既に始まっていた
通学路の壁に、5人の小坊が落書きしていた。
さぁ、貴方ならどうする?
無視して通りすぎんのが一般的な反応だろう。通りすぎる瞬間に小石を投げられた。いくら元ナヨ族の俺でも、ここはキレた。
「何落書きしてんだよ。楽しそうだな?んー?」
帽子を被った少年Aが俺に向かって来た。
「この人がカツアゲしましたぁ!助けてー!」
「はぁ?」
「僕も見てましたー!」「俺もー!」
ここは…逃げろ!
ギリギリ間に合った学校の教室に入って聞こえた会話。
「知ってる?小学生にカツアゲしたヤツがいるんだってー!」「まじー?だっさーい。」
なにこれ。夢?起きろ自分!起きろ自分!起きてくれー!
「諸越くん席に着きなさい。」
「…ハイ。」
どゆこと?悪夢なはずなのに。
「先生!諸越くんがお尻触りました!」
ザワザワ…
いや、触ってねぇから!マジで!
「すいませんでした!」
次の瞬間、俺は土下座していた。
「いいよ。」
「はい?」
今…先生が何かにチェックしてた。
今日は飛び級試験の日。こんな偶然がいくつも積み重なるか?まさか、試験はもう始まっているのか?
まさか。確か、俺のクラスからあと5人は受け…。クラスを見渡すと、受ける予定の生徒が3人来てない。来てる2人も一人はジャージで髪の毛がびしょ濡れ。一人は、顔色悪っ!
『試験は筆記とは限らないわ。』
色原先輩のアドバイスで、筆記以外ってのはリスニングとか面接とかかと思ってた。
まるで…
ドラマ仕立てのテスト。一昨年、飛び級した生徒はゼロ。
そう。俺は自ら火の海に飛び込んだんだ。