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推し活にいきる転生少女は、推しヌイを流行らせたい

掲載日:2026/03/06

3月6日【私達、裏庭だけの関係なのに】がコミカライズ発売になります!

その記念日に新作短編を、ど〜ぞ〜お楽しみくださいませ(^^)

「俺…必ずエリナの所に帰っくるから!それまで……待っていてほしい」


夕暮れの見える丘に、幼馴染のラルクから呼び出されて……今これ。


いやいや、そういうの興味ないんで!!

だって私には愛しの【推し】がいるからぁぁああ!!


私とラルクは幼馴染だけど、今までも惚れた腫れたとか、男女の関係とか、一切ない。


1度もラルクからは、好きだとも、付き合おうとも言われたこともないし、将来一緒になろうと、幼い時に約束した覚えもない…たぶん。


それなのに、ラルクは真剣な顔して私を見ている。


――どうしてこうなった………


こんな期待するような事を、このシチュエーションで言われたら、私じゃなかったら、コレ絶対に勘違いしちゃう案件よっ!!


ラルクって私のこと好きだったの?って!!



 しっか~~し!!


 絶対にありえない!!って、私は知っていますけど!なにかっ!!


私とラルクって、ずっとバカなことばっかりやってきた仲間だし、ついこの前だって、ラルクも好きな子がいるとか、相談された。

お互いに恋愛トークもできる、応援もできる間柄だったはず……さっきまでは。


確か…先月は、隣町の花屋のサナちゃんにアタックするって豪語していたのに……。


 まっ、まさかっ!!


 ……ラルク、サナちゃんにフラれたのか!??


 チ―――ン。……心のなかで合掌しておく。


ご愁傷様なラルクの都合は、どうであれ!


 ―――私には大切な推しがいるのだっ!!


漆黒の艶かな髪、キリッとした目元、クールな雰囲気を醸し出してるけど、たまに笑う姿にドキっとするギャップがたまらないのっっ!!


ラルクが隣町にサナちゃんに一目惚れして追いかけてる間に、私も運命の人と出会ってしまったのよ。愛しの尊き御方……。


 そうっ!!私の推し!!


  『  アレン様  』


あれは、忘れもしない3ヶ月前!!


すべての始まりは、ラルクと隣町に移動サーカスが来てるっていうんで、一緒に見に行ったのよね。


アレン様はサーカスの団員の1人。

猛獣使いをしている。いわゆるテイマーだ。


ステージのスポットライトがあたったアレン様は、あまりにも神々しくて目が焼けるかと思った……。


その日から私は、すっかりアレン様の虜になり、小遣いを握りしめ、仕事が休み日は全部アレン様を見に通った。


幾度となく通い、下手したら連日ってこともあった。


すっかりサーカスの常連客になり、受付嬢のフーカさんに顔を覚えて貰えた!!凄いでしょ?!


それをきっかけで話しをするようになって、気の合う友人となったフーカさんと街で遊ぶようにもなった。


フーカさんは、私がアレン様推しだって知ってからは、関係者枠の席に友人として案内する時に、通路から、こっそりと舞台裏を見せてくれたの!


 猛獣のホワイトタイガーを愛おしそうに見つめ、優しく撫でて可愛がって微笑むアレン様をっ!!


 キャーーーーーーーー!!!

 もうっ!!好き!!


 好きすぎて滅亡する!わたしの心臓がっ!

 心臓ギュンって鷲掴みされっちゃったのよ!!


 推ししか勝たん!!一生ついていきます!!



 ――はっ!!


 今はそんな事を考えてる場合じゃないわねっ!

 そうそう!目の前のラルクのことよ。


ラルクは先日、教会の使者から『勇者』の称号を得て、明日から魔王討伐の旅に出かけることになっている。


普段は木こりをしてるラルク。

勇者を探しにきていた使者の水晶に手をあてたら、ピッカーンと光ったらしい!!


そして!私のポジションは勇者の幼馴染なのよっ!


色々と察した……。


何せ私には前世の記憶がある。

日本と言う国で、異世界や冒険者とか…!色々と当時流行してたからね。


私の第六感がビービーと警戒音を鳴らしているのだ。


こ、これは、ヤバいのでは??


討伐メンバーの王女と、勇者がいい仲になって、幼馴染の私が邪魔になって消されるって王道のテンプレだし。


それとも…王女を振り切り、勇者が故郷の幼馴染に対して、激愛ヤンデレ系になって戻ってくるモードってのも、…確かあったかな?


イヤイヤ、ラルクが私に激愛なんてあり得ない。


そもそも、どう転んでも…勇者の幼馴染って立場は、面倒な事には変わりがない!!


恐らくラルクは、故郷を離れるイベントで、自己陶酔してる感じよね!

お互いに、そんな恋愛モードの雰囲気になったこと1度もなかったのに……今日はどうしたのよ、もう!!


ラルクってば!!変なフラグをたてたわね!!


おかげで急いで身のフリを考えなくちゃだわ!!


こんなことを考えてるとは、微塵にもださずに、私はラルクに優しく微笑んだ。


「ラルク……無事に帰ってきてね」


幼馴染として、私はそう答えるしかなかった。肯定も否定もしないでおく。きっとこれが最適解だ。



 ああ…、今日の夕日は、やけに染みるわね……。



☆☆☆☆☆





いよいよラルクの出発の時。

村の皆が総出でラルクを見送りに出てきている。もちろん私もだ。


「ラルク……気を付けてね」


私は、はにかむ笑顔でラルクを見送った。

それはまるで、周りからみたら、辛い別れを耐えてるように見えていたと思う。


「ああ。エリナの為にも早く帰ってくる」


そう言って、ラルクは魔王討伐へと出かけて行ったのである。


ラルクの姿が見えなくなるまで、村の皆と一緒に手を振っていたエリナだったが、馬車が見えなくなると同時に、クルリと両親の方へ振り向き、懇願した。


「父様、母様……。私、、暫くの間は部屋に1人、籠もっていてもいいでしょうか?」


「あぁ…、勿論。家の手伝いは気にせずに、気分が落ち着くまで少しゆっくりしてればいい」


両親もラルクの事でショックを受けていると思っているみたいで、快く承諾してくれた。


よし!これで自由時間を確保できたわ。

あとは……。部屋に戻ってっと…。


私はまず、『修行の旅にでます。後で手紙をだすから、心配せずにいてください』両親に宛てた手紙を急いで書いた。


そして旅の荷造りを始めた。


修行って何?っていうと……サーカスの団員のよ。

4カ月毎に移動サーカスは各地を旅して回っている。


アレン様もついには移動してしまうから、一緒について行こうと思うの。


きっと!このタイミングだと、両親も村の皆も、ラルクを追って旅立ったと勘違いしてくれると思う。


まさか、推しを追いかけるなんて、誰も思いもしないはず。


もちろん!入団テストに受からなきゃ入れないのも知ってるし、ただの村娘に何が出来るんだって話しだけど。


フッフッフ。


何を隠そう私ってば、前世の記憶があるチートってヤツで!そこは乗り切れるに決まってる…はず。


えええい!!無謀だって言いたいのは分かるけど、当たって砕けろって言うし、女は度胸っていうじゃない?


そこは推し活の粘りと根性の見せどころよ!


いざ出陣!!まいります!!


エリナはトランクいっぱいに、サーカス入団の為に必要な荷物をギュウギュウっと詰め込んだ。






「エリナちゃん。今日も来てくれたのね」


 受付嬢のフーカさんが、私を見つけるや否や、こっちこっち、と手招きをする。


 手招きをしてくれるってことは!!


 足繁く通ったお陰で、仲良しのフーカさんの案内で、従業員側の通路を通って、アレン様を一目盗み見てから席に案内してくれる。


 しかし毎回ってわけじゃない。


 今日はアレン様が見れるらしい!うふふ!ラッキー!!幸先がいいわね。ムフフーっ。


「ここも来月までだから、エリナちゃんに会えなくなるのは残念だわ。折角知り合えたのに…」


 従業員通路を先頭するように、フーカさんが前を歩いて移動する。フーカさんが少し眉を落として言った。


 フーカさんは私より3つ歳上の22歳。


 紫色の髪をゆるフワに編み込みにし、片側に垂らしていると、何とも言えない色気がある。


 見た目の妖艶な雰囲気とは別で、性格は何でも話せる優しいお姉さんって感じ。


 サーカスに入り浸ってたのがキッカケではあるが、すっかり仲良くさせてもらっている。


 因みに旦那さんが、サーカスの団長さん。


「私も、フーカさんと知り合えて本当に良かったです。あと……お願いがあるんです。今日もし大丈夫なら、団長さんに会わせて貰えませんか?」


「えっ?うちの団長に??」


「はいっ!!突然のことでアポもなく、申し訳ないんですが、どうしても今日、会って話たいことがあるんです!」


 それはそれは前のめりになりながら、フーカさんに詰め寄る。


 私の勢いににビックリしながらも


「そ、そう……。講演終了して1時間後なら大丈夫だと思うわ。片付けが終わったら、挨拶回りに行っちゃうから、ほんの5分10分だと思うけど……、それで構わないかしら?」


「あ、ありがとうございます!!」


ガバっと勢いよく90度のお辞儀をし、フーカさんのの手を両手で握りしめ、ブンブンと振りながら感謝の言葉を何度も伝えた。


「も、もう!分かったから!まずは講演を楽しんでね」


 少し頬を赤くしながら、可愛らしくウィンクするフーカさんに、惚れそうになった。

 この大人可愛い姿が、きっと旦那さんを虜にしているのだろうと納得した。私も嫁に欲しいもん。


そして席に着く前に、そっと準備中のアレン様を覗く。


 ファーーーー!!!!!!

 今日も、推ししか勝たん!!!


本日の推しは、積み上げられた木箱の上に優雅に腰掛け、何やらカップを片手に持ち休憩している様子。あれは…ブラック珈琲と見せかけて、たっぷりミルクと砂糖が入ってるカフェオレなんだとか。


なんだ、その訳も分からないギャップ!!


どっから見てもクールなキャラなのに、甘党なんだって!(フーカさん情報)


チラっと通り過ぎる感じでしか見れないけど!私の鼓動はMAXまでアゲアゲだ!!


「エリアちゃん、席はここね」


……はっ!いつの間にか、客席まで着いていた。


ここは、団員さんの家族や知り合いの人が案内される、ちょっと奥まった席。


「フーカさん!有難うございます!!」


「いいのよ。私の友達でしょ?」


はにかみながら笑顔のフーカさんは、やっぱり可愛い!!歳上なのに、可愛い!!


「楽しんでね〜」

手を振りながら、去っていくフーカさんにお礼を再度言った。


 あぁ…フーカ姉さん尊い!一生ついていきますー!!


よし!!団員さんともアポの約束も取れたし、あとはサーカスを楽しもう。




パッと電気が暗くなり、音楽が響き出す。


「Ladies&Gentleman。スノードロップサーカスにようこそ!!」


ステージ中央に一筋のスポットライトがあたった。

団長さんの挨拶からサーカスの全ては始まる。


スラッとした頭身を白のタクシードで包み、シルクハットにはウサギの耳がついている。片眼鏡をつけて右手にはステッキを持っている。


そう、まるで不思議の国の白兎のような出で立ちの団長のラバールさん。


スノードロップっていう雪兎をモチーフにしているサーカス団であり、団長の姿である。


「さぁ〜サーカスが始まりますよ。ごゆるりとお楽しみ下さいませ」


ハットをクルクルっと返しながらお辞儀と共に暗転する。



ピンク色の髪をしたピエロのザック様。観客の心を鷲掴みにしながら、笑顔と笑いを引き出す。


空中ブランコの双子兄弟、青のジョー様と緑のアベル様。スリルの中に2人の息の合ったコンビネーションの美しさに魅了される。童顔の2人にショタヲタが食いつきそうだな…とコッソリ思ったり。


ファイヤーマジックの赤のダンテ様。迫力と妖艶とが織りなすパフォーマンスに釘付けとなり、感嘆の吐息が漏れ出す。


アクロバティックのパフォーマーの黄色のテル様とオレンジのムカ様。力強くキレのある動きと、舞台上から垂れてる布を使って、会場の空中を飛び回る。身軽な身のこなしと筋肉…。


そして……我がヒーロー!!

猛獣使いの黒のアレン様である!!

アレンの隣にはホワイトタイガーのウルガがいる。

アレン様の指示に従って、台から台へ華麗にジャンプしたり、火の輪潜りも大丈夫だと分かっていても、ドキドキしてしまう!


頑張れ!!ウルガー!!


思わず胸の前で祈りを込めるように手を組んで見守る。


次々と送り出す技の数々とハラハラドキドキが、全観客を魅了する。そこがサーカスの醍醐味であり、何回見ても面白いし、迫力満点だ。



「以上をもちまして、本日の講演を終了とさせて頂きます。お気をつけてお帰りください」



はぁ…胸がいっぱいだ。


終わった後の高揚感は、毎回なんとも言えない気持ちにさせる。


私は一度サーカス会場から出て、1時間後にまた出直した。

そして私は団長さんに会う為に今、フーカさんに案内されて団長室までやってきた。


コンコンコン。


フーカさんが扉をノックすると

「どうぞー」と中から声がかかる。


私は持ってきたトランクの持ち手をギュッと握り、ゴクリと唾を飲み込み具合をいれた。

フーカさんがウィンクしながらサムズアップして見送ってくれた。……優しい。


「失礼します」

ガチャリと開けると、ラバール団長は執務机に向い、書類整理をしている最中だったみたいだ。


私が入室すると書類から顔を上げた。


「やぁ、君がエリナちゃんか。フーカからよく君の話しを聞いてるよ。今日は僕に話があるとか?」


笑顔で出迎えて貰え、コテっと首を傾げた。


「はじめましてっ!エリナと言います。フーカさんにはいつもお世話になってます。じつは今日は折りいってお願いがあります!」


「ん?…折りいってお願いって何かな?」


私はガバリと頭を下げながら

「どうか!ここで働かせて下さい!!!」

と大きな声で懇願した。


「!!!!」

ラバール団長が、これでもかと目を見開いて硬直している。


しばらく沈黙が続いた。

団長の様子に居た堪れなくなるけど、ここは引けないところ。


「…、っいま何て?…働く?…、ん?ここで?……えっ?!!なに?なに?!!えっ!??」


やっと動き出したと思ったら、ラバール団長がパニックになっていた。


「エリナちゃん?!ここって…サーカスでってこと??」


「はい!!」

私は元気よく返事をする。


「……サーカスって……分かってる??」

何か残念な子を見るように全身を上から下から見られた。


「知ってます。何度も通って、最高だと感銘を受けたんです!!」


「エリナちゃん。それは嬉しいけど、………申し訳ないけど、君がサーカスで何かパフォーマンス出来るとは…到底思えないんだけど」


団長が苦虫を噛み締めるような顔になっている。美形なのに申し訳ない。でも、私でも私自身がサーカスの舞台で何か出来るとは思っていない。


だからこそ!このトランクの中身なのだ!!


「これを見て下さい!!!」


ガチャリとトランクの金具を外し、中身を見えるようにトランクを広げた。


ババーン!!



「!!っこ、これはっ!!!」


団長が目をまん丸にして叫んだ。


そう!トランクの中には推しグッズの数々!!


各メンバーカラーのハンカチに雪兎を刺繍したものや、雪兎のマスコットに各推しカラーの衣装を着せたもの。

それに、各メンバーの推しカラーの缶バッチや胡桃ボタン(雪兎ロゴあり)も用意した。


そのなかでも1番の目玉商品は!!

ウルガの推しヌイ!!

私の渾身の力作!!思わずギュッと抱きしめたくなる肌触りにもこだわった。


なんたって推しのアレン様のグッズが欲しくても、この世界には推しグッズとかの概念がない。


それなら自分で作ればいいじゃん!!


ってことで、前世の推し活を思い出しながら、せっせと手作りした。

何せこの世界の私は、母の針子の手伝いを幼い頃からやって小遣い稼ぎをしていから、チクチク縫う作業は得意なのよね。


いつかはアクリルスタンドも作りたいけど…、今の世界ではアクリルっていう素材が手にはいらない。


もしかしたら王都とかの都会に行けばあるかもだけど。生まれ育ったしがない田舎町にはなかった……残念。


ラバール団長は、恐る恐る手を伸ばして、グッズの雪兎のマスコットを1つ手に取った。

「……これは?」


「それは、サーカスのシンボルのスノードロップウサギと団長のコラボ作品のマスコットです。どうかグッズ担当として、雇って貰えませんか?」


「…グッズ……エリナちゃんが作ったの?」


「はい。この商品はサーカスメンバーをモチーフとして作ってます。絶対に売れます!損はさせません!お願いです!!ここで働かせて下さい!!」


もう一度大きく腰を折り、団長に懇願した。


「どうか、お願いします!!」


シーーーンと、しばらく沈黙が支配する…。団長は手にしたマスコットをジッと見つめている。


「……エリナちゃん。サーカスって移動するんだけど、大丈夫なの?」


こ、これは……!!手応えあり……?


「はい。荷物もまとめて家を出てきたので。今日にでも何処までも着いて行けます」


「え?え?……もう家を出てきたの?」


「はい!!」


団長は初めはビックリした顔をしていたが、はぁ……っと大きめな溜息をついて、片手で顔を覆う。


「…エリナちゃん、君いくつになる?」

「来月19歳になります」


この世界の成人は18歳だ。なので、親の許可がなくても自分で色々と決めることが出来る。


私には跡取りの兄がいるから、ゆくゆくは結婚して家をいつか出ていかねばならない。

その為に針子見習いとして、成人してからは母と同じ所で働いていた。


女子も手に職を持ってないと!


「戻りたくても戻ってこれないかもしれないよ?」


「……はい。分かってます」


しばらくジッとお互いに見合って、動かなかったが、フッと団長が表紙を緩めた。

両手を挙げて降参の姿勢をしめした。


「はぁ……、わかったよ」


「やった!!ありがとうございます!!」

グッと!こっそりガッツポーズをする。


「ただし!!条件がある!!」


え?条件〜?!!……なんだろ。ゴクリと喉を鳴らす。喜んだ束の間、無理難題じゃなければいいんだけど。


「じょ、条件とは?」


「試しに、ここにいる残りの1週間で、どれだけ売れるのか…それを見極めてから、君を雇うかどうか決めさせて貰う。それが条件だよ。もし売り上げが10万リブいかなければ、この話は無かったことにする。いいね?」


10万リブ……。この世界のお金1リブ=1円の価値と一緒だ。なので、1週間で10万円分稼がなくちゃいけないことになる。


因みに針子の見習い給料は月12リブ。それを1週間で10リブかぁ……。


―――やるしかない!!いや、やってみせる!!


それに、この世界には推しヌイっていう文化はない!!


これこそが、私が転生した宿命だと思うの!!


この世界に推しヌイをバズらせてみせる!!


「わかりました!やります!絶対に達成させてみせるんで、見ててください!!」


「厳しいこと言うかもだけど、期待もしているんだよ。僕個人としては、フーカと仲良しのエリナちゃんのお願いを聞いてあげたいけど、サーカス全体として考えると、どうしても厳しくなっちゃうんだ。すまないね」


「いいえ。チャンスをありがとうございます。頑張ります!」


ふんっ!…と拳を両手に作って気合いを入れた。


「この後出かけなきゃだから、詳しいことはまた明日。開演前に来てくれるかい?」


「はい!宜しくお願いします。時間を作って貰いありがとうございました。失礼します」


挨拶をして部屋から出ると、心配そうにフーカさんが待っていてくれた。


「エリナちゃん、お話できた?大丈夫?」


「フーカさん!ありがとうございます。……私どうしても、ここで働きたいんで頑張ります!!」


トランクをギュッと握りしめ、ニコッと元気よく笑う。


「ええ?!!エリナちゃん!!団長に相談って……ここで働きたいって話だったの?」


「はい!そうなんです!お題を出されたので、それをクリアしないとですが」


「……エリナちゃん…あなた……私が知らないだけで、実はすごい運動神経の持ち主だったの……?それとも……身体がグニャグニャ柔らかいとか??」


「ち、ちがいますよ!サーカスに出るほうじゃないです!!」


手をブンブンと振って全力で否定しておく。


「でも…、それじゃ何なの?」


「フッフッフ。見て驚かないで下さいね〜」


本日2度目のジャジャーーーン!!


トランクを開けて中のグッズを披露した。


「っっっふぁ!!!!!可愛いぃぃぃぃ〜!!」

「でしょ~~??」

「こ、これは!!すごいわ~~!!」


フーカさんは目をキラキラしてグッズに釘付けだ。


「こ、こ、これは……!!もしかして……!!」


「そうです。団長ウサギです」


ギン!っとフーカさんの目が1点を見つめて血走っている。


「このサーカス団をモチーフとした商品を販売させて貰おうかと思って、団長さんに話しをしてきたんです。」


そして、お題として1週間10万リブを売り上げないといけない事をフーカさんに説明をした。


「買うわ!これ!」

団長ウサギを指差し、フーカさんはテンションMAXだ。


「いえいえ!フーカさんにはいつもお世話になってるんで、とうぞ持っていってください」


「ダメよ〜!ちゃんとお代金は払うわ。そしたら私がエリナちゃんのお客一番乗りでしょ?だから買わせて」


「…フーカさん。ありがとうございます。だけど、まだどれを幾らで売るかも団長さんと相談してないんで、明日まで待って貰えませんか」


「わかったわ。うふふ。エリナちゃんってこんな特技があったのね〜。絶対に売れると思うわ〜。受付でも宣伝して応援するわね。」


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


グッズ一覧表とかが受付にあると、お客さんにも認知されやすいかもと、話が盛り上がった後に帰路についた。


今日はサーカスの近くにある宿をとった。帰りながら、家から持って来てある在庫についてあれこれと考えを巡らす。


カラーハンカチ(刺繍あり)は1枚 800リブ。

雪兎のノーマルマスコットは1体 2000リブ。

推し仕様(8人と1匹)のマスコットは1体 2500リブ。

缶バッチや胡桃ボタン(刺繍あり)は1つ 500リブ。


ちょっと頑張れば買えるっていう値段設定にした。


白、黒、ピンク、青、緑、赤、黄色、オレンジのメインメンバーのカラーとウルガに雪兎。


宿に帰るついでに夕飯とグッズの材料を追加で購入した。

そして、今夜は宿に戻ってから紫のフーカさんバージョンのマスコットを一体縫い上げた。

これはフーカさんにプレゼントしようと思う。


フーカさんには、団長さんウサギとペアで部屋に飾って欲しいなって。





☆☆☆☆☆





「本日からお世話になりますっ!!グッズ担当のエリナって言います。よろしくお願いしますっっ!!」


無事に念願のサーカス団の一員になれ、今日の朝の集会で、正式に全団員さんの前で自己紹介と挨拶をした。


もちろん挨拶の最中でも、私の視野にうつるアレン様には後光がさして見える。

推しは何処にいても、後光ですぐに目につくっていうのはヲタのテンプレ機能だ。


 ――今日も推しは尊い。幸せだ。



グッズ販売は大波乱をサーカスに巻き起こした。


蓋をあけてみたら大繁盛も、大☆繁盛!!


会場の一角にブースを作って貰い、販売したところ販売開始30分もせずに毎日完売になってしまい、販売数を増やしてくれとクレームが殺到した。


すぐに売れてしまうという、レア感が出たのか、販売前に長蛇の列が出来きてしまった。


最初の頃は、お客さん同士のイザコザもあって、お客さんがスムーズに並べるように「グッズ最後尾」というプレートを掲げてはどうかと提案すると、即採用されて喜ばれた。


まだこの世界には馴染みがないけど、今後は整理券の導入も検討してこうと思っている。


お客さんがいっぱいてことは、グッズもいっぱい必要ってことで……、嬉しい悲鳴とはこのことかしら。


持ってきていた在庫では心許ないので、団長さんに相談して、販売員はサーカスのスタッフさんに任せ、ひたすら宿に籠もって私はグッズ作成を行った。


お陰で目の下のクマがヤバい……。


推しの為ならっ!!っと思って睡眠時間を削って頑張った!!(良い子は真似しちゃダメよ〜)


まさか初日で目標の半分の5万リブを達成するとは思ってなかったから、誤算だ……。

だけど販売は1週間という宣伝を既にしていたので、頑張ったわ……私。


1週間で合計32万4800リブの売り上げた。


 ………やりきったわ。燃え尽きた。


幾度も栄養ドリンクがないことが悔やまれたか…。


この世界にもポーションっていうのはあるんだけど、徹夜を乗り切るためには、やっぱり前世の栄養ドリンクが恋しくてしょうがない。


これも、いつか自分で作っちゃおうかなぁ。


ビタミンとタウリンと、カフェインと……あとは身体に良さそうなやつを入れれば…!何とかなる…のか?……知らんけど。


何はともあれ!これで晴れてサーカス団の一員になれた!!


宿生活から、推しのアレン様と共同生活になる。

その事実だけで、胸がいっぱいだわ〜。


朝礼が終わってから、団長室に呼び出された。


「今日から改めてよろしく頼むよ。それで、今夜はエリナちゃんの歓迎と、この街も今夜で最後だから、打ち上げをやろうと思ってるよ」


「ぇ?私の歓迎会ですか?」


「そうだよ!グッズ販売も大成功で、エリナちゃん大活躍だったじゃないか!!だから、夜は予定空けておくようにね。よろしく!!」


「~~っっありがとうございます!!」


ひゃぁ〜っ!やったぁぁぁああ〜!!嬉しいっ!!


眠いけど、寝たいけど、推しとのご飯会に参加しないなんて、あり得ないでしょっ!!



――そして、夜の最後のサーカス講演が終わった後。


サーカス団員達との飲み会が始まったんだけど、何故だかメインキャラに、いつの間にか私は囲まれている……。


「エリナちゃんって、僕たちのグッズ作ってくれてた子だよね?あれ、すごいね」


ピンクのザック様はピエロのメイクを落とすと、意外と童顔なのがわかる。


「そうそう、講演中に自分の色のハンカチがヒラヒラと振られるとテンション上がるよな」


ニカって笑いながらオレンジのムカ様。


「あ!わかる~!!ボクも嬉しくなっちゃう」

「ボクも~~」


双子のショタボーイ達が、嬉しそうに賛同する。


ワイワイする若者達を温かく見守りながら、その後列では、大人な雰囲気を醸し出している、ダンテ様とテル様……そして、アレン様がいる!!


「あ、ありがとうございます」


普段は元気よくハキハキと答えるエリナだが、突然のアレン様の登場で、全身がガチガチに固まってしまった。


 ア、アレン様が……ち、ち、近いぃぃ~~!!


 い、1メートルの半径内に……お、お、推しが…


エリナは、推しを目の前にして、あまりの緊張のあまり、手に持っていた乾杯用のお酒を、グビッと一気に飲み干してしまった。



 ―――あっ……ヤバい……世界が回るぅぅ〜


 バタン!!!!


目の前が暗転していく最中、周りが慌て出す気配と声だけは、うっすらと分かった…。


 「おい!大丈夫かっ?!」


アレン様の声が耳元でする……ここは極楽ですか?


好きすぎて、本当に滅亡の5秒前だ……





☆☆☆☆☆






チュンチュン……。


窓の外から鳥の鳴き声と、カーテンの隙間から差し込んでくる朝の日差しで、エリナは目が覚めた。


身体が重くて、頭がガンガン痛くて割れそう…。

何だか胃も重くて気持ちも悪い……。ダルい…。


爽やかな目覚めとは真逆だった。


最初は風邪でも引いたのかと思ったけど…。


 そうだ!!私!!飲み会で倒れたんだ!!

 それも推しの目の前で!!


 ギャァァァァーーーーーーー!!!!

 もう顔を合わせられない!!

 絶対に変な女だと思われたっ!!


両手で顔を覆い、ベッドへと、また沈んだ…。


段々と少し冷静さを取り戻してくると、あたりを見回すと、どうやら医務室で一夜を過ごしたみたいだ。


ベッドの周辺を取り囲むカーテンをそっと開けると…。


窓際にある椅子に、長い足を組んでウトウトしている人がいる。


 ――えっ?推しぃぃいい!!!!!



 ちょっ!!な、な、なんでぇっ!????

 アレン様が、ど、どうしてっここに??!

 ってか、睫毛ながっ!!


「ん?起きたのか?」


ゆっくりと睫毛があがり、漆黒の瞳が私を捕らえた。


「は、はい!!」


「気分はどうだ?」


「…だ、大丈夫です!!アレン様こそ…どうして、ここに?」


「あぁ、それは俺が君を昨夜ここに運んだんだが、フーカ嬢に朝も様子を見て欲しいと言われて。皆は酔い潰れて使い物にならないからな。動物達の世話で俺が1番早起きだし、そのついでにと。世話の後に寄ったものの、どうやら俺もうたた寝してしまったみたいだ」


 めっちゃ、しゃべってる!!!

 推しが……目の前で!!

 しゃべって、いらっしゃるのですよっ!!


 えっ!?アレン様が運んだっ!?って言った?

 ど、どうやって?お、お、お姫様抱っことか?


 ふぉぉおぉおおおおおっ!!?

 ま、まって、まって!マジですかっ!!?

 意識ない間に大イベント発生してたっ?


 ぐおおおおお!!!き、記憶がないっだと!!?


固まって、何も反応しない私に、アレン様が私の顔の前で手をフリフリと振る。

「……おい!大丈夫か?まだ具合が?」


「はっ!…、だ、大丈夫です!」


怪訝そうに私の顔を覗き込む。


「顔が赤いな。まだ休んでたほうが良さそうだ」


それは!貴方のせいですっ!……なんて言える訳もなく!私は大人しくベッドに促されて戻った。


「しっかり休むといい。………あぁっ!そうだ!」


「な、何ですか?」


「後で、ウルガの縫いぐるみを買いたいのだが?……いいかな?……大の大人が縫いぐるみをと、変に思わないで貰えると嬉しいのだが……」


そっと内緒話をするように耳打ちされた……。

近づくと分かる、アレン様から微かにムスクの匂いがする。


 それに、言いながら気恥ずかし気に、はにかむ推しは


 ――尊い。御馳走です!!


 あまりの推しの過剰摂取で、い、意識が…


 あぁ……!このまま、永遠の眠りに………。


 はっ!!ダメだ!!


 好きすぎて、そのままベッドの昇天を迎えるとこだった……危ない。


「も、勿論です!後でお持ちします!!」


「すまないな。お大事に」


嬉しそうに微笑みながら、推しが手を振りながら医務室を出ていった。

 

 …………神!!降臨!!

 ここに!神がいたっ!!

 


 あぁ……推しが私に、お大事にって……。

 やっぱりアレン様は優しい。


布団に潜り込んでバタバタと足をバタ足させながら悶えていたのだが


 ―――はっ!!

 こんの所で寝ている場合じゃないっ!!


早く元気になって、やらなければいけない事をがある!!


猛獣の相棒ウルガの推しヌイも、大人気で在庫がない。アレン様がご所望されているのであれば!急いで作らねば!!


 推しからのお願い事――絶対に叶えないとっ!!


こんな所でダウンしてる場合じゃないっ!


ガバっと起きる!!


っが、頭がガンガン疼き、ボスっとベッドに逆戻りした。


あぁ…!こんな時に!魔法でチョチョイってして手軽に回復出来たらいいのになぁ〜。


そう言えば、産まれてこのかた魔法って使ったことなかったなぁ〜。

そもそも平民は魔法使えないから、田舎の村では誰も魔法を使っていない。

私も、もともとは日本人だったし、魔法がない生活に何にも疑問を持たずに生きてきた。


初めて魔法を観たのは、ここのサーカスだ!!

凄っ!!って感動したものよね〜。うんうん!


あれ!?私、何か大切なこと忘れてる?


まぁ!いっか!


そうそう!魔法だよ!!

使えたりしないのかなぁ〜!?

転生者チートってことで、試してみる?


 【ヒール】


心の中で、呪文を唱えると、私の周りからキラキラとした光が溢れ出した。光は私の周りを一周するとスーっと消えていった。


身体が嘘のように軽くなる。


こ、こ、これって!?


――聖魔法


この世界で聖魔法が使える人は、聖女と呼ばれるらしい。


聖女……わたし?え?

勇者ラルクの幼馴染が、聖女?

魔王……討伐とは……?


うん!!コレは深く考えちゃいけない気がする!!


私の使命は


【推しヌイで世界中に愛を届ける】


コレよ!!


こうしちゃいられないっ!!

アレン様のご要望に応えなくてはっ!




☆☆☆☆☆


こうして、エリナの推し活の旅が始まったのであった。


後に、魔王討伐にサーカス団が巻き込まれていくのも時間の問題であったが、それはまた別の機会に。

お読み頂き、ありがとうございます。

かなり勢いで書いてますが、エリナちゃんのキャラは明るく天真爛漫で、書いてて楽しくて、大好きです!!


良かったら☆で評価して貰えたら嬉しいです!

またの機会にエリナちゃんが、ドタバタと活躍してくれることを祈って…!皆さんに幸あれ

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