生まれて初めて!
風の妖精が悪戯に女の子のスカートを捲るのは、意外と稀な光景だ。
サァッ…ブワッ
「紫庵!今の見たか?」
「スケスケレース?」
「何で落ち着いてんだよ!俺、風でスカート捲れてパンツ見えんの生まれて初めて見たし!」
久しぶりに、中学のダチと会ったと思ったらこれだ。周りに丸聞こえでクスクス笑われてる。赤松十汰。公立高に行ってる悪友だ。黒髪にワイン色の渕の眼鏡のせいか見た目かなり頭良さそうだけど、頭の中は空っつーか、バカ。だからダチなんだけどよ。
「初めてか。小学生の時とか捲ってねぇの?」
「それとこれは違うだろ。流れ星を初めて見た的な感動とロマンがあんだよ!」
コイツといると気が楽だ。
「アホか。流れ星は流れ星に失礼だろ。」
「あり?紫庵のノリが関西っぽくなってない?」
「ちげーし。」
パンツで騒ぐわりには、鋭いんだよな十汰は。
「しかも、元気ねぇし。俺に会いたいなんて自分から言うのお初じゃんね!」
ニコニコ笑って公園のベンチに飛び乗る十汰。
「おい。ベンチは座るとこだろ。てか、何で公園に来てんだよ!男二人で公園とか寒いだろ絶対。」
「照れてんの?ま、座りなって。ホレホレ。」
気色ワリィから、隣のベンチに座った。したら、十汰が俺のすぐ横に座って肩を組んだ。
「マジやめろ。ホモか!」
「紫庵とならい・い・か・も・ねん!」
ゾワっと全身に寒気が走り、俺は立ち上がった。
「冗談はいいとして、何悩んでんの?」
「悩ん…でんのか分かんねぇ。いったん決めた事を勝手に進められたっつーか。」
「よく分かんねぇけど、紫庵はいつも決めたらソッコーじゃん。迷ってたんならさ、それなりに何か、んー、迷い?があんじゃん?」
俺はまた、ベンチに座った。
「迷いはあった。でも、後には退けねぇ。」
「いい目してんねー。ま、紫庵が決めた事に間違いはねぇんじゃね?相談はここまでー。今日うちに泊まる?」
「だから、お前の雰囲気ヤバいから!ホモっぽすぎ!」
「あら?紫庵好きよ。」
「だぁー!抱きつくんじゃねーよ!」
まぁ、十汰は彼女いるから大丈夫だろ。バイ?…考えらんねぇし。でも、話聞いてくれるダチがいるってスゲー救われる。
結局、十汰んちに泊まる事になってしまった。