第4話:【悲報】ワイとリリィ、立ち寄った街で宗教勧誘と間違えられて塩を撒かれるwww
「……おい、リリィ。そのメイス、もうちょい静かに持てんのか? 街道歩くだけで地響き立てとるで。お前の足音と合わせて、五月蝿すぎて煽る気が失せるわ」
「……え? あ、ごめんなさい。……あなた、私のこと五月蝿いって言ったの……? やっぱり私なんて、いない方がいいんだ……。ねぇ、私、このまま地面に吸い込まれて消えちゃってもいいかな……?」
王都エンテルエンウが誇る最強のリーサルウェポン、聖女リリィはワイの何気ない一言で膝から崩れ落ちかけた。彼女の巨大なメイスが地面を砕く寸前、ワイは慌てて口を開く。
「待て待て待て! 誰がお前がいない方がいいなんて言ったんや! ワイはお前が五月蝿いって言っただけで、存在否定はしとらん! レスバの基本は論理のすり替えやぞ! ちゃんと聞けや! じゃなきゃ、お前のその耳飾りか?www」
「……あ、あはっ……そうよね。私の耳なんて、どうせ誰も聞いてないんだもん……。どうせ神様だって、私の声なんて届いてないのよね……」
「話聞けやボケェ!!!」
森を抜け、王都へと続く主要街道を歩き始めて数日。ワイと聖女リリィの奇妙な旅は、まるでメンヘラと飼い主(ただし飼い主も口が悪い)という、新たなジャンルの異世界ロードムービーと化していた。
道中、リリィは圧倒的な聖なる力でワイを護衛し、毎晩のように森で獲物を狩っては、見事な腕前で調理してくれた。リリィの焼く肉は絶品で、ワイのでっぷりとした腹は日々、着実にその丸みを増していった。だが、その代わりにワイはリリィのメンヘラゲージが上限に達するたびに、的確な煽りや正論時には存在肯定風の悪口を投げかけるという、過酷な役割を担っていた。
「……ねぇ、あなた。……私、もう二日も誰にも必要とされてない気がする……。このまま消えてしまいたい……」
「アホか! お前、ワイの胃袋の唯一の希望やぞ! お前がおらんようになったら、ワイはまた草を食う生活に戻らなあかん。責任取れや! それともお前、ワイに草食わしてお前も草生やす側になれっていう精神攻撃か? 悪質すぎひん?www」
「……え、あ、ご、ごめんなさい……。あなたのお腹を空かせるなんて……。私、すぐにお肉、獲ってくるね!」
リリィはワイの言葉に一喜一憂し、自らの存在意義を見出すたびに、瞳に狂気と活力を宿らせては、森の奥へメイスを抱えて突撃していった。
そうして数週間。ワイとリリィは遠く地平線に巨大な城壁と、その上にそびえ立つ神殿の尖塔が見える都市に辿り着いた。それが王都エンテルエンウへと続く中継都市であり、彼女の因縁の地の一つ、リーサルモールゲルだった。
「……ここが、リーサルモールゲルか。なんか、城壁がデカすぎて煽り甲斐がありそうやな。土木工事の担当者は誰や?」
「……リーサルモールゲル。私が聖女として初めて派遣された街。……でも、きっと誰も私を歓迎してくれないわ……」
リリィは街の入り口で、まるで処刑場に向かうかのように怯えていた。ワイはでっぷりとした腹をゆらし、リリィの背中を吸盤で軽く叩く。
「アホか。お前、聖女やろ? 胸張って歩けや。顔色悪いから余計メンヘラ臭が滲み出とるで。お前のそのオーラ、街全体に厄災って認識されとるぞ。はよ顔洗ってこい」
「……う、うん……!」
ワイの罵倒(叱咤激励)に、リリィはわずかに顔色を取り戻し、深呼吸をした。
リーサルモールゲルの重厚な城門に辿り着いた。そこには、全身を鉄の鎧で固めた二人の衛兵が、槍を交差させて立ちはだかっていた。
「止まれ! この先はリーサルモールゲル……って、な、なんだその不気味な黄色い生き物はッ!?」
衛兵の一人が、ワイのでっぷりとした腹と、虚無を見つめる死んだ魚のような目に仰天して槍を突き出した。
「おいおい、初対面で不気味とは失礼やな。ワイはこう見えても、一匹のドラゴンを言葉責めで沈めた功労者やぞ。お前、その槍の持ち方からして実戦経験ゼロのニワカやろ?www」
「なっ、喋った!? 邪悪な術を使う魔物か!」
「術やなくて言語や! 義務教育受けとらんのか? それよりお前ら、その城門の建付け悪くないか? 左側が3ミリほど歪んどるで。設計ミスか、それともお前らがサボって寄りかかりすぎたせいか?www」
「貴様ぁ! リーサルモールゲルの誇りを侮辱するか!」
衛兵が顔を真っ赤にして今にも突きかかろうとした瞬間、後ろでフードを深く被っていたリリィがおずおずと前に出た。
「……ま、待ってください。その方は私の連れで……」
リリィがフードを取ると、その神々しいまでの美貌に衛兵たちは言葉を失った。しかし、次の瞬間彼らの表情は恐怖へと変わった。
「あ、あなたは……絶望の聖女リリィ様!? なぜここに! 王都で幽閉……いえ、謹慎されていたはずでは!」
「……謹慎。……そう、私は世界に拒絶された罪人。……でも、竜王が暴れ出したから、調査のために……」
リリィがボソボソとメンヘラ特有の独り言を始めると、衛兵たちは目に見えて怯え始めた。
「ひぃっ! 聖女様がブツブツ言ってる! 呪われるぞ! それにあんな得体の知れない黄色い豚みたいな魔物を連れているなんて……まさか、王都を裏切って新興宗教でも立ち上げたのか!?」
「新興宗教(笑)。お前ら、想像力逞しすぎやろ。ワイはただの無職や。リリィの保護者みたいなもんや。はよ門開けろや、公務員やったら納税者の言うこと聞けやwww」
「う、うるさい! 納税もしてない魔物に人権はない! 通りたければ身分を証明しろ!」
「身分? ワイのアイデンティティは名無しや。それ以外に何があるんや。あ、強いて言えばお前らの上司の無能さを暴露する内部告発者になってもええんやぞ?www」
「……ぐ、ぬぬ……っ!!」
衛兵たちがワイのレスバに精神をすり潰されている隙に、リリィが王家の紋章が入った身分証を無言で提示した。あまりの重圧とワイのウザさに耐えきれなくなった衛兵たちは、吐き捨てるように門を開けた。
「……通れ! だが、騒ぎを起こしたらすぐに叩き出すからな!」
「騒ぎを起こすのはお前らの無能な対応のせい定期。サンガツwww」
街に入ると、石畳の通りには前世のワイが住んでいた底辺アパート街とは比べ物にならないほど清潔な人々が往来していた。しかし、ワイとリリィの組み合わせは一瞬で街の空気を凍りつかせた。
一方は、プラチナブロンドの髪をなびかせ、白い法衣と巨大なメイスを携えた、圧倒的に美しいが目が死んでいる聖女。もう一方は、醜悪な黄色い姿でだらしないでっぷりとした腹を揺らし、へそを出して歩く謎の生物。
「……ね、ねぇ、あなた。……みんな、私を見て怯えてるわ。やっぱり私、この街にいてもいい存在じゃないのね……」
リリィの瞳が再び潤み始める。周囲にドス黒いオーラが渦巻き始めた。
「怯えとるのはお前のメンヘラオーラにやろが! そんな重たい空気出しとるから、みんなが避けとるんや!」
特に、リリィの神々しい美貌と、ワイのあまりに不気味な姿が、最悪の化学反応を起こした。
「ひぃっ! あんなバケモノを連れて、布教活動か!?」 「ま、また聖女様だ! 今度はあの醜い黄色い魔獣を神と崇めさせる気だぞ!」 「聖女様の光で我らを盲目にして、怪しげな経典を売りつけるつもりだ!」
人々は一斉に距離を取り、恐怖に顔を歪ませた。
「宗教勧誘……? なんのことや? ワイは神なんか信じとらんぞ。エビデンスないからな。リリィ、お前、まさか裏で怪しいセミナーの招待状とか配っとらんやろな?」
「……え、宗教勧誘? 私、そんなこと……! ……ねぇ、あなた。私、やっぱりみんなに嫌われてる……。死にたい……」
リリィのメンヘラゲージが振り切れる。彼女の足元から聖なる光が不規則にスパークし始めた。
「そうだ! あの不気味な光も、きっと洗脳の魔術だ!」 「塩だ! 清めの塩を撒けぇぇぇ!!」
どこからともなく現れた男が、手に持った袋から白い粒を鷲掴みにし、ワイとリリィに向かって盛大に投げつけた。パラパラと音を立てて、ワイの黄色い肌に塩が降り注ぐ。
「ヒエッ! な、なんやこれ!? 痛い! 痛いねん! 塩分濃度高すぎやろ! ワイ、カエル(風のなんJ民)やぞ! 浸透圧で干からびるわ! ていうか、お前ら、これが宗教勧誘やと思っとるんか? めちゃくちゃアナログな追い払い方やな! ネットで叩けや!」
「きゃあああ! 本当に嫌がっているぞ! 悪魔め!」 「もっと! もっと撒けぇぇぇ!」
あっという間に、ワイとリリィは街の人々に囲まれ、まるで漬物石のように大量の塩を浴びせられた。
「アカン! 干からびる! 塩漬けなんJ民になってまう! リリィ、はよこの状況なんとかせえや! お前、王都最強の聖女やろ! 宗教勧誘に間違えられて塩を撒かれる聖女とか前代未聞の不祥事やぞ!」
「……う、うう……。私、塩を撒かれるの、初めて……。みんな、私を拒絶するのね……。なら、もう全部……全部輝け!!」
リリィのメンヘラゲージは完全に振り切れ、彼女のメイスの先端からは、街を丸ごと蒸発させかねないほどの高密度な聖光が収束し始めていた。
「リリィ! 今すぐその力を止めろ! そうしないと……」
ワイは、自らの人生最大の口撃を決意した。
「そうしないと、ワイが! お前を! この街の広場で! 毎日! リリィの聖女様、またメンヘラ暴走して街壊しそうになって草wwwって、実況スレ立ててさらし上げるからな! デジタルタトゥーとして一生残したるからな!!」
「……は……っ!?」
リリィの聖光が、ピタリと止まった。
「わ、私を……そんな風に……みんなに……?」
「せや! 毎日実況して、お前のメンヘラ日記を世界中に公開したるわ! それとも、お前、それでもええんか? 世界中のなんJ民にメンヘラ聖女(笑)って末代まで罵られ続けたいんか?」
リリィは、ワイの言葉の暴力(脅迫)に、精神を完全に叩き潰されたらしい。
「……う、うう……。いやだ……。私、そんなの……嫌だ……。もう暴走しないから……だから、私をそんな風に……」
リリィはメイスを地面に落とし、その場にうずくまってしまった。
「ち、違うんです! 私、この人を洗ってあげるだけだから……!」
リリィの必死の弁明も虚しく、結局、ワイとリリィは街の人々から大量の塩と罵声を浴びせられながら、命からがらリーサルモールゲルの反対側の門から押し出されてしまった。
「……ハァ、ハァ……。なんやねんこの街! 宗教勧誘と間違えられて塩を撒かれるとか、前世の2ch時代でも経験なかったで!」
「……う、うう……ごめんなさい……。私のせいで、あなたも……」
街の門から追い出され、再び人気のない街道に立つワイとリリィ。ワイのでっぷりとした腹にはまだ大量の塩がこびりついており、肌がヒリヒリと痛む。
「しゃあないわ。リリィ、お前、この近くに温泉とかないんか? ワイ、全身塩まみれで痒くて煽るどころちゃうねん。このままじゃなんJ民の塩辛になってまう」
「……温泉……? えと、ここから半日ほど行けば、聖地の泉があるわ。……そこなら、誰にも邪魔されないで、体を清められると……思う」
「よし! 決まりや! お前、ワイをそこまでエスコートせえ! できないなら、お前の聖女としての無能っぷりを、王都エンテルエンウの王様に書簡で報告したるからな」
「……あ、あはっ……はい! 私、頑張るわ! あなたのために……!」
リリィの瞳に、再び危うい活力が宿る。そして、ワイのでっぷりとした腹から猛虎魂溢れる声が響いた。
「ギュルルルンゴォォォォ!!」
「あかん! また腹減ってきた! リリィ、はよ肉獲ってこい! ワイの胃袋、お前の煽り耐性と同じくらい繊細なんやぞ!」
「……はい! 今すぐ、最高の獲物を獲ってくるわ! あなたのために!」
かくして、王都エンテルエンウ最強の聖女と、謎の黄色いカエル(なんJ民)の旅は、大量の塩を浴びせられるという珍事を経て、聖地の泉を目指し始めたのだった。




