第八話:思い出の文化祭
記憶を遡る事3年……
確か私は、友達のゆかに誘われて、名門学校の文化祭に行った。
もちろん、チケット無しでは入れないし、校門では厳しいセキュリティチェック。
ゆかの話では、従姉妹の友達が通っているらしく、奇跡的にチケットをゲット出来たらしい。
将来、漫画家を目指すゆかにとって、名門学校の文化祭は興味津々みたいだ。
「みぃ~や、あんたも漫画を描くなら勉強よ!」
と言われ、苦笑いを浮かべる。
私はイラストをちょこちょこっと描く程度だったのだが、ゆかの影響で漫画を描いてしまって以来、何故か2人で漫画家を目指す事になっていた。
ゆかは絵もお話作りも上手で、私は彼女の漫画を読むのが楽しみだった。
ただ、彼女の漫画を読む代わりに、何故か私も漫画を描いて交換するという、交換漫画をしていた。
ゆかにとって私は、親友であり、同じ漫画家を目指す仲間だったのだろう。
「やっぱり、王道はイケメン御曹司と庶民との恋よね!」
目を輝かせるゆかに、私は苦笑いを返していた。
そういう漫画って、既に世の中に溢れてはおりませんか?と思いながら、校門を潜って中に入ってびっくりよ。
さすが名門学校。
校舎がお洒落で、あんぐりと口を開けて周りを見ていた。
すると1人、サラリーマン風の男性の様子がおかしいのが目に入る。
私、こういう勘だけは働くのよね。
文化祭を見に来ているというよりは、誰かを尾行している感じ?
人気の無い方へと行こうとしているその人を、追いかけようとして
「あ、きみ!そっちは一般の人の立ち入りは禁止だよ」
そう言われた。
振り返ると、腕に「中等部生徒会」という腕章をしている人物だった。
「あの……、あそこに居るサラリーマン。何か怪しいです」
私がそう言うと
「怪しい?」
と、彼は首を傾げる。
「信じなくて良いけど、私、危険予知能力?みたいなのがあって。あの人、普通に文化祭に来た人じゃないみたいです」
彼にそう伝えると、彼は私の頭をポンポンと撫でて
「ハイハイ、ありがとうね~」
と言って、全く話を聞いてくれない。
「本当です!信じて下さい!」
必死に訴えても
「きみさ……、名探偵○ナンの読み過ぎ。とにかく、こっちは立ち入り禁止だからね」
と言われて、追い出されてしまった。
失礼なヤツ!って思いながら、私はゆかと2人で文化祭を回り、すっかりその出来事を忘れていた。
学校をひとしきり周り、そろそろ帰ろうか……という時だった。
突然、後ろから腕を捕まれて
「きみ!やっと見つけた!」
そう言われて振り向くと、さっきの失礼な奴だった。
「なんですか?」
ムッとして答えると
「さっき、キミが言ってたヤツ。誰だか分かる?」
そう聞かれたのだ。
「そんなの……」
分かる訳無いと答えようとした私を、こいつは事もあろうか抱き抱えて走り出したのだ!
「ぎゃあ~!何すんのよ!」
怒る私に
「頼む!緊急事態なんだ。協力してくれ!」
そう言われて、仕方無く頷いた。
(でも、お姫様抱っことか……恥ずかしい)
すると、何やらモニターがいっぱいの部屋に連れて来られた。
「この中に、さっきの奴は居るか?」
そう聞かれて、モニターの画面を見つめる。
とはいえ、文化祭で同じようなスーツの人はたくさん居る。
分からない……。
画面をひとしきり見つめ、校庭を歩く人混みの中に怪しいサラリーマンを見つけた。
「あ!この人」
画面を指した瞬間
「あ、俺。見つけた。中等部校庭のグレーのスーツ」
何やらインカムで話してるらしく、スパイ映画みたいでカッコイイ!
そんな風に見ていたら、モニターにワラワラと警備員が集まって、あっという間にその人が確保された。
私は意味が分からず、私をここに連れて来た人物の顔を見ると
「さっきは悪かった。ありがとう、お陰で大事にならずに済んだ」
そう言うと、私の頭を撫でた。
「俺はこの学校の中等部生徒会長○○○。きみ、名前は?」
確か、名前を聞かれたのを思い出す。
しかも相手の名前をちゃんと聞いていなかったから、思い出せない。
「私?江波美夜です」
「江波美夜?」
「はい」
私が彼に頷いた瞬間
「みぃ~や!いきなり連れ去られたから、びっくりした~!」
と、ゆかが他の生徒会の方に連れられて飛び込んで来た。
「ご協力ありがとうございました。これ、うちの学食のチケットなんですが、今、一般公開していますので、お礼にご馳走させて下さい」
その人物にチケットを差し出され
「いやいやいや!意味分からないまま、怪しい人を教えただけですから」
そう言ってチケットを持つ彼の手を押し戻し
「今日、楽しかったので、お礼は要りませんよ」
って答えた。
「えっ……でも……」
戸惑う彼に
「中等部と高等部を回ったんですけど、みんな良い人ばかりで。お菓子とかたこ焼き食べちゃって、お腹いっぱいだし」
そう答えた。
「そうそう!高等部のお姉さんが、最後だからって、大盛りの焼きそばくれたよね~!」
と、ゆかと二人で盛り上がると
「そうですか……。では、このお礼はいつか必ず」
と、彼が微笑んだ顔を思い出した。
あぁ……、あの時の人か!
私は当初
「いやいやいや!お礼とか、本当に要りません!お役に立てて、良かったです」
そう言って、ゆかと手を繋いで生徒会の人達に背を向けて帰宅しようとした。
すると、さっきの彼が
「美夜!この借りは、絶対に返すから」
と言われたっけ。
いきなり「美夜」って名前を呼ばれてビビったけど、それ以上に私は「どうやって?」と思ったんだよね。でも、二度と会うことはないだろと、笑顔で手を振って別れた。
帰り道
「みぃ~や、良くあんな超絶イケメンと普通に会話出来るね!」
とゆかに言われて
「え?超絶イケメンだった?私には、先輩以外はどの男の人もみ~んな一緒!」
そう笑って答えた。
ゆかは呆れた顔をして
「あんたの審美眼、疑うわ~」
と言われたのだった。
ちなみに、文化祭後。
ゆかが描くイケメンは、しばらくあの時の人がモデルだったのを思い出した。




