第92話:皮付きフライドポテト
夜、店の暖簾が揺れる。
「いらっしゃい」
板前のマサが低い声で迎えると、一人の若者が腰を下ろした。くたびれたスーツ、乱れたネクタイ、目の下には深いクマ。彼の名は北川 悠、28歳、広告会社勤務。
「……皮付きのフライドポテト、できます?」
マサは、うなずいた。
「おや、いい注文ね」
奥から忍がお茶を持って現れる。おかみであり、マサのかつての同僚。物静かながら、客の心に敏感な女性だ。
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調理描写:
マサは、ざっくりと洗った男爵イモを半分に切り、そのまま皮を残してくし形に。水にさらしてぬめりを落とし、布巾でしっかり水気を拭き取る。
「皮に旨味が詰まってる」
180度の油に、ゆっくりとイモを落とす。じゅわっという音と共に、店に香ばしい香りが広がった。
狐色に色づいたポテトを網にあげ、塩をぱらり。
「はい、皮付きフライドポテト」
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食べる描写:
カウンターに置かれた皿。北川は一つ摘んで、がぶりと食らう。
「……ああ、うまい」
カリッとした皮、ホクホクとした中身、そして絶妙な塩加減。彼のこわばっていた表情が、ほんの少しほぐれる。
「会社で企画、全部ボツでさ……もう、何が正解か分かんないっての」
「答えなんて、すぐ出なくていいわよ」
忍が笑う。
「じゃがいもだって、急にホクホクにはならない。火を通して、時間かけて、ようやくね」
北川はふっと笑い、もう一つポテトを口に運んだ。
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レシピ:「皮付きフライドポテト」
材料(2人分)
男爵いも 2個
塩 適量
揚げ油(サラダ油など) 適量
作り方
1. じゃがいもは皮をよく洗い、くし形に切る(皮はむかない)。
2. 水にさらして澱粉を抜き、キッチンペーパーでしっかり水気を取る。
3. 中温(170~180℃)の油でじっくり揚げる。
4. 色づいたら油を切り、塩をふって完成。
※お好みでハーブソルトやパプリカパウダー、チーズをふっても美味。
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マサの一言アドバイス:
「皮を残せば、旨味も栄養も逃げねぇ。見た目は素朴でも、それがいい」
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深夜、ひと皿のポテトで癒される心がある。
今夜も、『深夜食堂 しのぶ』は、静かに灯りをともしている。




