今年の合格者は…
1日で結果が分かるなんて、心臓が持たねぇよ。
「それでは、今年の飛び級合格者は…」
…溜めが長い。
「合格は無しです。」
そういうオチっすかー!?いや、オチとかじゃねぇよな。
「えー?俺暗号全問正解っしょ。」
「おい。栄芽黙っとけって。」
ハズいヤツ!
「確かに全問正解でした。しかし、試験内容だけで判断してませんので、合格に値する人物はゼロになりました。」
ガタッと音がすると思ったら、繰越が無言で教会から出ようとしていた。しかし、学年主任が穏やかにソレを止めた。
「繰越くん。まだチャンスは有りますよ。」
「これ以上理解不能な試験は受けたくありません。失礼します。」
「繰越くんには期待してたんですが、残念ですね。」
また席に座る繰越。思いきりコントロールされてるし!
「本日はここまでとします。いつ、チャンスが訪れるかは分かりませんので注意して下さい。」
そして受験者は教会を出た。
「しっくりこねぇな。」
「そーそー。あの先公の喋り方ロボットっぽいし。なんなわけ。」
「あまり悪口言わない方がいい。スパイがいるかもしれないぞ。」
「だはっ!繰越映画の見すぎだし!なー、諸越ー?」
「…やべぇ。俺も全部が敵に見えて来た。」
「『本日はここまで』らしいじゃん。二人とも考えすぎだって。」
このお気楽思考何処から来んだよ。…そうでもねぇな。栄芽はさっきから人差し指の爪と親指の爪を弾いて鳴らしてる。そりゃ、満点で不合格ならだれでもイライラするわな。
「授業ダリーな。」
「諸越も思った?俺も!」
「はぁ。やる気出ないな。」
まさかの繰越のやる気出ない発言。「俺は出る」って言うと思ってた。みんな脱力感を感じてるらしい。
「俺らの出会いを祝って!ゲーセン行こうぜ!」
「ゲーセンかよ。たりぃ。」
「一番補導されやすい場所に行くとは…。貴方、栄芽といいましたか、やはりバカとしか言いようが」
「行こーぜ!」
「人の話は最後まで聞け!」
「あ。繰越がキレた。」
キレた繰越に驚きつつ、栄芽の後に続いた。学校の代表になろうとしてる俺らが、今はサボろうとしてる。
紙一重ってこんな感じ?
栄芽の行く道は、まるで猫の通り道で冒険してるみてぇだった。童心に帰るっての?そんなワクワク。