第24話:【悲報】ワイ、焼き鏝でぷりけつに焼き印を施されるwwww
ドラシール竜王国、王城へ続く長い階段を一人の女戦士が粛々と登っていた。
七勇者が一人、オスカル・バルデッダ。
彼女は魔術を一切解さない。この世界において魔力は万能の象徴とされるが、彼女にとってそれは肉体の純粋な可能性を曇らせる不純物に過ぎなかった。
彼女がその身に宿しているのは魔術の術式とは全く別の武の神より授かりし武神の祝福である。
それは魔力を用いた魔法とは根本から異なる。戦技を極限まで引き出すための血と筋肉に直接刻み込まれた神の刻印である。
「……バルデッダ様。お久しぶりです」
登城の途、知り合いである騎士が声をかける。
「ああ。陛下に呼ばれてな。地下に世界のバグとやらがいるそうだ」
その声は低く、そして硬い。男勝りで堅物な彼女の気性は王都の誰もが知るところだった。
「……貴女の【戦技】が必要な相手ですか。魔術師である陛下が匙を投げるとは穏やかではありませんな」
「案ずるな。魔術で通じぬなら、貫くのみだ」
オスカルは地下牢へつながる廊下を歩きながら、かつての戦場を思い返していた。
三年前。西の魔王が派遣した最精鋭の側近三人である三魔幹が王都に迫った時、騎士団は壊滅の危機に瀕していた。
側近たちは魔王から与えられた魔法無効の結界を張り、あらゆる魔法攻撃を嘲笑っていた。そこに現れたのが魔槍グングニルを携えたオスカル・バルデッダだった。
「魔法が効かぬか。……戦士にとっては好都合だな」
彼女が放ったのは、武神の祝福によって強化された戦技【縮地・瞬貫】。
魔術的なテレポートではない。純粋な脚力と重心移動のみで物理的な距離をゼロにし、神速の一突きを心臓へ叩き込む技。
一人は結界ごと串刺しにされ、一人は槍が放つ衝撃波(物理的な圧力)で肉体を砕かれた。最後のひとりは彼女の放つ戦意威圧だけで精神を破壊され、膝をついた。魔術という理に頼らぬ、純粋な武の暴力。それが武神の寵児、オスカル・バルデッダの真髄だった。
(魔法すら無効化するカエル、か。もしそれが本当なら、そのバグは私と同じ物理の極致を歩む者かもしれん。……相見える価値はある)
オスカルは、背負った魔槍の重みを確かめ、厳格な面持ちで地下牢へと続く階段を下りていった。
一方その頃、ドラシール地下牢、地下8.5階。
伝説の勇者が期待する強者の姿など、そこには微塵も一粒子も存在しなかった。
「……おい、……いい加減にしろよ、このゴミカエルが……!!」
牢の外では、巨漢の看守が怒りで顔を真っ赤に染めていた。
女王が逃げ去り、数週間の猶予期間。あまりの暇さにワイは牢の外の看守を徹底的に煽るという、最底辺の娯楽に耽っていた。
「いやー、看守さんwww その情けない顔、なんや? www お前の人生、期待値マイナスか? www ほら、その腰にぶら下げてる鍵、ワイのピカピカに磨いた床より汚いぞ!! www ほら、磨けや!! www」
「……貴様、……女王様が来ないと思って調子に乗りおって……!!」
「おっ、顔真っ赤やんけ!! まるで茹で上がったタコやな!! www ほらほら、もっと怒ってみーや!! お前の怒りなんて、……あ、……ちょ、……おい、……待て、……冗談や!! www」
看守がキレた。
彼は近くの火鉢に突っ込まれていた、囚人に印をつけるための赤く熱せられた焼き鏝を奪い取ると、乱暴に牢屋の扉を蹴破って踏み込んできた。
「……魔法が効かなくても、物理的な熱なら効くんだろうなあ!? 貴様のその、ふざけたぷりぷりとしたケツを根性焼きにしてやる!!」
「ひ、……ヒエッ!? www 冗談やんけ!! www 看守さん、今のなし!! www ワイ、平和主義者……あ、……あぁぁぁぁぁぁ!!」
ワイは魔法の枷で床に組み伏せられ、四つん這いの無残な姿で晒された。
ジューーーーーーッ!!
「ぎゃあああああああああああああああああ!! www 熱い!! www 熱い熱い熱い!! www ワイのチャームポイント、ぷりけつがあああ!! www 期待値が黒焦げやああ!! www」
地下空間に肉の焼ける香ばしい匂いと、なんJ民の情けない絶叫が響き渡る。
看守は「ひはは! 泣け! 喚け!」と悦びに浸り、何度も熱い鉄をワイのケツに押し当てるという陰湿ないじめを繰り返した。
「やめ、……やめてーや!! www 誰かぁぁ!! 助けてぇぇぇ!! www」
ワイが涙と鼻水で顔をグチャグチャにし、ケツを抑えて床をのたうち回っていた、まさにその時。
ガラン……。
重厚な鉄の扉が、何者かの意志によって開かれた。
現れたのは魔槍グングニルを携え、冷徹なまでの静寂を纏ったオスカル・バルデッダ。
彼女は地下深くに潜むという魔法すら通用せぬ、絶対的な虚無の強者との対決を予感し、精神を極限まで研ぎ澄ませ武神の祝福によって全能力を開放していた。
だが、彼女の「眼」が捉えた光景は――。
看守にケツを焼かれ「あっちぃぃぃ!! www ぷりけつが炭になるぅぅぅ!! www」と情けなく泣き叫びながら、床の上でケツを突き出して転げ回っている、黄色のカエル。
「…………」
オスカルの足が止まった。
武神の祝福が、「この対象に脅威なし。ただし、著しく不快」という判定を彼女の脳内に告げる。
「…………陛下。……これが、……この……無様に地を這い、汚い叫び声を上げている卑小な獣が、……世界のバグなのですか?」
その声は氷山よりも冷たく、そして激しい困惑に満ちていた。
一方、ワイはオスカルの足元に必死で這い寄る。
「お、……お姉さん!! www 助けて!! www その槍、……なんか冷たそうな光放ってるやんけ!! www それで……それでワイの焼けたケツを冷やしてくれぇぇ!! www 期待値、今なら最高やから!! www」
「…………」
伝説の槍使いオスカル・バルデッダ。
彼女は無言で魔槍グングニルをゆっくりと正眼に構えた。その穂先は、ワイの焦げ付いたぷりけつを正確に射抜こうとしている。
「……私の槍が、このような茶番に駆り出されるとは。……武神への冒涜だ。……死ね、下劣なカエル」
「待てお姉さん!! www その構え、……さっきの看守より100万倍ヤバいんやけど!! www 物理はマジでアカン!! www 死んでまう!! www」
最強の堅物勇者と、史上最悪のクズニート。
地下8.5階、焼けた肉の匂いと絶望の中で、ついに決戦の幕が開く。




