オアシスが足りない
「お前にはオアシスが足りねぇんだよ。」
十汰んちで寝転びながら言われた言葉を気にも止めて無かった。
てか。
余裕無かった。
最近学校で、一緒にいるのは色原先輩。飛び級の事とか教わる為だし、慣れれば優しい先輩。
「紫庵くん。」
「はい。」
「あと2日でテストだね。終わっても、一緒にいてくれる?」
「先輩…。」
答えられ無かった。色原先輩も返事はまだ良いからと、苦笑いした。可愛い色原先輩と一緒にいれるなんて最高じゃねぇか。なのに、蜜柑と一城の顔が頭に浮かんだ。
微妙な心境のまま校門に向かうと、十汰が跳ねてた。跳ねてたと言うのは十汰用語で、手を振る+何故か足が飛び跳ねる…Etc.
「何か用?」
「クールだなおい!お前のオアシス連れて来たんだよ!ジャッジャジャーン !」
「こんにちは。」
遠慮がちに十汰の後ろから出てきたのは、妖精…天使、天女。いや、俺の好みの女の子だった。ストラーイク!
「紫庵見とれすぎ!ねー、加井春穂ちゃん。」
今さりげなく紹介したし。それにしても、完璧すぎる。なんなんだよ。この、軽やかな栗色のふんわりくるくるヘアーに、栗色のたれ目。んで、白い美脚。ほどよいクビレ。胸は…デカ過ぎない!完璧だ。
「あの、好きです!」
「ちょ、落ち着いて。んなに春穂ちゃん焦らない。」
「俺も、惚れた。」
「はぁ!?はやっ!」
呆然と俺と春穂ちゃんの間に立つ十汰。けど俺と春穂ちゃんは見つめ合っていた。
「ストーップ!まだダメだ!」
「十汰。どけ。」
「十汰くん。」
「ダメだっつの!お互い中身を見てからだ。許しません。二人のアドもまだ教えません。」
と、春穂ちゃんを連れて行く十汰。
「グレープ。」
振り返ると蜜柑がいた。
「おう。久しぶりに話すな。」
「可愛い子だったね。」
「だから?」
「…何でもない。」
…てか。何このむず痒い空気。おかしいだろ!十汰のせいだし。
俺たちに恋なんて似合わない。