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第26話:【悲報】王都を焼いたワイ、伝説の魔槍を「馬車代」にして逃亡www

 地下8.5階での「鼻血・号泣・幼児退行」という、七勇者オスカル・バルデッダのあまりにも無惨な敗北。それは、ドラシール竜王国のプライドを木っ端微塵に粉砕した。

 女王フジョーシ=ヤオイは震える指先でワイとローズを指し示し、氷のような断定口調で言い放った。


「……もはや、対話は不要。貴様のような存在そのものが不快なバグは、我が国の神聖なる土を汚すことさえ許されない。……即刻、我が国から永久に追放する!」


 こうして、ワイとローズは頑丈な手枷(ワイには効果薄だが)をはめられ、衛兵たちに引き立てられて地上へと連れ出された。

 だが、待っていたのは歓喜の釈放ではない。王都のメインストリートを埋め尽くした、数万人の怒れる民衆による石投げの刑だった。


「出ていけ、バグカエル!! オスカル様の純真を返しやがれ!!」

「よくも我らの英雄を鼻血塗れにしてくれたな!! この非国民が!!」


――ゴンッ!!

 ワイの後頭部に、誰かが投げた生卵が直撃する。


「冷たっ!! www おいおい、お前ら!! www 貴重なタンパク質を無駄にすんなや!! www 期待値、今ので100円分ダウンやぞ!! www」


 ワイは背中に括り付けた魔槍グングニルで痒いところをガリガリと掻きながら、罵声を浴びせる民衆をニヤニヤと見渡した。


「ほらほら!! もっとしっかり狙えや!! お前らの投擲スキル、鼻血出したお姉さん以下やぞ!! www ほら、この魔槍で打ち返したろか!? www」


「……あんた、この状況でよくそんなに煽れる……」


 隣で歩くローズは飛んでくる石を魔法の防壁で弾き飛ばしながら、深い溜息をついた。彼女もまた茨の魔女として民衆からは恐怖と嫌悪の対象だ。


「「「殺せ! その汚いカエルを殺せ!!」」」


 降り注ぐのは石だけではない。鉄屑、レンガ、果ては中身の入った肥桶までがワイを目がけて飛んでくる。だが、ワイは手枷をはめられたまま魔槍グングニルを背中で揺らしてニチャアと笑った。


「おーい、ドラシールの雑魚ども!! www 投擲のコントロール悪すぎひんか!? www 期待値、今ので完全消滅やぞ!! www」


 ワイは飛んできた石をカエル特有の柔軟な動きでヒラリと避け、地面に落ちた石を足蹴にして民衆に蹴り返した。


「ほらほら!! お前らの英雄(鼻血お姉さん)は今頃お布団で泣いとるぞ!! www 勇者がカエルに負けて、民衆はゴミを投げるだけwww この国、民度低すぎて草も生えへんわ!! www ほんま、お前ら生きてて恥ずかしくないんか!? www」


 ワイの徹底的なレスバと煽りは、民衆の正義感を殺意へと変えた。

 一人が衛兵の制止を振り切って殴りかかり、それをワイがぬめりでスカしたことで、その後ろにいた別の市民に激突。


「あ、仲間割れか!? www さすがドラシールの民、知能指数がガイガイ音頭以下やな!! www」


 この一言が決定打となった。

 怒り狂った民衆が、ワイを殺そうと押し寄せ、それを止めようとする衛兵と衝突。さらに、日頃の女王の圧政に不満を持っていた者たちがどさくさに紛れて商店を襲い始め、王都は一瞬にして大暴動の渦に包まれた。


「ひゃっはー!! www 燃えろ燃えろ!! www 王都炎上、最高の花火やんけ!! www」


 街角で火の手が上がり、悲鳴と怒号が響き渡る。

 ローズは呆れ果てて、魔法で飛んでくる火炎瓶を叩き落としながら呟いた。


「……あんた、一国を追放される直前に滅ぼす気? ほんと、救いようのないクズ」


「褒め言葉として受け取っとくわ!! www ほら、女王さんも見てるかー!? www お前の国、カエル一匹に煽られて崩壊しとるぞ!! www」


「チャンスやで、ローズさん!! www みんなワイを殺すのに必死で、門の警備がガタガタや!! www 今のうちにトンズラこくぞ!! www」


 ワイは背中に括り付けた魔槍グングニルが揺れるのも構わず、四つん這いになって超高速ぬめぬめ走法を開始した。


「どけえええ!! www カエル様のお通りや!! www」


 逃げ惑う市民の足元をすり抜け、燃え盛る屋根の上を跳ねワイとローズは混乱の極みに達した南西門へと辿り着いた。門番たちは暴徒の鎮圧に駆り出され、文字通りザル状態。


「……もはや、対話は不要。貴様のような存在そのものが不快なバグは、我が国の土を汚すことさえ許されないわ」


 遠く王城のバルコニーから、女王フジョーシ=ヤオイの断定的な絶望の声が魔導拡声器を通じて響いてくる。彼女は杖を天に掲げ、王都全域を焼き尽くさんばかりの浄化魔術を準備していた。


「ヒエッ!! www 女王様、マジギレやんけ!! www さいなら、ドラシール!! www 二度と来おへんわボケ!! www」


 ワイとローズは、閉まりかけた門の隙間に滑り込み、夜の闇へと消えていった。


 王都から数マイル離れた、南西へと続く街道。夜霧が立ち込める中、ガタゴトと車輪の音を立てて進む一台の大型馬車があった。


「おーい、おっちゃん!! 乗せてってーな!! www ワイ、今しがた国を追放されたばっかりの期待値の塊やねんけど!! www」


 街道の真ん中で黄金の棒を振り回す緑色の怪異。御者の老人は腰を抜かしそうになったが、隣に美女ローズがいるのを見て、警戒しつつも馬車を止めた。


「な、なんだ貴様らは……。ドラシールの方で火の手が上がっているがまさかお前たちの仕業か……?」


「あぁ、あれ? ちょっとしたお別れパーティーや!! www それよりおっちゃん、これ南西行きやろ? ワイら二人を国境まで乗せてってくれたら、ええもんやるわ!! www」


 御者の老人は、ワイの手にある黄金の槍を見て鼻で笑った。


「そんな派手な飾り槍、連合の関所を通る時の賄賂にもなりゃせん。まともな金がないならお断りだ」


「おっ、言うたな? www これ、この国の最強の槍使いが泣きながらワイに譲ってくれた(奪った)魔槍グングニルやぞ。www これ売れば、おっちゃんの村三つは買えるんちゃうか? www ほら、運賃や!! 受け取れや!! www」


 ワイは惜しげもなく、武神の力が宿る聖遺物――伝説の魔槍グングニルを老人の膝元に放り投げた。


「……っ!? な、なんだこの重圧は……!? ま、まさか本物なのか……?」


「おっちゃん、大事に使いや!! www 畑の支柱にしてもええし、孫の手にも最適やぞ!! www」


 こうして、最強の槍使いの尊厳グングニルは、一回の相乗り運賃という最低の価値にまで叩き落とされた。


 三日三晩、馬車の荷台で揺られ続けた末、ついにドラシール竜王国の国境を遠く離れた。

 三日前の王都炎上の噂はすでに行商人たちのネットワークを通じて国境を越えていたらしい。


「よし、着いたぞ。ここから先は連合の勢力圏だ。……おい、本当にあの槍を置いていくのか? 後で返せと言っても知らんぞ」


 老人はまだ半信半疑の様子でグングニルを握りしめている。


「ええって!! www ワイ、もう新しい孫の手見つけるから!! www ほなな、おっちゃん!! www」


 黄金の光を放つ魔槍グングニルを積んだ馬車がガタゴトと砂埃を上げて遠ざかっていく。ドラシールの建国神話に名を刻む聖遺物が今や行商人の荷台でカボチャや干し肉と並んでいる。その光景はもはや一つの芸術的なまでの屈辱であった。


「……本当に行ったわ。あんた、あれがどれほどの価値か分かってるの? 伝説の武器をただの乗車料金にするなんて」


 ローズが呆れたように、地平線の彼方を見つめて呟く。


「ええんや、ローズさんwww 伝説の槍よりも、今この瞬間の座れる席の方が期待値高いやろ! www それに、あんな重い棒をずっと持ってたら肩凝るわwww」


 ワイはもはや孫の手を失い痒いところに手が届かなくなった背中を、その辺の枯れ木にガリガリと擦り付けながら歩き出した。

 南西へと続く街道は歩けば歩くほど、ドラシールの豊かな緑を失い、赤茶けた土とひび割れた荒野へと変わっていった。


 数時間の徒歩の後、霧の向こうに歪なシルエットが見えてきた。

 中央諸国連合の東端に位置するさびれた宿場町。看板は腐り落ち、建物の壁には無数の弾痕(あるいは魔法の着弾跡)が刻まれている。


 街の入り口にはかつては立派だったであろう石造りの門があったが、今は半分が崩れ落ち、残った部分には生きて帰りたければ金を置いていけという身も蓋もない落書きが踊っている。


「……ここが、中央諸国連合の玄関口ね。ドラシールの連中が野蛮人の巣窟って忌み嫌うのも納得だわ」


「ええやんけ!! www このドブのような臭い、なんJの雑談スレを思い出すわ!! www 実家のような安心感やな!! www」


 ワイはぬめぬめと湿った足音を響かせながら、街のメインストリート(という名の泥道)へと足を踏み入れた。


 街を歩く住民たちの目は死んだ魚のように濁っている。

 酒場の軒下では、鎧を脱ぎ捨てた傭兵崩れが酒瓶を握ったまま眠り、路地裏からは常に誰かが誰かを殴っているような鈍い音が聞こえてくる。


「おい、見ろよ。ドラシールの方から珍客だ」

「黄色のカエルと、上等な服を着た魔女か。……ありゃいいカモだぜ」


 さっそく、物陰から薄汚れた革鎧を着た男たちがギラついたナイフを手に湧き出してきた。

 ドラシールの洗練された騎士道などここにはない。あるのは、剥き出しの奪うか奪われるかの論理だ。


「おい、カエル。その隣の女と身ぐるみ全部置いていけ。そうすれば、そのキモいツラを潰さずに見逃してやるぜ」


「おっ、www さっそくイベント発生か!? www お兄さんら、挨拶代わりにしては物騒やなぁ!! www」


 ワイはニチャアと笑い腰を落とした。

 槍はない。魔法もない。だが、ワイにはバルデッダを絶望させたぬめりと煽りがある。


「なぁお兄さん、そのナイフ……錆びすぎてへんか? www そんなのでワイの皮膚が切れると思っとるん? www 期待値、今ので完全消滅やぞ!! www ほら、もっとしっかり磨いてから来いや!! www」


「……あ、あんた。ここでもレスバ始める気……?」


 ローズが呆れ顔で杖を構える中、さびれた街にカエルの不快な笑い声が響き渡った。

 中央諸国連合でのクズの再出発は、案の定、一触即発の乱闘(あるいは一方的な煽り)から幕を開けることになった。

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