告り女と告られ男
爽やかな朝。
「あーまた手紙入ってるやん。めんどいわー。」
「自慢か!」
アイドル望月一城は今日も絶好調らしい。
「ん?グレープも入っとるで。」
「ぐぁっ!勝手に取るな!」
人生初のラブレター。マジ?これよくある悪戯とかじゃねぇの?
「開けて見たら剃刀入っとるパターンやな。」
嫌味な笑いを俺に向ける一城。くそ。とりあえず開ける俺。
【入学式で貴方を見て、くるくるの髪の毛がキュートで一目惚れしました。あっ…告る前に言っちゃった。てへ。コレを読んでる貴方の後ろにいます!】
「ほんまや!」「は?」
靴箱の奥の柱に、顔を出す女の子がいた。
「自分ふざけんなや?グレープを傷つけたら俺が許さんでぇ!」
「うっさい豆もやし!グレープじゃなくて、紫庵くんなの!」
隠れてた割に、気ぃ強いし!豆もやしとか、上手い。
「ままま豆もやしやと!?」
「一城、俺の問題だから先に行っといて。」
ブツブツ文句言いながら一城は階段を上ってった。
「あの名前は?」
「薔薇色の恋です!」
「ごめん意味分かんない。」
近くで見ると、セミロングくらいのタテロール。タテロールをちょい崩した感じ。まつ毛長っ!目は黒目がデカい。てか、普通に可愛い。
「最初は、薔薇色からスタートして下さい!まだ、R18とかは無理なんですぅ!」
「いっけね。また、遅刻しちまうとこだった。」
俺は階段へ走った。
「ちょっと、ちょっとー待ってよー!」
「今度はな」
「好きです!!こっち向いて下さい!!」
やべ。完全に振り向いてしまった。
「オッケーって事ですよね?」
「いや、まじ無理!」
告る女、自称『薔薇色の恋』に付きまとわれる序章にすぎなかった。
「蜜柑。相談があるんだけどよ。」
「んー?ひょっひょまっひぇ(ちょっと待って)?」
彼女は今、鼻と口の間にシャーペンを挟んでいる。しかも3本目に突入したー!完全に女捨ててる。
「ふぅー。こんなモンでしょ。で、何だっけ?」
「その達成感を勉強に向けろ!お前には言わねぇ。」
「薔薇リン?」
「何で知ってんだよ!」
今、美術の授業中。外で風景画を描いてる途中なんだけど、これから朝みたいに絡まれると思うとそれどころじゃねぇ。
「薔薇リンはねー。いちよー先輩だよ。3年のトップクラスだったと思う。」
「先輩かよ!確かに化粧バリバリだったような。」
「せやから、グレープはお人好しなんや。」
ジャージ姿の一城が後ろから、乱入して来た。
「薔薇リンは望月が嫌いなんだよ。」
「俺も嫌いやで!」
「一城、早く戻れよ。ヤバいぜ?」
ボールを手に戻って行った一城。
「薔薇リン良い人だから、大丈夫だと思うよ。」
「マジ?」
また一人強烈なヤツが増えそうだ。
「紫庵くーん!」
やっぱ来たし!