正直者は誰だ
「さっきの試験の本当の目的は、正直者を見定める為のモノでした。」
正直者?
「正確には、ルールを守れる人です。このプリントに約束事が1つだけ書いてましたね。繰越くん覚えてますか?」
前の繰越はビクッと肩が動いた。そして、ゆっくり立ち上がる繰越。
「『自分に票を入れないこと』です。」
「よろしい。」
学年主任は、満足げに笑っていた。
「私が集めたので、指紋で誰のプリントか分かるようしてあります。今から呼ぶ者が合格者です。前に出て下さい。前島弥生、神岡クリス、繰越海羅、栄芽地甜、諸越紫庵。」
5人前に出た。
「この者たちが二次試験合格です。」
「ちょっと待って下さい!内容は見てくれなかったんですか?」
不合格のヤツが吠えてる。確かに落ちたヤツラの方が俺より文才はあったと思う。可笑しな話だ。
「確かに2人ほど稚拙な発表をした者もいますが、不正な行為が一番困るんです。」
絶対に俺と栄芽が稚拙な発表した2人だ。
「なぁなぁー、稚拙な発表って誰?」
「さぁな。」
呑気な栄芽が羨ましくなった瞬間だった。
「次の試験は、筆記試験です。」
筆記か。ようやく試験らしい試験だ…
な!?何だこりゃ!
渡されたプリントを見ると、意味不明な暗号やよく分からない数字の配列。図形。まるで探偵の推理本に乗ってそうなモノばかり。
「やりっ!かーんたーん。」
栄芽の声が聞こえた。
「栄芽くん静かにしなさいね。」
我らがマドンナの紅河先生が優しく注意した。声もキレイ何だよコレが。
「あら?諸越くん空欄だらけね。大丈夫?」
ハズッ!先生にだけは見られたく無かった。チキショー。こんなん解けたら天変地位だぜ。
あれ。天変地位?
この図形ひっくり返して見ると、マジかよ!こんなところにヒントが隠れてたんかよ。やっと一問埋まった。
着眼点ってこんな風に変えてけば良いんだな。
それからは、スラスラとまではいかなかったが、何とか8割は解けた。
栄芽は余裕で寝てたし。繰越も早く終わったらしく答案用紙をひっくり返してた。見たわけじゃねぇけど、紙を裏返す音が聞こえてた。
てか、2人の事ライバル視してねぇか?
笑える。
試験受けねぇと、関わる事の無かった奴ら。そんな出会いも悪くない。