とびきゅうしけん
今俺は、校内の教会にいる。正確には俺を含める13人の生徒+7人の担任。
「ここにいるのは、一般常識をクリアした生徒たちです。」
学年主任の神山先生が丁寧すぎる口調で話し出した。
周りを見渡すと、余裕で聞いてるヤツ、リアクションが顔に出てるヤツ、寝てるヤツ。一人一人違いすぎる反応で、隣で寝てるヤツとか間違って入って来たんじゃねぇのかと疑ってしまった。
「というわけで、ここに残った生徒にこれから自分自身の事を自慢をしてもらいます。もし、自慢できないというなら今すぐここから退場して下さい。」
前に座ってる男子生徒が手を上げた。
「私からいいですか?」
「どうぞ。」
トップバッターは、確か隣のクラスの繰越。ハンカチを拾ってあげようとしたら、睨まれた。極度の潔癖症らしい。ハンカチもよく見たら透明な袋に入っていたくらいだ。カバンの中なんてもっと酷いだろう。
俺が考えごとしてる間に拍手喝采。隣の寝てたヤツも起きていた。この後には発表したくねぇな。
「はい!次俺がいい!」
黒髪に赤メッシュ。隣で寝てた背の低い男が机の上から何故かバク転した。いや、マジで俺が一番びびったから!
「栄芽地甜でーす。俺の自慢は、最高3日寝溜めできます!暗記力には自信があって、円周率とか言えます。でも、すぐ忘れちゃうので今は言えないかも。あ、忘れちゃうと言えば嫌な事をすぐに忘れられるのが一番の自慢でーす!終了。」
呆然とする俺たち。
「次、隣のパーマ発表して!」
「は?ふざけ…」
先生達の爽やかな目線が俺に集まってるのは気のせい…なら良かった。俺は、ゆっくり立ち、前に行った。磨りガラスがキレイに光ってる。
「えー、諸越紫庵です。私の自慢は、すぐ謝れる素直な心を持ち合わせている事です。謝るのはプライドが高すぎると中々できません。低すぎると解釈されても構いません。私なりのポリシーがありますから。以上です。」
パチパチパチ…
あんま過剰に自慢なんてしたくねぇ雰囲気だった。
こうして、13名の発表が終わった。
「それでは、良かった人を3人選んで丸して下さい。」
プリントを配られ、プリントには受験者の名前が全員分書いてあった。その隣にかっこがあり、丸をつければいいらしい。
それにしても、受験者同士が丸?俺は、印象的な(名前を覚えてた)ヤツら丸した。てか、自分自身に丸してもバレねぇだろうな。俺は面倒な事になりそうだから、というよりナヨッた根性のせいで素直に他のヤツを選んだ。
プリントが集められてから、隣の栄芽に声をかけられた。
「誰にした?俺さー、お前に丸したよ。」
「そんな無邪気に言われても俺は答えねぇよ。普通こうゆうのは選挙と同じようなもんだから黙秘権あんだろ?」
「へぇ。以外とオカタイね。」
実際は栄芽に入れたんだけど。
「キミ、栄芽とか言ったよね。試験の良い雰囲気を乱さないで欲しいんだけど。」
振り向いて、冷たく言い放ったのは、潔癖男だった。
「繰越、まだ怒ってんの?弁当の玉子焼き食べた事。」
潔癖症にソレはキツいだろ。
「ハッ!そんな記憶は抹消したよ。それに、あの汚らわしいお弁当はそのまま残して犬のサランにあげたんだ。」
犬飼ってたら潔癖どころじゃねぇだろ。
「人間に触れたく無いんだっけ。犬のがバイ菌だらけなのに。ね?諸越。」
「あ、まぁ。そうとも言うかな?ははは。」
ここは二人の口喧嘩なんかに乗らねぇぞ。
「それにしても、諸越くんどこかで会った事ありますよね。中学生の頃とか。」
繰越の色白の肌がますます怪しげに見える。まるで血に飢える吸血鬼みたいだ。前にハマった本の中の吸血鬼そのもの。
また先生達が戻って来た。
二次試験、受かれ俺!