「……どうしましょ?」

 大智は考えてなかった様子だ。陣夏は彼の呑気ぶりに溜息を吐き捨てた。

「……誘うか……」

「心当たりがあるのか!?」

「ああ。1人だけな。大智も分かるだろうが、ハードルは高いぞ」

 大智は合点がいったような顔をして、悩みが解消されたようなスッキリとした顔になった。陣夏は彼の呑気ぶりにさらに溜息を吐く羽目になった。



「模擬戦で一緒に、ですか?」

「ああ。でも、無理にとは言わん」

 陣夏はその唯一の心当たりの相手を視界の正面に捉え、トリオを組む誘いをかけていた。その相手はこの学園で一、ニを争う美女。もちろん、初対面と言うわけではなく、大智と同じく昨日知り合った相手だ。彼は学園に着くと大智とともに舞花がいた6組の教室の前の廊下に直行した。故に陣夏の後ろには大智が控えている。

「いいですよ。私の友達はほかの友達と組むでしょうしね」

 陣夏は半ば拍子抜けした顔で彼女の顔を捉えていた。大智は自分の目の前でガッツポーズ。

「どうしたんですか?」

 舞花は訝しい表情で陣夏に問う。

「いや……、かなりあっさりといけたからな。明結さんのことだ、もうとっくに誘われてるんじゃないかって思ってさ」

「陣夏、今日は模擬戦だという確定情報を知っているのは私達だけです。誘いに来るはずがありません。あと、私のことも舞花でいいです」

 舞花は妙にはっきりと言った。怒っているのか、と脳裏に過ったが敢えて言わない。

 陣夏は背を向き、大智を見遣る。大智は相変わらず喜んでいる表情だ。陣夏は内心で馬鹿、と言っておいた。

 陣夏が正面に向き直った時、何時ぞやの男子生徒が舞花のところへ歩み寄ってきた。彼はこのクラスで見かけないので違うクラスなのだろう。恐らく7組。ご苦労なことだ、と陣夏は内心で呟く。

彼は昨日と変わらず、柔らかな笑みを浮かべていた。

「やぁ、明結さん。今日もいい天気だね」

 舞花はお世辞交じりの台詞を言われた気がして、イラつきを隠しながら笑顔を作る。陣夏はその男子生徒を鋭い視線で捉えていた。

「そうですね。で、何か御用ですか?」

「今日、模擬戦があったら一緒にどうだい? と言っても、どうせそこの『異端児』と一緒に組む約束はしてるんだろうけど」

「あなたの言ってる通り、先約があるのでお断りします」

 彼の顔が少し動く。

「……なんでそんな奴と組むんだい? 聞くところによると、彼は1日1回しか召喚術を使えないそうじゃないか。そんな奴は足手まといだろ?」

 陣夏は自分のことが馬鹿にされているにも関わらず、手を下そうとはしない。彼がここで殴り掛かっても彼女や大智に迷惑をかけるだけだ。

「なんでこの学園に入学できたんだか。もしかして理事長に土下座でもしたのかな?」

 男子生徒の口は舞花への問い掛けから、だんだん陣夏への直接の悪口にへと変わっていく。冷静な彼でも堪忍袋の緒は無限にあるわけではない。だんだん限界が近づいてくる。

「もしかしてあれか?金で入ってきたお坊ちゃまか?それとも、不正行為でもしたのか?そういう彼と組む君は同類かい?」

 陣夏の脳内で何かが切れる感じがした。

 彼が身に纏う雰囲気が変わった。

「……お前、……その減らず口は大概にしろ……!」

「やっと口が開いたかい?そのまま黙っていればいいのに」

「俺のことをどう言おうが構わない。でもな『他人を俺のように馬鹿にする』のは止めろ」

 男子生徒は陣夏を嘲るように笑った。その大きな声は周辺に響き、6組にいた生徒がこちら側に視線を移す。舞花はそんな男子生徒に対し、既に怒りを覚えていた。陣夏のことを馬鹿にしていたのはもちろん、自分自身のことも馬鹿にされ、怒りは周りが思わず後ずさるほどだった。

「『弱い犬ほどよく吠える』ってね! 本当に面白いなぁ、君は!」

 陣夏は命より大事なプライドを罵声された気がした。彼の怒りは頂点に達した。

 陣夏が1回しか使えない召喚術を行使しようとした、

 その時だった。

 廊下中に軽い音なのだが、重みのかかっている、舞花が男子生徒の頬をビンタした音が響いたのが。

「何……を……!?」

「いい加減にしなさい……!さもなくば」

 彼女がワザと言葉に間を空けた。

 刹那の静寂の後、彼女は目つきを変えて――――


「殺します」


 いつもとは比べ物にならないほどの威圧を纏って吐き捨てた。


 曰く、男子生徒が後退った。

 曰く、陣夏の怒りが消し去られた。

 曰く、見ている者すべてが息を呑んだ。

 曰く、静寂が冷たくなった。


 舞花はさらに男子生徒を脅そうとしたが、それは鐘の音を模したものによって遮られてしまった。

 舞花は彼を見下すような目を向けた後で踵を返し、自分の席に向かった。

 陣夏は半ばそんな舞花のことで焦りながら、大智とともに席に戻った。

 廊下に1人取り残された男子生徒は眉を上げ、3人を睨みつけていた。



 陣夏たちは1時間目にあった『術式基礎』でその教科の担任が自己紹介をし、クラスメイト達も担当の先生に向けて軽く自己紹介。それだけで授業時間の4分の3は食われた。まぁ、入学2日目から堅苦しい授業なんてされても嫌な気分にしかならないのでそれでよかったのだが。

 そんな1時間目を終え、陣夏が『武具携行システム』の申請を終えた彼とそれに付き添った大智、舞花は揃って、学園の北側に位置する実習館に向かっていた。まだ時間が早いのか、人通りは少ない。いや、誰もいないと言い替えた方がいいのかもしれない。

 そんな閑散とした風情を煽るように、冷たい風が陣夏たちの傍を駆け抜けた。なんでこんなに寒いのか、と突っ込んでも良いぐらいであった。

 陣夏はなぜ桜は咲いているのか疑いを持ちながら遠いグラウンドを囲むように植えてあるピンクの大群に見遣る。既に大量の花びらが地面に積もっていたが、それでも見劣りしないほどの花びらが咲いていた。

 まさに桜花爛漫。

 空も、地面も、桜一色。

 通常なら、そこで昼食を食べたいと思うようなところだ。

 だが、今の彼にそんなことで心に余裕が生まれるということはない。

 売られたケンカ。昨日の一件で端に発した諍いは、今日の朝には一触即発の状態となり、7組と思しき男子生徒は大層ご立腹の様子だった。そして、舞花もまた然り。

 陣夏は自分のことを馬鹿にしたのはどうでもよかったが、彼女のことを馬鹿にしたのが許せなかった。あの時は自分を制御できなかったが、今は制御しきれている。

「模擬戦……かぁ……」

「いきなりどうしたんだよ?」

 陣夏は溜息を交えて吐く。彼の溜息に大智が顔の向きを変える。

「……模擬戦は嫌いなんだよ……」

「『召喚術』が1回しか使えないからか?」

 大智が痛いところを突き、陣夏は思わず顔に苦いものを覚えて眉を顰めた。

 それもそうだろう。陣夏は召喚術を1回しか行使できない。それ故に彼は銃撃戦では全くと言っていいほど役に立たない。そのことは彼も自負している。

「それもあるけど……模擬戦自体が嫌いだ。」

 陣夏は顔を正面に戻し、捨てるように言い放った。しかし舞花は彼の昨日のケンカでの洞察力などから何かを持っているように感じられ、そんな彼に訝しい感じを抱いていた。

「陣夏」

 舞花が表情を変えずに口を開いた。

「なんだ」

「もしかして、自分が『召喚術』が使えないから私たちに迷惑をかけるかもしれない、とか思ってますか?」

「……そんなことはないよ」

 陣夏は若干、口を濁した。舞花はそのことが読み取れ、眉をピクリと動かす。

「たとえ陣夏が『召喚術』を使えなくてもその分は私達でカバーします。そのためのトリオなんですから」

 舞花が表情を緩めながら陣夏に語った。そこへ大智が割り込む。

「そうだぞ」

 陣夏は大智の方へ顔を向けると、そこには溜息をつきながら呆れている顔があった。その呆れ顔にはどこか優しい感じを感じられるものだった。

「お前を誘ったのは『友達』としてだ。『戦力』としてなんかじゃねぇ」

「でも、またさっきみたいなことが起こるかも知れんし」

「陣夏、そんなことは些末なことです」

 舞花が陣夏が言おうとしていたこと遮る。その顔は違う意味で怒っているように見える。陣夏はそのことにより、言おうとしていたことを喉の奥へ呑み込んだ。

 舞花は続ける。

「私たちはあなたの友達だからあなたと組みたいと思ったのです。そのような自虐ネタを聞くためではありません」

 大智が彼女の言葉に付け加える。

「そうだぞ。お前にどんな力があるか分かんねーけど、お前はその力で俺たちをカバーしてくれたら、お前にない力の分は俺たちでカバーする。それが『誰かと組む』ってことだろ?」

 陣夏は彼らの言葉が直接心に届いてきて顔の力が緩まった。

 が、その分、彼が大智と舞花に隠していることがあり、それは彼らの信用を損なうのかもしれないということを再認識させられた。

 陣夏の顔に入る力は完全に緩まることはなかった。



 学校でよく流れる機械的な鐘の音。ウェストミンスターの鐘だ。この鐘は第2次世界大戦から1世紀以上経った今でも学校で採用されている。特にこの学園は風習については保守的なところがあるので変わることはないと思うが。最近では独自のチャイムを採用しているところが(あくまで私立のみ)増えてきているのにも関わらず、だ。この学校の理事長は余程、保守的な考えを持つ人物と思える。

 この学校の歴史はそこまで古くはないと思える。実際、外から見える一般棟はそこまで古くは見えず、そのほかの施設もそこまで古い物とは思えない。にも関わらず、ここまでのエリート校に仕立て上げたここの理事長はかなりの強者つわものとも見て取れる。

 そんな古くは見えない学園の敷地内の実習館の中で、黒の混ざっていそうな青色をした実習服に身を包んだ2クラス90名の生徒が3人の教員の前で整頓していた。その中にはライカの姿もあった。彼女は7組だったのであろう。

3人の教員のうち、1人は奈乃香先生だ。残りの2人はがたいの良さそうな男性教師で、その片方が実習専門の教員なのだろう。

 この『術式』に関する授業で実習(模擬戦)を行う時、専門の教員が立ち会うことが国の法律で定められており、この罰則を破った学校には重いペナルティが課せられるらしい。陣夏は法律に関する知識に疎いので分かっている様子ではなかったが。

 男性教師が一歩歩み出て90名の生徒に鋭い視線を投げかける。ほかの生徒は思わず視線を逸らすものやその威圧に圧されている者がたくさんいた。陣夏はその目は鋭いだけの見かけ倒しと言うことは分かりきったことだったが。

「今から授業を始める。みんな、ちゃんと実習服に着替えてるか?」

 男性教師が見れば分かることをわざわざ生徒に問いかける。彼は生徒を一通り見終えると、顔を正面に戻す。

「今から3人1組、つまりトリオを組んで模擬戦をしてもらう。やり方は簡単だ」

 男性教師は硬い表情でルールについて語り始めた。

 模擬戦でのルールは殺傷行為の禁止、『術式』でなかったものは使用禁止(ただし、携行システムで申請した物については場合によっては許可する)、呪術はAランク以上のものは使用禁止(ただし、相手が同意した場合を除く)など。

「みんな、心配しなくてもここには『非殺傷武具変換術式』が張られているから思いっきりやれ。なお、ケガは本人の責任とする。以上」

 男性教師が端的に、やや早い口調で模擬戦のルールについて説明すると、生徒たちの顔つきが変わった。

「よし、みんな立ってトリオを組め」

 男性教師の指示により、生徒が一斉に立ち上がってトリオの相手を探し始めた。陣夏は約束通りに大智と組むために彼と合流した。

そんな中、舞花のところにはたくさんの生徒のが集まっていた。どこかのアニメの中と思わせるような光景だったが、舞花はそんな人だかりを分けて出てきた。恐らくかなりの労力を使っただろう。

彼女は陣夏と大智に合流すると、そのままトリオを形成した。そして周りからの痛々しく冷たい視線。陣夏は思わず溜息を吐いてしまった。

「今日は、よろしく」

 陣夏たちのトリオの傍を朝の男子生徒が2人の女子生徒を引き連れて通り過ぎた。彼の台詞の最後の方は力が籠められていて、朝のことを根に持っていることを思わせた。目つきは一瞬だけだったが、歪んで見えた。

「すいません。私があいつを怒らせてしまったようで」

「問題ない。元々、あいつが悪い」

「ケンカ上等だぜ!」

「ケンカじゃないぞ、模擬戦だぞ」

 わけの分からないやり取りを続けているうちに全員がトリオを組み終えたようだ。全員、3人ずつで分かれていて、そのトリオの数は30組だ。

「全員、組み終わったようだな。では、これより模擬戦を始める」

 男性教師が推移放ったその瞬間、実習館に太い木や腐った木などが一瞬にして生えてきた。

「えー、この実習館にはほかにも『召喚術』を応用した『風景召喚システム』があるからこういうことができる。みんなにはこの自然を模したオブジェクトの中で戦ってもらう」

 一瞬にして草木が生えたのは男性教師の言う『風景召喚システム』のおかげだった。

 この『風景召喚システム』はその名が示す通り、風景を召喚するためにシステムだ。一度風景を『収納術式』で術式専用の記録端末に収納し、使いたいときに端末から取り出す、という仕組みである。召喚した風景がなくなっても、この風景は記録端末に記録されているものをコピーして召喚しているので再び風景を収納する必要はない。

 この実習館には様々な風景が記録された記録端末があり、様々なシチュエーションが再現できる。

 その中でもスタンダードであるこの『森林』のステージ。

 それが今回の模擬戦のステージだった。

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