20.いつもの日常に
二日後。修復者印の医療施設のおかげなのか俺はすぐに体調がよくなり、いつも通り学校に向かった。
……まぁ、氷野先輩が事情を完膚なきまでに全部教えたせいで母さんに殺されかかったが。でも自業自得なんで何もいえない。
学校に行くと、どうやら熱を出して休んでいたことになっていたらしい。一平は俺がいない間に六人にアタックして避けられたというどうでもいい出来事を話してくれた。
また、昼休みには霧野宮先輩と氷野先輩に会った。一平はかなり舞い上がるように喜んで同席したが、氷野先輩に良い様に弄ばれていた。不憫といえるほどに。
ちなみに、霧野宮先輩にも氷野先輩は全部ばらしていたらしく、めっちゃ怒られた。氷野先輩は俺になんか恨みがあるのだろうか。
放課後になって帰ろうとした時には、校門前で遠神が待っていた。
だが、女子と楽しくお喋りしていたのでスルーした。俺に気付いて呼びかけていたが、女子が群がっていたおかげで無下に出来ないイケメン男は身動きできず、俺はあっさりと逃げることが出来た。ああいう奴こそフラグメイカーと言われるべきだと思った。
そして。
「遅いわよ、チョウマ」
電信柱の裏側で、レイリアが待っていた。
「と言っても、なるべく早く来たつもりだったんだけどな」
「なるべくじゃなくて、マッハで来るべきなのマッハで!」
いやいや、俺じゃそんな高速で動けませんって。
「全く、チョウマがボロボロになったせいで私のロイヤルミルクティーが遠のいてたんだからね。これはあと一本追加ね、追加!」
「うわ、横暴だなぁお前。もうちょっと怪我人いたわってくれよ」
「だったら私も怪我人よ。一応、吸甘鬼の体質で回復出来たから良かったけど、ちょっとだけ危なかったんだからね」
「……まぁ、それは悪かったよ」
結果、俺のせいでレイリアは死にかかってしまった。それは、どうしようもない事実。
だけど、レイリアは笑った。
「……ほんと、甘いなぁチョウマは。お人よしで、捻くれ者。そのくせ、そういうことに関しては責任感じちゃって」
「……悪かったな」
「ふふっ、本当に悪いと思うなら、ちゃんと私を楽しませて挽回してみるぐらいはしてよね、チョウマ」
笑って、いつものような台詞を吐いた。
……敵わないな、どうしても俺じゃこの子には勝てる気はしない。
けれど、俺をこの子は頼ってくれている。それだけは……きっと、事実であると思いたい。
――お前の言ったことの真意はさ、まだ俺にはわからないけど。
「……おけー。それじゃ、エスコートさせていただきますよ吸甘鬼様」
まぁ、のらりくらりと探させてもらうとしますよ。生きている限りさ。
レイリアの手を引きながら、俺は笑みを浮かべて、空へ向かって心の中でそう呟いた。




