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ジブンミチ  作者: shiraha
21/25

とある帰り道

偶然。



とは分かっていても、耐えきれない状況ってのはあるもんで。



前を歩く男女の嬉しそうな声の掛け合い。と思いきや、後ろからキャッキャと腕を組むカップル。



そう。俺はカップルに挟まれていた。しかも細い塀に挟まれた一本道で。




「やん。こんなとこじゃだめだよぅ。」

「大丈夫だって。」



後ろから、大丈夫じゃねぇ会話が聞こえて来た。こんな時ってのは、振り返ってしまうのが人の性ってんで。俺もバレない程度(後ろで何してるかギリギリ視界に入るくらい)に横を向く。





目の端に入ったのは、残念ながらキスシーンでも×××なシーンでもなく。携帯で●クロスしてた。なんで分かったかって?耳がいいんだよ。



一先ず後ろのカップルは害がねぇっぽい。



カップルが気になるのは、ヘナ男だからとかソコはまぁ、何とも言えねぇけど。なんかさ、俺一人で歩いてたら寂しいじゃん。



「おら、転ぶぞ。」


彼女の腕を掴む肉食系彼氏。


「もう。転ばないから。…でも、ありがと。」


ツンデレ!?今の声のトーンの変わり方何!最初は冷たく感情を込めない声で、「ありがと」はこう、恥ずかしそうに。



「はいカーット!今のはもう少し『転ばないから』を突き放す様に行こう。」


「うん。でも私でいいの?」


「イメージに合うのはキミしかいないんだ!」






目の前で、なんか演技指導してる。カップルじゃねぇのかよ。と拍子抜けした俺は、そいつらを通り過ぎた。



「すいませーん!」



後ろから、演技指導の男が俺に話しかけてきた。シカトここうか迷ったけど、しぶしぶ顔だけ後ろに向けた。



「俺すか?」



「ジャストミート!キミを探してたんだよ!」



おいおい。ジャストミートって、意味違くね?ザッツライトだろ。女の子は、恥ずかしそうにうつ向いていた。ショートのよく似合う中性的な顔をしてる。一方演技男は、ハーフっぽい女性的な顔をしていた。



「もしかして、演技の脇役にピッタリとか言いませんよね。」



「ノンノン。観客になってくれ。」



「俺帰ります。」



「あの、…ちょっと待ちなさいよあんた!」


いきなり、女の子が叫んだから転けそうになった。



「じゃあ始めよう。」


俺は気付いていた。

変人ってこういう奴らのことだな…と。



だけど、引き返す自分がいた。





「はぁ?じゃあ君もさっき声をかけられたのかよ。」



にしては、ハマってたな。



「うん。鷺沼さぎぬまさんって説得力が凄いから、なんかついて来たの。」



彼女は、「加藤さん」って言うらしく、みんな苗字しか言ってないみたいだった。



「てか、そのサギは何処行ったんだ?」



近くにタイミング良く空き地みたいなところがあって、そこについたとたんサギは消えた。



「サギってあだ名はやめたら?かわいそう。」



「へこたれるタイプじゃねぇって。」



「クスっ。確かに。」


と噂をしてたら、サギが重そうな荷物を持って走って来た。



「ソーリー!いてくれて良かった。昨日なんか、警官に代わってたんだよ。はははっ!」


「そこ笑っていいのかよ。」



隣を見ると、加藤さんは笑っていた。なんか、ちょっと…かわいいかも、なんて。



「さっき加藤とやってたのが『ツンデレ彼女vs肉食系男子』だ!」


「あのさ、俺『ツンデレ』ってのがあんまピンと来ねぇし。演技とかも…なぁ。」



「それでいいんだ!素人から見た評価が知りたい!」



ムカッ。素人って言葉好きじゃねぇな。






こうして、よく分からないこだわりの演劇…俺から見たらコント…を2時間見せられた。


バカバカしくて、今の行き詰まった俺には調度良かった。

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