表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/22

揃いし五冠

 洋館に戻ると、外の緊張が嘘のように空気が緩んだ。

 重い扉が閉じる音を背に、澪は迷いなく奥へ進む。


「さっきの部屋を使いましょう」


 案内されたのは、見覚えのある場所だった。

 円卓を囲むように椅子が配置された部屋。

 澪とひよりから五冠について説明を受けた時に使った。


 今は、五つの椅子がすべて埋まっている。


 湊は、そっとその光景を見渡した。


 ――全員、揃った。


 知の冠、命の冠、字の冠。

 そして、剣の冠と影の冠。


 澪が、円卓の中央に視線を落としながら言った。


「改めて。全員無事で何より」


「おーし、帰還!」


 剣の冠が、どさっと椅子に腰を下ろす。

 長い刃は壁に立てかけられ、戦場の熱だけがまだ残っている。


「いやー、やっぱ実戦はいいな!」


「……楽しそうでなにより」


 ひよりが呆れたように笑う。


「楽しまなきゃやってらんねえだろ?」


 烈は豪快に笑った。


 その隣で、影の冠の男は静かに椅子に腰を下ろしていた。

 音もなく、存在感だけがある。

 澪が、湊を見る。


「さっきは言えなかったわね。正式に紹介するわ」


 澪が指先で円を描く。


「剣の冠、赤城 烈」


「おう!」


 烈は手を上げる。


「んで、影の冠。黒峰 静」


 静は軽く頷いただけだった。


「……よろしく」


 短い一言。

 それだけで、空気が締まる。

 湊は、背筋を正し、ゆっくり口を開いた。


「言ノ葉 湊です。字の冠……です」


 少し緊張した声。

 だが、烈はそれを気にも留めず、にっと笑った。

 静が、湊を一度だけ見て言った。


「……さっきの読み、助かる情報だった。これからよろしく」


 淡々とした評価。

 それなのに、胸の奥がじんと熱くなる。


「ありがとう……ございます」


 澪が、円卓に手を置いた。


「今回の件で、はっきりしたことがある」


 全員の視線が集まる。


「五冠は、単独では成立しない」


 烈が腕を組む。


「まあな。正面は俺がぶった斬るけどよ」


「裏を取るのは俺」


 静が続ける。


「回復とフォローは任せて!」


 ひよりが明るく言う。


 澪は、最後に湊を見る。


「私が情報分析と全体指揮。…そして、全体を読むのが字の冠」


 湊は、静かに頷いた。


 戦えないことが、劣っているわけじゃない。

 前に出ないことが、逃げじゃない。


 ここには、それぞれの役割がある。


「……なんかさ」


 烈が、ぽりぽりと頭を掻く。


「こうして揃うと、チームっぽいよな」


「今さら?」


 ひよりが笑う。


「いや、今まで揃うこと自体、少なかったしな」


 澪が、静かに補足する。


「字の冠が現れたことで、状況は動き始めている」


 その言葉に、湊は息を吸った。

 自分の存在が、世界を揺らしている。

 それは怖くもあるが――


 同時に、責任でもあった。


「これから忙しくなるわ」


 澪は、はっきりと言う。


「歪みも、妖も、確実に増える」


 烈が、にやりと笑った。


「望むところだ!」


「ほどほどにしてよ?」


 ひよりが肩をすくめる。


 静は、ただ一言。


「連携は、悪くない」


 その言葉に、湊は小さく微笑んだ。

 円卓を囲むこの場所で、

 五つの冠は、初めて同じ方向を向いている。


 まだ始まったばかりだ。

 けれど。

 ここから先、

 一人では辿り着けない未来がある。


 湊は、静かに拳を握った。


 自分が字の冠となってしまった責任は果たしていかないといけない。

 仲間と共に

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ