飛べない鳥は
飛べない鳥は足が速い。飛んでる鳥も長くは空を泳げない。休み休みに飛んでるんだ。
私は誰でしょう。
私は飛べない鳥に近い。逃げ足には自信がある。いや、逃げ足が早くないと任せてもらえない仕事というか、任務を与えてもらってる。
悪く言えば影で動く事が多い。表面的には学生をしてる。例えるなら、ボールだ。上手く受け止めてもらわないと、拾って貰えないボロボロのボール。
例え過ぎるのは暇だから。
お前誰だよ。
知りたい?
それは、諸越紫庵にバレたら分かるはず。まぁ、クビになるけどね。ちょうどイイ機会なんだ。
飛べない鳥でも飛び立てる絶好のチャンス。他人の腕に飛び込むボールの役は、向いてないかもね。もうすぐで諸越紫庵が来る。
素直になろうか?嘘を突き通すか?そうだ。コインで決めよう。
コインを空に弾くと、手の中には来なくて砂の上に刺さった。刺さったんだよ。神様は自分で決めろって言ってるみたいだ。
「おい、繰越何してんだ。」
「何してるように見える?諸越の見たまんまだと思うけど。」
「可愛くねぇやつ。」
潔癖な俺。けど、病気とまではいかない。
「聞きたい事あるんでしょ?」
「聞きたくねぇけど、聞くぜ。」
コイツの目は鋭くて、突き刺さりそうな目線がハッキリ見えそうだ。
ハァッハァッ…
「ちょっと待ったぁー!」
「栄芽、息切らしてどうしたんだ?」
栄芽はゴホッと咳き込んでいた。何も考えないから苦しむ事になるんだ。愛嬌のある栄芽だから許される事もあるけど。
「…いいか。俺がスパイだ!繰越は違う!」
「あのーまだ聞いてねぇんだけど。」
「聞かれてないんだけど。」
何で俺なんかかばってんだ?あり得ない。
「ほら、紙をもらってたんだよ!」
ポケットから依頼と書かれたプリント。って、あだ名だけど俺宛じゃん。間違って来たのかよ。
「で、理事長室に行くのか?」
「栄芽落ち着けって。それが一枚来たからってスパイとは証明されないぜ。」
「もう飽ーきた。俺がスパイというか、飛び級試験の受験者の報告係だよ。」
二人とも驚いていない。
「今までありがとうな。」
ありがとうのところが声が震えたのは、俺も人間だったって事だ。
「何別れっぽく言ってんだよ!おい、いつもみたいにキレろよ!」
栄芽の声がやけに耳に残った。